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第6話:殿下の熱烈な歓迎を受けました
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「お嬢様、王宮に着きましたよ」
色々と考えているうちに、どうやら王宮に着いていた様だ。仕方がない、行くか。
馬車から降りた時だった。
「カナリア…本当にカナリアなのかい?ああ、僕のカナリア!」
訳の分からない事を呟きながら、私に抱き着いて来たのはアルト様だ。
「おはようございます、アルト様。毎日私を訪ねて来てくださっていたのに、お会いする事が出来ずに申し訳ございませんでした。今日からまた、婚約者として王宮に参りますわ」
あなた様がシャーラ様に出会い、彼女に心を奪われるまでは…
「ありがとう、カナリア。僕は君に嫌われたのではないかと、本当に心配で…でも、よかった。僕のカナリアが戻ってきてくれた。さあ、こんなところで話していて、万が一再び体調を崩したら大変だ。すぐに王宮の中に入ろう」
なぜか私を抱きかかえ、アルト様が歩き出した。
「アルト様、私は自分の足で歩けますわ」
さすがに恥ずかしい。必死に降りようとしたのだが…
「君は原因不明の高熱に襲われたばかりだろう?熱が全然引かないと聞いて、君が死んでしまうのではないかと、本当に生きた心地がしなかったんだよ。それにずっとカナリアに触れられていなかっただろう?やっぱりカナリアの体は、柔らくて温かいな…カナリア、ずっと僕の傍にいてくれるよね?」
アルト様が不安そうに私の顔を覗き込んできた。
「ええ…あなた様が望んでいる間は、傍にいますわ…」
「どうしてそんな顔をするのだい?それに僕が望んでいる間はとは、どういう意味だい?僕はずっとずっと、君の傍にいたいと思っているよ」
そんな事を言っていられるのも、後わずかですわ。だってあなた様は、もうすぐ運命の相手に出会うのですから…
それなのに、こんな風に私に気持ちをぶつけてくるだなんて、本当に罪な人…どこまで私の心を揺さぶれば、気が済むのかしら?それでも私は、公爵令嬢でアルト様の婚約者。
あなた様が私を必要としている間は、しっかり婚約者を務めますからご安心を。
そっと心の中で呟いた。
「さあ、部屋に着いたよ。寒くないかい?すぐにひざ掛けを準備するね。それから、カナリアの好きなお茶も準備しよう。他に欲しいものはないかい?」
それでしたら、分厚いサラミが欲しいですわ。後、お茶ではなくジュースを下さい。本当はお酒が飲みたいのですけれどね。
なんて、言える訳がない。
「アルト様、私の為にありがとうございます。ですが私は、特に欲しいものはありませんわ」
そう笑顔で伝えた。屋敷に戻ったら、分厚いサラミとジュースを味わおう。そう思い、準備されたお茶を飲む。
それにしても、距離が近すぎないかしら?
そう、私の隣には、ベッタリとくっ付いたアルト様の姿が。憂いそうに頬ずりをしたり、頬に口づけをしたり、やりたい放題だ。まあ、そのうち私には見向きもしなくなるのだから、今はこのままにしておこう。
「カナリア、まだ体調が悪いのかい?いつも僕が君に触れると、恥ずかしがりながらも、嬉しそうな顔をするのに。やっぱり僕の事を、嫌いになってしまったのかい?」
「いいえ、そんな事はありませんわ!ただ、まだ少し体調が…」
「確かに少し顔色が悪い気がする。これは大変だ、すぐに休むといい。僕がベッドまで運んであげるからね」
何を思ったのか、そのままアルト様に連れられ、私の為に準備されている部屋へと連れてこられた。そして
「君たち、すぐにカナリアに着替えを。ドレスでは苦しいだろうから。そうだ、このネグリジェを着せてくれ。僕がカナリアの為に選んだものだ」
ギューギュー抱きしめられながら、そのままメイドたちに指示を出している。
「アルト様、さすがにこれ以上ご迷惑をかける訳にはいきません。私は家に帰り…」
「家に帰ったらまた、公爵とカルア、アクアが君を隠してしまうではないか!絶対に公爵家には返さないよ。さあ、すぐに着替えをして、ゆっくり休んでくれ。僕はカナリアが着替えている間に、医者を呼んでくるからね」
アルト様が急いで出て行ってしまった。優しくされればされるほど、胸が苦しくなる。どうして私は、カナリアに転生してしまったのかしら?涙が溢れそうになるのを、必死に堪えた。
着替えが済んだ頃、アルト様がお部屋に戻ってきた。そして甲斐甲斐しくお世話してくれる。本来なら幸せでたまらないのに、未来のない私にとっては苦痛なだけだ。
