374 / 1,578
第5章 王都編
王都冒険者ギルド 4
しおりを挟む幻影?
幻影ヴァルター!?
それって……。
そうか、それで聞き覚えがあったんだ。
赤鬼、剣姫、幻影!
ギリオンとヴァーンがよく口にする高名な剣士のひとりじゃないか。
「……」
3人の高名な剣士。
その内の2人と同じ日に邂逅し、さらに1人とは手合わせをする。
今日はなんて1日だ!
王都の冒険者ギルド裏に併設された別館の訓練所。
ヴァルターさんとの手合わせは、この別館で行われる。
本館から繋がる通路を抜け訓練所の中に入ると。
目の前に広がるのはオルドウの訓練所と同じく日本の体育館のような屋内施設。ただし、規模が違う。ここはドーム球場なみの広さがあるんじゃないだろうか。
ここもまた、立派な施設だよ。
さすが王都は違う。
そう感じるのは今日何度目だろう。
で、この訓練所。
壁と天井は本館のように石造りだが、地面だけは砂地を簡単に固めて作られているみたいだ。
戦闘訓練をするのだから、砂の地面の方が安全ということだろう。
「準備はいいか」
「いつでもいいですよ」
そんな立派な訓練所の一角で、木剣を持って対峙しているヴァルターさんと俺。
今回は魔法無しでの立ち合い。
幻影と呼ばれる剣士ヴァルターさんと剣のみでの手合わせ。
「……」
悪くない。
気分が高揚してくるな。
ちなみに、ヴァルターさんは木剣と木盾、俺は木剣だけを手にしている。
「おぉ! 教官が立ち合うのか」
「珍しい! 相手は誰だ?」
「見たことねえ奴だぞ」
「アリマという名前らしい」
「聞いたことないな」
「けど、あいつもいい構えしてるぞ」
「いやいや、現役を退いたとはいえ幻影の相手じゃないだろ」
この時間。
ギルドには、あまり多くの人の姿は見えなかったのに……。
なぜだか、多数の冒険者がヴァルターさんと俺の手合わせを観戦している。
「……」
訓練所使用の申請をアリマの名でしておいて良かった。
にしても、あまり目立ちたくはない。
幻影ヴァルターさん相手に上手くできるのか?
まっ、今さら考えても仕方ないな。
「いくぞ!」
「どうぞ」
お互いの距離は5メートル。
不敵な笑みを浮かべたヴァルターさんが地面を滑るような足取りで接近する。
****************************
<キュベリッツ王国王太子視点>
「剣姫さん、遅かったじゃないか?」
冒険者ギルドの別館に設けられた特別室。
珍しいことに、イリサヴィアが遅れて入ってきた。
「申し訳ありません。少々問題がありまして」
「ん? また街に出てたのかい?」
「宮に参る前に、少しだけですが」
「ふーん、剣姫さんは優しいからねぇ」
「いえ、殿下ほどでは」
「はは、よく言うよ」
「……」
「それで、問題は片付いたのかな?」
「……はい」
「それは良かった」
「慈悲深い殿下のお心に感謝いたします」
「そろそろやめようか、その喋り方は」
公私の区別をという彼女の考えは、もちろん正論なのだが、ふたりでいる時くらいは堅苦しいのはやめてほしい。
「ですが、ここはギルドの中ですので」
「特別室の防音を疑うのかい。扉の外で待機している者にも、こちらの声は聞こえないんだからさ。問題ないだろ」
「……」
「ほら、もっと気楽にして」
「……」
「カタイなぁ。剣姫イリサヴィア様は」
「はぁ~、分かったわ。だから、その呼び方はやめてくれないかしら」
「おっ、やっといつもの姿に戻ったね」
「……あなたが望んだからよ」
「まあ、そうだねぇ」
そう言う君も窮屈なのは嫌いだよな。
ホントはさ。
「でも、今日はここに来て良かっただろ?」
「午餐と小舞踏会を抜け出して来て、言う言葉じゃないわよ」
「それは言いっこなしだ」
「……」
「ああいうの僕には向いてないって知ってるでしょ、蒼剣の剣姫さん」
「一国の王太子の言葉とは思えないですわ、ユア ハイネス」
「……やめてくれよ」
「あなたが、その異名を使うからでしょ」
「分かった。悪かったよ。でも、これでリラックスできただろ」
「……」
56
あなたにおすすめの小説
Gランク冒険者のレベル無双〜好き勝手に生きていたら各方面から敵認定されました〜
2nd kanta
ファンタジー
愛する可愛い奥様達の為、俺は理不尽と戦います。
人違いで刺された俺は死ぬ間際に、得体の知れない何者かに異世界に飛ばされた。
そこは、テンプレの勇者召喚の場だった。
しかし召喚された俺の腹にはドスが刺さったままだった。
どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-
すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン]
何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?…
たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。
※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける
縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は……
ゆっくりしていってね!!!
※ 現在書き直し慣行中!!!
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった
仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。
そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?
異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~
イノナかノかワズ
ファンタジー
助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。
*話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。
*他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。
*頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。
*本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。
小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。
カクヨムにても公開しています。
更新は不定期です。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる