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第八章 真なる聖剣
861 晩餐会 1
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晩餐会が始まった。
晩餐会とは言っても、ロスト辺境伯の家族と勇者一行という、ごく限られた内輪のものなので、食堂でちょっといい料理を楽しむだけだろうと思っていたのだが、なんと、広間を使った、本格的なものだ。
こりゃあ、正装が必要な訳だ。
ロスト辺境伯側は、聖女のお兄さんをその領地からわざわざ呼び寄せたようだ。
聖女の兄姉はまだいるらしいのだが、他所に嫁いでいたり、婿入りしていたりで、今の時期に呼ぶのは難しかったらしい。
つまり、すぐには準備出来ないと言ったのは、呼べる一族を全部呼ぶつもりだったからのようだ。
すげえな、貴族の考えることは。
出席してくれた聖女の兄は、聖騎士よりも年上のように見える。
だいぶ年の差があるようだ。
聖女は末っ子らしいから、上の兄姉ならそれなりの差があるのは当然か。
そして、なんとそのお兄さんは家族連れだった。
ということで、ロスト辺境伯ご夫妻と聖女のお兄さん一家で、向こうは五人。
こっちは勇者と聖女とモンクと聖騎士とルフで五人と、人数的にバランスが取れている。
まぁ聖女を勇者側にカウントしているのは、俺達のほうだけで、ロスト辺境伯からしてみれば、聖女は自分の身内であるという感覚なのかもしれない。
そうすると、六対四で、ロスト辺境伯側が少し多い?
俺とメルリルを加えたら、丁度対抗出来るが、そもそも対抗する必要はないので、気にせずに、何か言われるまで壁に突っ立っている。
従者だからな。
「ミュリア、もう覚えていないだろうけど、君の兄で長兄のマーシアスだよ。本当に久しぶりだね。元気そうでよかった」
聖女の兄は、晩餐会のホストであるロスト辺境伯の挨拶と、その奥方の控えめな挨拶の後、家族を連れて、まっさきに聖女のところへと行った。
ちなみに、食事形式は立食式だ。
いわゆるパーティ形式ってやつだな。
従者でよかった……。
奥のほうに幕が掛けられていて、その裏で、何やら弦楽器が演奏されているようだ。
メルリルは、その音が気になるようで、じっと耳を傾けていて、あまり会場そのものは見ていない。
「お兄さま、ご挨拶ありがとうございます。こちらが、神の子たる勇者、アルフレッドさまですわ」
最初に聖女に挨拶をするという行為は、判断の難しいところだと思う。
勇者一行の聖女に対してなら、勇者に対して不遜と言える。
しかし、家族として、久しぶりに会った妹に対する挨拶なら、それほど問題にならない。
俺も貴族の挨拶とかはそれほど詳しくないが、そういう感じなはずだ。
そこで、聖女は自分への挨拶を勇者への挨拶への前フリであるとして、勇者を紹介した、という感じかな?
大変面倒くさい。
さて、そのロスト辺境伯のご長男であるマーシアスさまなのだが、家族を伴っていて、奥方と、子どもも一緒だった。
そして、その子どもが、かなり幼い男の子だ。
その幼い目にどう見えているのか、大きな口を開けて、聖女と勇者にひたすら注目している。
「ゆーしゃさまはまものをやっつけるのですか!」
そして、大きな声でそう聞いた。
父親は、その勇者と、微妙な表情で挨拶を交わしていたのだが、びっくりしたように我が子と、それから奥方を見る。
奥方は慌てて、息子の腕を取って下がらせた。
「今はお父さまがお話しをしているのですよ。いけません」
「いいじゃないか。先程城主殿から、今夜の晩餐会は、堅苦しいルールなどは気にせずに楽しんでくれと言われたばかりだ。なぁ坊主。名前は何というんだ?」
勇者は、どうやらロスト辺境伯の長男との会話がつまらなかったらしく、丁度いいとばかりに男の子に話しかける。
見た感じ、五歳ぐらいか?
五歳ぐらいならだいぶ賢い子どもも多いが、ルフの妹に比べると、もうちょっと幼い感じがあるので、もっと年下なのかもしれない。
幼い子どもというのはコントロールが利かないので、けっこう難しい相手なんだが、大丈夫か? 勇者。
「えっと、えっと……」
男の子は首をかしげる。
どうやら自分の名前を思い出そうとしているようだ。
「クリス! 四さい!」
そして、名前とセットで年齢も思い出したらしい。
大変微笑ましい情景である。
「あんね、あんね、クリスね、ボーッてできるの!」
だが、その微笑ましい情景は、いきなりとんでもない光景に変わった。
なんと、クリス君が、勇者に向かって火の魔法を使ったのである。
これには、両親も、祖父母であるロスト辺境伯夫妻もびっくりだ。
勇者も驚いただろうが、さらにとんでもないことが起きた。
勇者の上着の影から、ちょろりと若葉が顔を出したかと思うと、幼児にしては、かなり強力な火の魔法を、そのままパクリと食べてしまったのだ。
そしてまた、ちょろりと上着の影に隠れる。
あ、勇者がイラッとした。
「ほええ、ゆーしゃさま、ぼくのボーッ、食べちゃった?」
どうやらクリス君のなかでは、今のは勇者が食べたことになったらしい。
まぁ勇者だからね、何が起きても不思議はないね。
「こ、これは申し訳ありません!」
すると、俺達が何やら当惑している間に、気持ちを立て直したらしい聖女のお兄さんとその奥方が、慌てて、その場に土下座をした。
「ま、まだ何もわからない子どもなのです。どうか、どうかご寛恕を!」
おい勇者よ、お前、ブチギレたら幼児を害するような男と思われているようだぞ?
あ、勇者のこめかみの辺りが、ピクピク動いてるのがはっきりわかる。
頼むから、キレるなよ?
晩餐会とは言っても、ロスト辺境伯の家族と勇者一行という、ごく限られた内輪のものなので、食堂でちょっといい料理を楽しむだけだろうと思っていたのだが、なんと、広間を使った、本格的なものだ。
こりゃあ、正装が必要な訳だ。
ロスト辺境伯側は、聖女のお兄さんをその領地からわざわざ呼び寄せたようだ。
聖女の兄姉はまだいるらしいのだが、他所に嫁いでいたり、婿入りしていたりで、今の時期に呼ぶのは難しかったらしい。
つまり、すぐには準備出来ないと言ったのは、呼べる一族を全部呼ぶつもりだったからのようだ。
すげえな、貴族の考えることは。
出席してくれた聖女の兄は、聖騎士よりも年上のように見える。
だいぶ年の差があるようだ。
聖女は末っ子らしいから、上の兄姉ならそれなりの差があるのは当然か。
そして、なんとそのお兄さんは家族連れだった。
ということで、ロスト辺境伯ご夫妻と聖女のお兄さん一家で、向こうは五人。
こっちは勇者と聖女とモンクと聖騎士とルフで五人と、人数的にバランスが取れている。
まぁ聖女を勇者側にカウントしているのは、俺達のほうだけで、ロスト辺境伯からしてみれば、聖女は自分の身内であるという感覚なのかもしれない。
そうすると、六対四で、ロスト辺境伯側が少し多い?
