30年待たされた異世界転移

明之 想

文字の大きさ
401 / 1,578
第5章 王都編

迎撃 3

しおりを挟む
「一族の意向に逆らう愚か者は始末するしかないですねぇ。それとも、ウィルミネアを差し出しますか?」

「……断る」

「フフ。愚かですねぇ、ヴァルター」

「……」

「一族に逆らい、さらに、この数に挑むとは愚の骨頂です」

「うるさい。お前の御託などいらん」

 その通り。
 相変わらずよく喋るやつだ。

「本当に愚かだ」

「オルセー、無駄話はそれくらいにしておけ。降伏する気がないなら、さっさと片付ければいい」

 堂々たる体躯を軽装鎧に包んだもうひとりの騎乗者が吐き捨てる。

「バシモスさん、分かってませんねぇ。これは様式美というやつですよ」

「ふん、くだらん。やるぞ」

「はぁ~、分かりましたよ」

 ふたりが馬を降り近づいてくる。
 後ろには他の者も従っているが……。

「かわいそうですから、私たちふたりで相手をしてあげます」

 本当か?
 数の有利を口にしていたのに。

「おい、後ろの者たちも使え」

「私たち2人で充分でしょ。それに、この狭さですよ」

「……」

「では、私はこっちの若い方と戦いますので、バシモスさんはヴァルターをお願いできますか」

「お前はヴァルターとやりたいんじゃないのか?」

「まあ、そうなんですが、こっちの若造とも因縁がありましてねぇ」

「……いいだろう」

「助かります。では、お前たちは少しの間見物していなさい。私とバシモスさんが戦いますから」

 本当にふたりだけで戦うのか。
 ありがたい。

 しかし、オルセーは凄い自信だな。
 前回は俺に敗れているというのに。

「……」

 また宝具でも持ってきたのか?
 持ってるんだろうなぁ。

 となると、全く油断はできない。
 宝具の恐ろしさは、身に染みて理解している。

 バシモスというやつも厄介そうだ。

 けど、まあ……。

 ヴァルターさんなら何とかするだろう。
 もし苦戦するようなら、加勢すればいい。


「それでは、バシモスさん」

「ああ」

 俺とオルセー、ヴァルターさんとバシモスがそれぞれ距離をとって対峙する。

「ヴァルターさん、そっちは任せましたよ」

「任せとけ! で、コーキさんは大丈夫なのか?」

 既に戦闘準備は済んでいる。
 身体は重いが……。

「ええ」

 弱気なことは言ってられない。

 さて、オルセーと再戦だ。

「自信満々ですねぇ」

「当然だろ。お前には一度勝ってるからな」

「ふふ、生意気なことを」

「……」

「あれは、油断したからですよ。今回は覚悟してください」

 確かに、マリスダリスの刻宝で動きを止められた直後に剣を向けられていたら、どうしようもなかっただろうな。

 ただ、今の俺はあの時とは違うぞ。
 それに、マリスダリスの刻宝もこちらの手の中だ。

「いきますよ!」

 ああ、今度こそ決着をつけよう。

「アイスアロー!」

 オルセーから発動される氷魔法。
 これは前回経験済み。

 が、発動は早いし、威力も十分。
 やっぱり、大した魔法の腕前だよ。

 と!

 身体を振ってアイスアローを躱したところに、オルセーの細剣が迫る。
 これも前回と同じような剣筋。
 鋭い一撃だが。

 キン!

 引き抜いた剣でオルセーの剣をはね上げ。
 そのまま剣を戻し、オルセーに袈裟がけに斬りつける。

 オルセーは不十分な体勢。

「っ!」

 そこから後ろに跳躍した。

「危ないですねぇ」

「……」

 そうだった。
 こいつはアクロバティックな動きができるんだったな。
 あの打突の体勢から後ろに跳ぶなんて、普通はできない。

 大口をたたくだけの実力はある。
 魔法も剣も動きも一級品だ。

 けどな、俺も前回の対戦時より成長しているんだよ。
 問題はない。
 体調面を除けばな。

「フフ、やはりあなたの剣は素晴らしい」

「分かっていて、よく向かってきたな」

「私も剣と魔法には自信があったんですが、あなたには勝てないかもしれませんねぇ。ですが……フフ、ハハハ」

 以前と同様、嫌な嗤いをしてくれる。

「戦いはそれだけじゃありませんので」

 この余裕の理由は。

「また宝具か」

「ご名答です」

 その言葉と共にオルセーが俺の前から消え失せた!
 宝具発動の文言は唱えていない?

 呪文不要の宝具なのか?

「……」

 面倒なものを使ってくれる。

 ただ、目の前から消えたということは……。

「……」

 そういうことだよな。

 っ!?
 早い!

 背後に生まれた殺気を帯びた気配に、前に跳躍したまま振り返る。

「アイスアロー!」

 至近距離で放たれた魔法。
 前に跳んでいなければ、対応は困難だっただろう。
 が、僅かでもこの間隔があれば。

 カキーン!

 着地と同時に飛来する氷の矢に剣を振るい、弾き飛ばせる。

「……」

 今のは、ちょっと危なかった。

 体調不良の影響か。
 思ったほど身体が動いてくれない。
 というか、とにかく身体が重い。

 それに……。

 あいつの宝具。
 橘の瞬間移動より厄介だぞ。
 単純な転移系宝具じゃないのか?

「……」

 この体調に加え未知の宝具。
 簡単じゃないな。

 長引くとまずそうだ。



しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“  瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  だが、死亡する原因には不可解な点が…  数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、 神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~

やみのよからす
ファンタジー
 病院で病死したはずの月島玲子二十五歳大学研究職。目を覚ますと、そこに広がるは広大な森林原野、後ろに控えるは赤いドラゴン(ニヤニヤ)、そんな自分は十歳の体に(材料が足りませんでした?!)。  時は、自分が死んでからなんと三千万年。舞台は太陽系から離れて二百二十五光年の一惑星。新しく作られた超科学なミラクルボディーに生前の記憶を再生され、地球で言うところの中世後半くらいの王国で生きていくことになりました。  べつに、言ってはいけないこと、やってはいけないことは決まっていません。ドラゴンからは、好きに生きて良いよとお墨付き。実現するのは、はたは理想の社会かデストピアか?。  月島玲子、自重はしません!。…とは思いつつ、小市民な私では、そんな世界でも暮らしていく内に周囲にいろいろ絆されていくわけで。スーパー玲子の明日はどっちだ? カクヨムにて一週間ほど先行投稿しています。 書き溜めは100話越えてます…

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

処理中です...