生贄の姫と黄昏の国

宵待 ふた

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Episode.1 目覚めた先

◇12

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ルシフェンに来てから五日が経った。

「これなんてどうでしょう?あまり締め付けがなくて、お姫様の負担にならないと思います!」

金の髪をはねさせながらセラが笑った。その手には、ゆったりとした、柔らかな淡い色のドレス。
知識としては詰まっているものの、そこまで服装に頓着しないティアシェはこくりと頷いた。病み上がりな自分に合うドレスを選ぶのは、自分よりはるかに詳しいであろうセラに任せた方が良い、そう思ったからだ。

──まさか夕食の後、また熱がぶり返し布団の上で過ごすことになるなんて。
その時のことを思い出して目を軽く伏せる。
三日目の昼あたりまでは高熱で散々うなされていたのだが、昼すぎ位から急にスッと熱が下がっていき、その後すぐに起き上がれるまでに回復した。

そして、大事を取って二日間は部屋で過ごし、今日から少しずつ部屋を出て動くようにしようという事になったのだ。

「お姫様、よく似合ってますよ!」

服を着替えると、セラは手早くティアシェの髪の毛を整える。
ドレスや普段服を着替えるのはティアシェ一人でもできる事だが、今までそのままに流していた髪はどうする事もできないため、これもセラに任せることにした。

ちなみに、セラはティアシェの専属侍女を任されたのだそう。熱で意識が朦朧としている間も、セラはずっと世話をしてくれていたらしい。とてもありがたい。

「できましたよ!痛いとこはないですか?楽な髪形にはしたつもりですけど、どうでしょうか」
「えぇ、どこも痛くありません。……セラさんは凄いですね」
「ずっと夢だったんですよ。こうして、綺麗な長い髪を結ぶのが。夢が叶って嬉しいです!」

いつもは下ろしたままの髪を緩く結び、楽で、かつ綺麗な髪形になっていた。小さく青い花をかたどった髪飾りがティアシェの白銀の髪に良く映えた。

「じゃあ、行きましょうか。陛下がお待ちですよ、お姫様」
「…ティアシェと呼ぶ約束のはずでは」
「あ、そうだった!行きましょう、ティアシェ様!」
「……はい」

様は付けなくても良いのに。

王女だったとはいえ、地下に閉じ込められていないものとされていたような身。
そして、死んだ事になっている筈だから、元、王女なのだ。
だから、姫ではない。名前で呼んで欲しい、とセラに言ったところ
「えぇ分かりましたお姫様!」と返された。
その後何とか説得して名前を呼んでもらう事に成功はしたが、「ティアシェ様」である。
その呼び方は、どこかあの二人の侍女を彷彿とさせて懐かしくなる。

けれど、もう「様」はいらないのに。
そう思いつつ、セラに導かれて先に進みながら、そういえば、と先程の彼女の言葉を思い出す。

「陛下と、食事」

己の感情を出さず、常に微笑を浮かべるように教えられた自分の顔。
それを強要してきたあの人は、そんなティアシェを気味が悪いと罵った。
「何を考えているのか分からない」と。
今までそうなるように強いてきた本人にそこまで言われるようになった自分の表情を見て、これまでは自分の思考が他の人に悟られにくいのでは、と考えていた。

そんな私を一発で見抜いたあの人と、食事。
…五日ぶりに、会うことになる。

「ティアシェ様?どうかされましたか」
「いえ、なんでも」

心配げにするセラに淡く微笑み、再びティアシェは前を向いた。
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