俺とメルリルを加えたら、丁度対抗出来るが、そもそも対抗する必要はないので、気にせずに、何か言われるまで壁に突っ立っている。
従者だからな。
「ミュリア、もう覚えていないだろうけど、君の兄で長兄のマーシアスだよ。本当に久しぶりだね。元気そうでよかった」
聖女の兄は、晩餐会のホストであるロスト辺境伯の挨拶と、その奥方の控えめな挨拶の後、家族を連れて、まっさきに聖女のところへと行った。
ちなみに、食事形式は立食式だ。
いわゆるパーティ形式ってやつだな。
従者でよかった……。
奥のほうに幕が掛けられていて、その裏で、何やら弦楽器が演奏されているようだ。
メルリルは、その音が気になるようで、じっと耳を傾けていて、あまり会場そのものは見ていない。
「お兄さま、ご挨拶ありがとうございます。こちらが、神の子たる勇者、アルフレッドさまですわ」
最初に聖女に挨拶をするという行為は、判断の難しいところだと思う。
勇者一行の聖女に対してなら、勇者に対して不遜と言える。
しかし、家族として、久しぶりに会った妹に対する挨拶なら、それほど問題にならない。
俺も貴族の挨拶とかはそれほど詳しくないが、そういう感じなはずだ。
そこで、聖女は自分への挨拶を勇者への挨拶への前フリであるとして、勇者を紹介した、という感じかな?
大変面倒くさい。
さて、そのロスト辺境伯のご長男であるマーシアスさまなのだが、家族を伴っていて、奥方と、子どもも一緒だった。
そして、その子どもが、かなり幼い男の子だ。
その幼い目にどう見えているのか、大きな口を開けて、聖女と勇者にひたすら注目している。
「ゆーしゃさまはまものをやっつけるのですか!」
そして、大きな声でそう聞いた。
父親は、その勇者と、微妙な表情で挨拶を交わしていたのだが、びっくりしたように我が子と、それから奥方を見る。
奥方は慌てて、息子の腕を取って下がらせた。
「今はお父さまがお話しをしているのですよ。いけません」
「いいじゃないか。先程城主殿から、今夜の晩餐会は、堅苦しいルールなどは気にせずに楽しんでくれと言われたばかりだ。なぁ坊主。名前は何というんだ?」
勇者は、どうやらロスト辺境伯の長男との会話がつまらなかったらしく、丁度いいとばかりに男の子に話しかける。
見た感じ、五歳ぐらいか?
五歳ぐらいならだいぶ賢い子どもも多いが、ルフの妹に比べると、もうちょっと幼い感じがあるので、もっと年下なのかもしれない。
幼い子どもというのはコントロールが利かないので、けっこう難しい相手なんだが、大丈夫か? 勇者。
「えっと、えっと……」
男の子は首をかしげる。
どうやら自分の名前を思い出そうとしているようだ。
「クリス! 四さい!」
そして、名前とセットで年齢も思い出したらしい。
大変微笑ましい情景である。
「あんね、あんね、クリスね、ボーッてできるの!」
だが、その微笑ましい情景は、いきなりとんでもない光景に変わった。
なんと、クリス君が、勇者に向かって火の魔法を使ったのである。
これには、両親も、祖父母であるロスト辺境伯夫妻もびっくりだ。
勇者も驚いただろうが、さらにとんでもないことが起きた。
勇者の上着の影から、ちょろりと若葉が顔を出したかと思うと、幼児にしては、かなり強力な火の魔法を、そのままパクリと食べてしまったのだ。
そしてまた、ちょろりと上着の影に隠れる。
あ、勇者がイラッとした。
「ほええ、ゆーしゃさま、ぼくのボーッ、食べちゃった?」
どうやらクリス君のなかでは、今のは勇者が食べたことになったらしい。
まぁ勇者だからね、何が起きても不思議はないね。
「こ、これは申し訳ありません!」
すると、俺達が何やら当惑している間に、気持ちを立て直したらしい聖女のお兄さんとその奥方が、慌てて、その場に土下座をした。
「ま、まだ何もわからない子どもなのです。どうか、どうかご寛恕を!」
おい勇者よ、お前、ブチギレたら幼児を害するような男と思われているようだぞ?
あ、勇者のこめかみの辺りが、ピクピク動いてるのがはっきりわかる。
頼むから、キレるなよ?
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