30年待たされた異世界転移

明之 想

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第12章 激闘編

山中

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<エリシティア視点>



「姫さん?」

「ん? ああ、問題ない」

「こりゃ、まだ本調子じゃねえか」

「……」

「もう少し横になってた方がいいぜ」

「いや、平気だ。それより……?」

「おう、わけ分かんねえよなぁ」

 ギリオンも状況が理解できていない。
 なら、他の者も?

「エリシティア様!」

「エリシティア様、お目覚めになられたのですね? お体の方は?」

 そこに近づいてきたのが、リリニュスとウォーライル。

「体に問題はない。が、この状況が理解できぬ」

「申し訳ございません。異界を脱出できた理由もこの地がどこかもいまだ不明です」

 謝罪は不要だ。
 いきなりの転変なのだからな。

「ただ周囲の探索からは、山中であると推測されます」

「森ではないと?」

「はい。まず山で間違いありません」

「なら、問題は」

「どこの山か、ですね?」

「うむ。この地に見覚えのある者はおらぬのか?」

「「「「「……」」」」」
「「「「「……」」」」」

 周りに集まっていた騎士たちは皆、口を閉ざしたまま。

「ここがどっかは分かんねえけどよぉ」

 そんな中、口を開いたのはギリオン。

「あの空間よりはましだろ」

「……」

 それは、まあ、その通りだ。
 だが、黒晶宮を目指す我が身にとって位置は軽視できるものではない。

 どことも知れぬ山中からカーンゴルムまで辿り着けるのか?
 辿り着けるとして、かかる時間はどれほどになる?
 いや、そもそも、本当に異界から脱しているのだろうか?

「ここが新たな異界ということは?」

「「「「「……」」」」」
「「「「「……」」」」」

 当然、誰も答えられぬよな。

「エリシティア様」

 うん?
 リリニュスには答えが?

「周囲にあのドラゴンの気配は存在しません」

 やつの気配なら、そう。
 まったく感じられない。
 とはいえ、あの異界でもドラゴンは頻繁に消えていたぞ。

「大気中の痕跡も皆無です。ここがドラゴンの創り出した異界なら何らかの波動を感じ取れるはずですのに」

 気配はなくとも、波動は残っているはず。
 優れた感知能力を持つリリニュスなら、それに気付けると?
 ならば。

「ここは異界ではない?」

「はい、私はそう考えます」

「オレもそう思うぞ」

「ギリオン殿も感知を?」

「いんや、勘だな」

 勘なのか……。

「けど、自信あんぜ」

 勘なのに確信している?

「リリニュスの感知とオレの勘が言ってんだから間違いねえ」

「……」

 確かに、そういうものかもしれないな。
 実際、空気が澄みわたり不快さを微塵も感じさせないこの地が赤に染まった陰鬱な世界と同等とは思えない。

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