30年待たされた異世界転移

明之 想

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第10章 位相編

感知

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「君、教えてもらえないかな?」

 今は気を眼に集めたと言い張るしかないのだが。
 それで何が見えるのかと聞かれると。

「非常に興味深いのでね」

「……」

 しかし、この老人。
 魔力の流れを感知できるのか?
 それとも、単なる推測?
 鎌をかけているだけ?

「ふふ……」

 興味津々といった様子でこちらの返答を待つ坊城老人。
 そこに隠された考えは?

 だめだ、読み取れない。

「どうかな?」

 返答に困ってしまうが、このまま黙っているわけにもいかないか。

「特別なものは何も見てません」

「あの眼で何も見ていない?」

「その通りです」

「……なるほど」

 笑みをたたえた瞳の中に垣間見える鋭い眼光。
 まるで、こちらの意図を見通しているようにさえ感じてしまう。

「では、君の身躯、臓腑を流れる異様な力は? それも気かな?」

 っ!

「仮にそれが気の流れだとして、何のために気を巡らしていたのかな? どんな意図があるのか、とても気になるのだが?」

「……常に気を循環させているだけです」

「特段の意図はないと?」

「はい」

「眼への力の集中も常態だと?」

「……」

 一手ずつ攻め込まれるような詰問に、すぐには言葉が出てこない。
 返答に詰まってしまう。

「あれが常態とは、ふふ、面白い」

「……いえ」

「ふむ?」

「おそらくですが……異能を持つ方々を目の前にして、無意識に気を集めていたのだと思います」

 苦しい釈明だということは重々承知している。
 けれど、今はこれくらいしか思い浮かばないんだ。

「……」

 坊城老人は明らかに納得していない表情。

「ならば、今の君は?」

 ん?

「その眼に力が集まっていないのは?」

「……」

 もう間違いない。
 この老人は魔力感知能力を持っている。

「どういうことだろう?」

「……集中が切れただけです」

「ほう、集中が切れたとな」

「……」

 完全に見透かされている。
 そう考えるべきだ。

「なるほど」

 それでも、魔力の存在だけは知られちゃいけない。
 しらを切り通さないと。

 そう緊張を新たにしているところに。

「坊城さん、彼は異能者ではなく普通人です」

「ふむ」

「それくらいで勘弁してもらえませんか?」

 鷹郷さんが助けに入ってくれた。

「……ちとやり過ぎた、か?」

「……」

「興が乗ると、どうもいかん」

 これは?

「君、すまなかったね」

 ここで引き下がる?
 本当に?

 あの好奇の光が簡単に消えるとは思えないのだが?

「老人の好奇心を許してくれるかな?」

「……許すも許さないもありません」

「そうか」

「……はい」

「ふっ、ふふふ」

「……」

「ふふ、今日は好いものを見ることができたわ」

 口も目も緩んでいるのに、まったく笑っている感じがしない。
 その妖しくも不気味な声色に鳥肌が立ってくる。


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