ただ、私は公爵令嬢、どんなに苦しくても、辛くても、この状況を堪えないと…
そう自分に言い聞かせたのだった。
色々と考えているうちに、どうやら王宮に着いていた様だ。仕方がない、行くか。
馬車から降りた時だった。
「カナリア…本当にカナリアなのかい?ああ、僕のカナリア!」
訳の分からない事を呟きながら、私に抱き着いて来たのはアルト様だ。
「おはようございます、アルト様。毎日私を訪ねて来てくださっていたのに、お会いする事が出来ずに申し訳ございませんでした。今日からまた、婚約者として王宮に参りますわ」
あなた様がシャーラ様に出会い、彼女に心を奪われるまでは…
「ありがとう、カナリア。僕は君に嫌われたのではないかと、本当に心配で…でも、よかった。僕のカナリアが戻ってきてくれた。さあ、こんなところで話していて、万が一再び体調を崩したら大変だ。すぐに王宮の中に入ろう」
なぜか私を抱きかかえ、アルト様が歩き出した。
「アルト様、私は自分の足で歩けますわ」
さすがに恥ずかしい。必死に降りようとしたのだが…
「君は原因不明の高熱に襲われたばかりだろう?熱が全然引かないと聞いて、君が死んでしまうのではないかと、本当に生きた心地がしなかったんだよ。それにずっとカナリアに触れられていなかっただろう?やっぱりカナリアの体は、柔らくて温かいな…カナリア、ずっと僕の傍にいてくれるよね?」
アルト様が不安そうに私の顔を覗き込んできた。
「ええ…あなた様が望んでいる間は、傍にいますわ…」
「どうしてそんな顔をするのだい?それに僕が望んでいる間はとは、どういう意味だい?僕はずっとずっと、君の傍にいたいと思っているよ」
そんな事を言っていられるのも、後わずかですわ。だってあなた様は、もうすぐ運命の相手に出会うのですから…
それなのに、こんな風に私に気持ちをぶつけてくるだなんて、本当に罪な人…どこまで私の心を揺さぶれば、気が済むのかしら?それでも私は、公爵令嬢でアルト様の婚約者。
あなた様が私を必要としている間は、しっかり婚約者を務めますからご安心を。
そっと心の中で呟いた。
「さあ、部屋に着いたよ。寒くないかい?すぐにひざ掛けを準備するね。それから、カナリアの好きなお茶も準備しよう。他に欲しいものはないかい?」
それでしたら、分厚いサラミが欲しいですわ。後、お茶ではなくジュースを下さい。本当はお酒が飲みたいのですけれどね。
なんて、言える訳がない。
「アルト様、私の為にありがとうございます。ですが私は、特に欲しいものはありませんわ」
そう笑顔で伝えた。屋敷に戻ったら、分厚いサラミとジュースを味わおう。そう思い、準備されたお茶を飲む。
それにしても、距離が近すぎないかしら?
そう、私の隣には、ベッタリとくっ付いたアルト様の姿が。憂いそうに頬ずりをしたり、頬に口づけをしたり、やりたい放題だ。まあ、そのうち私には見向きもしなくなるのだから、今はこのままにしておこう。
「カナリア、まだ体調が悪いのかい?いつも僕が君に触れると、恥ずかしがりながらも、嬉しそうな顔をするのに。やっぱり僕の事を、嫌いになってしまったのかい?」
「いいえ、そんな事はありませんわ!ただ、まだ少し体調が…」
「確かに少し顔色が悪い気がする。これは大変だ、すぐに休むといい。僕がベッドまで運んであげるからね」
何を思ったのか、そのままアルト様に連れられ、私の為に準備されている部屋へと連れてこられた。そして
「君たち、すぐにカナリアに着替えを。ドレスでは苦しいだろうから。そうだ、このネグリジェを着せてくれ。僕がカナリアの為に選んだものだ」
ギューギュー抱きしめられながら、そのままメイドたちに指示を出している。
「アルト様、さすがにこれ以上ご迷惑をかける訳にはいきません。私は家に帰り…」
「家に帰ったらまた、公爵とカルア、アクアが君を隠してしまうではないか!絶対に公爵家には返さないよ。さあ、すぐに着替えをして、ゆっくり休んでくれ。僕はカナリアが着替えている間に、医者を呼んでくるからね」
アルト様が急いで出て行ってしまった。優しくされればされるほど、胸が苦しくなる。どうして私は、カナリアに転生してしまったのかしら?涙が溢れそうになるのを、必死に堪えた。
着替えが済んだ頃、アルト様がお部屋に戻ってきた。そして甲斐甲斐しくお世話してくれる。本来なら幸せでたまらないのに、未来のない私にとっては苦痛なだけだ。
ただ、私は公爵令嬢、どんなに苦しくても、辛くても、この状況を堪えないと…
そう自分に言い聞かせたのだった。
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