僕の考えた最強ドラゴンで世界征服~復讐を誓う悲劇の王子は50年前へと遡る!行こうアヴァロン、殺戮の始まりだ~

泥水すする

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第3章 戦争の幕開け

第17話 勝利への確信

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 アブゾーブとマントが食料調達の為に狩りへと出掛けていたーーその帰り道である。

「おいマント。ありゃ何だ?」

 突然、仕留めたばかりの大きな獣を肩に抱いたアブゾーブが呟いた。

「えっ?どこですか?」

「あそこだ。ほら、森ん中から出てくる」

 アブゾーブはそう言って指差して、

「…あれは…革命軍か!?」

「…そう、みたいですね」

 今度こそマントも視認して、特徴なカラーリングの軍服を身に纏う兵士の列を見た。

「でもまた何でこんな場所で…」

「おいおい…まさかと思うが俺たちを襲撃しに来たんじゃねーだろうな!?」

「どうでしょうか?革命軍が勧告もなしに襲ってくるとは思えませんが、」

「でもよ、見ろ、あいつら武装してやがる。しかもだ、あの様子…どう見たってただ事じゃねーだろうよ」

「確かに。襲撃かは別として、あった風に見えます…」

 アブゾーブとマントに緊張が走りよぎる。
 また次の瞬間、緊張は嫌な予感へーーー二人の耳に、森の方から地響きのような音が聞こえていた。

「これは戦闘音…なのか?」

「さぁな。でも戦闘音だとしたら…こりゃあ化け物同士の闘いだ」

「化け物、ですか…こちら側はそれでも頷けますが、果たして革命軍側にそのような人物がいるのか…仮にいた場合、少々厄介な事になってるかもしれませんね…」

「違いねぇ!マント、お前は森の中を頼む!」

「アブゾーブ様は?」

「俺か?俺はあいつらだよ」

 アブゾーブは鼻で笑って、革命軍を目で追った。

「このまま逃すわけにもいかねぇ…だろ?」

「了解しました。では、僕は状況確認へと行って参ります!」

「おう、任せた!」

「アブゾーブ様」

「ん?」

「…御武運を」

「はは、お前もな?」

 アブゾーブとマントは、それぞれの行動を開始した…

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 オーズベルトは[竜化状態]へと移ったデイトナに防戦一方を強いられていた。常軌を逸脱したデイトナの動きが、オーズベルトを圧倒し続ける。

「ほらほら、どうしたオーズベルト!僕を殺すのだろうが!」

 デイトナは挑発して、オーズベルトに剣の連撃を浴びせる。
 オーズベルトはその連撃を紙一重のところでは回避しては、デイトナが隙を見せる瞬間を今か今かと待ちわびていた。

 そんな攻防がかれこれ数分ほど過ぎて、オーズベルトは悟った。このままではジリ貧になるのは自分の方である、と。

 何せデイトナに隙なんてありはしない。むしろ、次第にその動きにキレが増している様な感覚さえ覚えている。
 
 ただ、オーズベルトは諦めてはいなかった。

 確かに部が悪いは明らかにオーズベルトの方だが、この状況を一変させる方法をオーズベルトは導き出していたのだ。

 一瞬でも反応が遅れれば死ぬ、ならばそうならない為の安全な立ち回りが要求される状況に於いて、オーズベルトは危険な回避行動を止めることはしないーー何故か?オーズベルトの揺るぎない勝利の確信はどこにあるのか?ーーそれはオーズベルト自身にしか分からない。

 オーズベルトはデイトナを打ち倒すために導き出した答えを、剣へと込め始めていた。

『一撃でいい。別に心技体の美しさなんて望んだりはしていない。ただ一撃浴びせることでいい…この不利な状況は覆す』

 オーズベルトはそう確信していた。

『…狙うは必中。無様でもいい、お粗末な必殺必中の刃だけで充分ですよぉ…』

 オーズベルトは再度、剣を握り直して、来たる一瞬に向けて、意識を集中させ続けていた。デイトナの数手先の行動を先読みして、軽やかには回避を繰り返すだけ。その繰り返し。

『今は不利でもいい…いくら挑発されてもいい…最後に生き残っているのが僕であれば、何だって構わない…』

 それは絶対強者たるオーズベルトの心情である。

 真っ直ぐとデイトナを見つめるオーズベルトに、迷いはなかった。

「デイトナ・カースト、最後の忠告です。僕は…あなたを本気で殺しますよ?」

「へぇ、こんな状況になってまだそんな減らず口を叩ける元気があるのか…驚きだよオーズベルト。そして、哀れだよ」

「…あなたは人類を舐め過ぎた。だから、ここで死ぬんだ。人類を代表して、散っていった数多の亡者に代わり、僕があなたを殺す」

「くくく、あははははははははは!!威勢はよろしい。だが、御託はもうたくさんだ!そうまで言うなら…やって見せろオーズベルト。お前にそれが出来るというなら、僕を…殺してみせろ!!」

