30年待たされた異世界転移

明之 想

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第5章 王都編

王都冒険者ギルド 4

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 幻影?
 幻影ヴァルター!?

 それって……。

 そうか、それで聞き覚えがあったんだ。

 赤鬼、剣姫、幻影!

 ギリオンとヴァーンがよく口にする高名な剣士のひとりじゃないか。

「……」

 3人の高名な剣士。
 その内の2人と同じ日に邂逅し、さらに1人とは手合わせをする。
 今日はなんて1日だ!



 王都の冒険者ギルド裏に併設された別館の訓練所。
 ヴァルターさんとの手合わせは、この別館で行われる。

 本館から繋がる通路を抜け訓練所の中に入ると。
 目の前に広がるのはオルドウの訓練所と同じく日本の体育館のような屋内施設。ただし、規模が違う。ここはドーム球場なみの広さがあるんじゃないだろうか。

 ここもまた、立派な施設だよ。
 さすが王都は違う。
 そう感じるのは今日何度目だろう。

 で、この訓練所。
 壁と天井は本館のように石造りだが、地面だけは砂地を簡単に固めて作られているみたいだ。
 戦闘訓練をするのだから、砂の地面の方が安全ということだろう。


「準備はいいか」

「いつでもいいですよ」

 そんな立派な訓練所の一角で、木剣を持って対峙しているヴァルターさんと俺。
 今回は魔法無しでの立ち合い。
 幻影と呼ばれる剣士ヴァルターさんと剣のみでの手合わせ。

「……」

 悪くない。
 気分が高揚してくるな。

 ちなみに、ヴァルターさんは木剣と木盾、俺は木剣だけを手にしている。


「おぉ! 教官が立ち合うのか」
「珍しい! 相手は誰だ?」
「見たことねえ奴だぞ」
「アリマという名前らしい」
「聞いたことないな」
「けど、あいつもいい構えしてるぞ」
「いやいや、現役を退いたとはいえ幻影の相手じゃないだろ」

 この時間。
 ギルドには、あまり多くの人の姿は見えなかったのに……。

 なぜだか、多数の冒険者がヴァルターさんと俺の手合わせを観戦している。

「……」

 訓練所使用の申請をアリマの名でしておいて良かった。

 にしても、あまり目立ちたくはない。
 幻影ヴァルターさん相手に上手くできるのか?

 まっ、今さら考えても仕方ないな。


「いくぞ!」

「どうぞ」

 お互いの距離は5メートル。
 不敵な笑みを浮かべたヴァルターさんが地面を滑るような足取りで接近する。




****************************

<キュベリッツ王国王太子視点>



「剣姫さん、遅かったじゃないか?」

 冒険者ギルドの別館に設けられた特別室。
 珍しいことに、イリサヴィアが遅れて入ってきた。

「申し訳ありません。少々問題がありまして」

「ん? また街に出てたのかい?」

「宮に参る前に、少しだけですが」

「ふーん、剣姫さんは優しいからねぇ」

「いえ、殿下ほどでは」

「はは、よく言うよ」

「……」

「それで、問題は片付いたのかな?」

「……はい」

「それは良かった」

「慈悲深い殿下のお心に感謝いたします」

「そろそろやめようか、その喋り方は」

 公私の区別をという彼女の考えは、もちろん正論なのだが、ふたりでいる時くらいは堅苦しいのはやめてほしい。

「ですが、ここはギルドの中ですので」

「特別室の防音を疑うのかい。扉の外で待機している者にも、こちらの声は聞こえないんだからさ。問題ないだろ」

「……」

「ほら、もっと気楽にして」

「……」

「カタイなぁ。剣姫イリサヴィア様は」

「はぁ~、分かったわ。だから、その呼び方はやめてくれないかしら」

「おっ、やっといつもの姿に戻ったね」

「……あなたが望んだからよ」

「まあ、そうだねぇ」

 そう言う君も窮屈なのは嫌いだよな。
 ホントはさ。

「でも、今日はここに来て良かっただろ?」

「午餐と小舞踏会を抜け出して来て、言う言葉じゃないわよ」

「それは言いっこなしだ」

「……」

「ああいうの僕には向いてないって知ってるでしょ、蒼剣の剣姫さん」

「一国の王太子の言葉とは思えないですわ、ユア ハイネス」

「……やめてくれよ」

「あなたが、その異名を使うからでしょ」

「分かった。悪かったよ。でも、これでリラックスできただろ」

「……」




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