助けた青年は私から全てを奪った隣国の王族でした

Karamimi

文字の大きさ
16 / 26

第16話:全てをアダム様に話しました

しおりを挟む
私の言葉を聞いて、目を丸くして固まるアダム様。

「君が、10年前失脚したダィーサウ公爵の娘だったなんて…」

そう言って口を押えて再び固まってしまったアダム様に向かい、静かに語り掛けた。

「アダム様、私に起こった過去の話を少しさせて下さい」

ゆっくり瞳を閉じ、深呼吸をした。そして、アダム様に過去の出来頃を話し始めた。

「今から10年前、その日は私の6歳の誕生日でした。両親と兄、姉に囲まれ、幸せの絶頂にいた私たちに、突如王宮の騎士達が押しかけてきました。訳が分からないまま、私たち家族は地下牢に押し込まれたのです」

あの時の記憶が蘇り、涙が溢れだすのを必死に堪えた。

「取り調べから帰って来た父の話しでは、どうやらフェザー公爵に陥れられたとの事。父は必死に無罪を主張しました。でも、陛下はろくに調査もせず、両親と兄は処刑、私と姉は国外追放になったのです!」

あの時の悔しさが蘇り、唇を噛み強くこぶしを握った。

「処刑当日、両親と兄の絶望に満ちた顔は、今でも忘れる事が出来ません。そして私と姉は、家畜用の馬車に乗せられ、3日間ろくに食事も与えられず、あの森に捨てられました。元々体が弱かった姉は、飢えと寒さからあの森で命を落としたのです。そんな中、私を助けてくれたのがカミラさんでした。それから約10年、あの森でひっそりと暮らして来たのです!」

次から次へと溢れる涙を止める事が出来ない!10年経った今でも、あの時の事が鮮明によみがえるのだ。

「私は10年前のこの日、地獄に突き落とされ、全てを失ったのです。今でもフェザー公爵と王族たちが憎くてたまりません!それでも唯一生き残った私が、両親や兄姉の分まで生きて行かないといけないのです!それが私の使命でもありますので…」

どうしようもない感情が溢れ出す。そんな私にアダム様が

「辛い話をさせてしまって、本当にすまなかった。まさかフローラが、そんなに辛い思いをしていたなんて…ごめん、本当にごめん」

なぜか謝りながら私を抱きしめてくれるアダム様。アダム様の温もりを感じたら、今まで張りつめていた糸がプツリと切れ、お姉様が命を落とした日以来、初めて声を上げて泣いた。私はこの10年、ずっとずっと我慢していたのだ。1人声を殺して泣いた事もあった。

それでもこんなにもワーワー声を上げて泣いた事はなかった。そんな私をずっと抱きしめてくれているアダム様。アダム様の腕の中は、温かくて安心する。どれくらい泣いただろう。久しぶりに声を上げて泣いたせいか、少し気持ちが落ち着いた。

「ありがとうございます、アダム様。随分とスッキリしましたわ。正直今でも私たちを陥れたフェザー公爵と、ろくに調査もせず処分を下した陛下には恨みしかありません。でも、いくら私が恨んでも仕方がない事。それに、これからはアダム様と幸せになると決めたのです。きっと両親や兄姉たちも、喜んでいますわ」

私には辛い時抱きしめてくれる大切な人が出来た。きっとこれからは幸せになれる。

「そう言えば、どうしてアダム様は私のペンダントを見て、ダィーサウ公爵家の家紋だと分かったのですか?」

確かにアペルピスィ王国の貴族なら、家の家紋を知っていてもおかしくはない。

「俺も、アペルピスィ王国の人間だからね…」

そう言って少し寂しそうに笑ったアダム様。そうか、アダム様も何らかの理由で、国に帰れないのだろう。

「ごめんなさい。言いづらい事を聞いてしまいましたね。それにしても、まさか出身国が一緒だなんて。なんだか嬉しいですわ」

「そうだね!でもフローラにとって、アペルピスィ王国はいい思い出がないだろう?アペルピスィ王国出身の俺と結婚するのは、やっぱり嫌だなっとか思ったりしないかい?」

「それは無いですわ。そもそも私もアペルピスィ王国出身者ですし。それに私は、アダム様と言う1人の人間が大好きなのです。アダム様がどんな経歴の持ち主でも気にしませんわ。アダム様こそ、反逆罪で失脚した家の娘と聞いて、私との結婚を考え直しますか?」

いくらフェザー公爵に陥れられたとしても、お父様はかなり重大な罪を犯したことに世間ではなっているはず…

「それは絶対ないよ!フローラはフローラだ。それに、誰よりも辛い思いをして来たのに、間違った道に進むことなくまっすぐ生きているフローラを、俺は尊敬するよ!」

「アダム様、ありがとうございます!こんな私ですが、これからもどうかよろしくお願いします」

アダム様の言葉か嬉しくて、思いっきり抱き着いた。

「さあ、もう日が暮れる。雪もまた降り出したし、そろそろ帰ろう」

「はい!」

2人で手を繋いで教会を出た。しんしんと降る雪。今までは雪を見ると、寒さと飢えで苦しんだ馬車の中や、息絶えるお姉様を思い出して辛かった。正直まだフラッシュバックに襲われる事もある。でも、これからはアダム様との楽しい記憶に塗り替えて行こう。

いつまでも過去に囚われていては駄目よね。アダム様に全てを話した今、ずっと1人で抱え込んでいたものが少しだけ軽くなった気がする。1人だと辛くて潰れそうになる事でも、2人なら辛さも和らぐ。なんだかそんな気がした。

アダム様、あなたの存在が今の私の支えです。どうかこれからもずっと一緒にいて下さいね。心の中でそっとそう願ったフローラであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

虐げられ続けてきたお嬢様、全てを踏み台に幸せになることにしました。

ラディ
恋愛
 一つ違いの姉と比べられる為に、愚かであることを強制され矯正されて育った妹。  家族からだけではなく、侍女や使用人からも虐げられ弄ばれ続けてきた。  劣悪こそが彼女と標準となっていたある日。  一人の男が現れる。  彼女の人生は彼の登場により一変する。  この機を逃さぬよう、彼女は。  幸せになることに、決めた。 ■完結しました! 現在はルビ振りを調整中です! ■第14回恋愛小説大賞99位でした! 応援ありがとうございました! ■感想や御要望などお気軽にどうぞ! ■エールやいいねも励みになります! ■こちらの他にいくつか話を書いてますのでよろしければ、登録コンテンツから是非に。 ※一部サブタイトルが文字化けで表示されているのは演出上の仕様です。お使いの端末、表示されているページは正常です。

完結 白皙の神聖巫女は私でしたので、さようなら。今更婚約したいとか知りません。

音爽(ネソウ)
恋愛
もっとも色白で魔力あるものが神聖の巫女であると言われている国があった。 アデリナはそんな理由から巫女候補に祀り上げらて王太子の婚約者として選ばれた。だが、より色白で魔力が高いと噂の女性が現れたことで「彼女こそが巫女に違いない」と王子は婚約をした。ところが神聖巫女を選ぶ儀式祈祷がされた時、白色に光輝いたのはアデリナであった……

【完結】第一王子の婚約者になりましたが、妃になるにはまだまだ先がみえません!

風見ゆうみ
恋愛
「王族に嫁いだ者は、夫を二人もつ事を義務化とする」  第二王子の婚約者である私の親友に恋をした第三王子のワガママなお願いを無効にするまでのもう一人の夫候補として思い浮かんだのは、私に思いを寄せてくれていた次期公爵。  夫候補をお願いしたことにより第一王子だけでなく次期公爵からも溺愛される事に?!  彼らを好きな令嬢やお姫様達ともひと悶着ありですが、親友と一緒に頑張ります! /「小説家になろう」で完結済みです。本作からお読みいただいてもわかるようにしておりますが、拙作の「身を引いたつもりが逆効果でした」の続編になります。 基本はヒロインが王子と次期公爵から溺愛される三角関係メインの甘めな話です。揺れるヒロインが苦手な方は、ご遠慮下さい。

【完結】公爵子息は私のことをずっと好いていたようです

果実果音
恋愛
私はしがない伯爵令嬢だけれど、両親同士が仲が良いということもあって、公爵子息であるラディネリアン・コールズ様と婚約関係にある。 幸い、小さい頃から話があったので、意地悪な元婚約者がいるわけでもなく、普通に婚約関係を続けている。それに、ラディネリアン様の両親はどちらも私を可愛がってくださっているし、幸せな方であると思う。 ただ、どうも好かれているということは無さそうだ。 月に数回ある顔合わせの時でさえ、仏頂面だ。 パーティではなんの関係もない令嬢にだって笑顔を作るのに.....。 これでは、結婚した後は別居かしら。 お父様とお母様はとても仲が良くて、憧れていた。もちろん、ラディネリアン様の両親も。 だから、ちょっと、別居になるのは悲しいかな。なんて、私のわがままかしらね。

ただ誰かにとって必要な存在になりたかった

風見ゆうみ
恋愛
19歳になった伯爵令嬢の私、ラノア・ナンルーは同じく伯爵家の当主ビューホ・トライトと結婚した。 その日の夜、ビューホ様はこう言った。 「俺には小さい頃から思い合っている平民のフィナという人がいる。俺とフィナの間に君が入る隙はない。彼女の事は母上も気に入っているんだ。だから君はお飾りの妻だ。特に何もしなくていい。それから、フィナを君の侍女にするから」 家族に疎まれて育った私には、酷い仕打ちを受けるのは当たり前になりすぎていて、どう反応する事が正しいのかわからなかった。 結婚した初日から私は自分が望んでいた様な妻ではなく、お飾りの妻になった。 お飾りの妻でいい。 私を必要としてくれるなら…。 一度はそう思った私だったけれど、とあるきっかけで、公爵令息と知り合う事になり、状況は一変! こんな人に必要とされても意味がないと感じた私は離縁を決意する。 ※「ただ誰かに必要とされたかった」から、タイトルを変更致しました。 ※クズが多いです。 ※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。 ※独特の世界観です。 ※中世〜近世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物など、その他諸々は現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。

あなたを忘れる魔法があれば

美緒
恋愛
乙女ゲームの攻略対象の婚約者として転生した私、ディアナ・クリストハルト。 ただ、ゲームの舞台は他国の為、ゲームには婚約者がいるという事でしか登場しない名前のないモブ。 私は、ゲームの強制力により、好きになった方を奪われるしかないのでしょうか――? これは、「あなたを忘れる魔法があれば」をテーマに書いてみたものです――が、何か違うような?? R15、残酷描写ありは保険。乙女ゲーム要素も空気に近いです。 ※小説家になろう、カクヨムにも掲載してます

完結 喪失の花嫁 見知らぬ家族に囲まれて

音爽(ネソウ)
恋愛
ある日、目を覚ますと見知らぬ部屋にいて見覚えがない家族がいた。彼らは「貴女は記憶を失った」と言う。 しかし、本人はしっかり己の事を把握していたし本当の家族のことも覚えていた。 一体どういうことかと彼女は震える……

婚約破棄後のお話

Nau
恋愛
これは婚約破棄された令嬢のその後の物語 皆さん、令嬢として18年生きてきた私が平民となり大変な思いをしているとお思いでしょうね? 残念。私、愛されてますから…

処理中です...