「ええ、分かりました…恨まないで、下さいねぇーー
 と、オーズベルトは言い残した。次の瞬間、

「!?」

 デイトナの体が一瞬、揺らいだ。それは一瞬の揺らぎ。なれどその一瞬の隙だけでオーズベルトは充分であった。

「ドラゴンスレイヤー…それは竜を殺す為に存在したとされた僕の先祖で、僕そのものだ。デイトナ・カースト、君が言ったように…もしかしたら
僕は君を殺したくて疼いていたのかもしれない。だから、思いついたのかもしれない」

「なーー」

 デイトナは揺らぎ定まらない視線をオーズベルトに向けた。そこに、剣を天高く翳したオーズベルトの蜃気楼のような姿を見た。

 それが蜃気楼ではないとデイトナが気付いた時、既にオーズベルトの剣が振り降ろされた後だった。

「竜との融合、確かに君はそう言った。だからこそ、僕は君に勝てると確信していた…」

 デイトナの崩れゆく姿を尻目に、オーズベルトは話を続けた。

「知っていたかい?ドラゴンスレイヤーに備わった竜細胞を破壊するオーラとはね、大気中にも分散できるだ。もちろん大気に分散したオーラになんたまち大して効力を見込めないのは分かっていた。しかも一度オーラを分散してしまえば暫くはオーラを発することさえできないことも。だけどね、それだけで良かったのさ…ができれば、それだけで…」

 オーズベルトは悲しそうに、笑っていた。

「ごめんね、僕は君を殺すよ」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 森を抜け、寂れた市街地へ。ポルーチェは一目散に駆ける最中にも、自身の隊長としての統率力の無さに心底呆れ返っていた。また自身の弱さを改めて痛感していたのだった。

 部下が勝手な行動に出た事も、元はと言えば隊長である自分の身から出た錆びであり、またオーズベルトにしんがりの様な真似をさせてしまったことも、そもそも自分の実力がオーズベルトよりも遥かに劣ってきたからだという事実を今回改めて突き付けられた。それが悔しくて悔しくて堪らないポルーチェは、ただ足を急がせ、逃げることしかできない。

 そんなポルーチェの前に、その男は突如としては立ち塞がった。

「よぉ、お前らこんなとこで何してんだ?ええ?」

 アブゾーブだ。

「あなたは…ゾロマンティス軍の…アブゾーブか?」

 ポルーチェは警戒心を強め、恐る恐るは尋ねた。

「ああ、までは…な?」

 ニヤリと口角を上げたアブゾーブは、腰を落としては剣を抜いた。敵意を剥き出しにして革命軍を牽制した。

「今ではとある王子様につく雇われ傭兵みたいなもんさ。で、お前らはここで何をしている?」

「……」

 ポルーチェは黙って、後退りをした。そうして背後を振り返っては、恐怖に慄く隊士たちの悲痛に満ちた表情を見た。そんな隊士たちの反応と同様のものをポルーチェ自身もまた抱いていたのだった。

 それは戦闘狂と知られるゾロマンティス軍のアブゾーブの恐ろしさをよく理解していたからであり、いざアブゾーブを目の前にして、その恐ろしさの理由を何となくではあるが感じでしまったからである。

「黙秘か…まぁいい。理由はどうであれ、ここは[デイトナ戦線]の領地だ…その意味、分からないわけでもないだろう?」

 すぐにも飛びかかってきそうなアブゾーブの覇気に押され、革命軍は絶望色一色に染まりきっていた。
 
 『どうしてこんなことになった…』

 その場にいた革命軍の誰しもがそんなことを思っていたそんな状況下、引くことも出来ずに、前に進むことも出来ずに、もしかしたら自分達は死んでしまうのではなかろうかという不安が革命軍を襲う。

 『もうこれまでか…』

 革命軍の誰かが心の中でそう呟いたーーーその時だった。

「私が相手をしましょう…アブゾーブ」

 恐怖を振り払って、ポルーチェはアブゾーブの前へと出た。その手に剣を握る締め、鋭い目付きでアブゾーブを睨みつけていた。

「ほう…女、一番先に死にてぇのか?」

「馬鹿言わないで頂戴。生きたいからこそ…戦うのよ」

 そう言ったポルーチェの言葉に嘘偽りはなかった。

 生きたいからこそ戦うーーーそれは単に自分自身のことだけではなく、例えば背後に控える兵士たちの為だったり、例えば自分達を逃がす為に戦っているオーズベルトのことを思ってだったり、例えば自分達革命軍を信じてくれている民の願いに応える為だったり…総じて、ポルーチェは生きる道を選択したのだった。

 それでも実力は間違いなくアブゾーブに劣るだろうことはポルーチェ自身もよく理解していた。もちろん兵士たちもアブゾーブに軍牌が上がっている事を認めざるを得なかった。

「ポルーチェ様…」

 兵士の1人がポルーチェの名を呼んで、「逃げましょう」というセリフを続けようとした。でもそれができなかったのは、振り向いて勇ましくは微笑む、愛すべきポルーチェの顔を見てしまったからである。

「せめて隊長としてこれぐらいはさせてよ」

 ポルーチェはボソリと言って、アブゾーブへ向けゆっくりと歩むっていった。

 兵士たちはそんなポルーチェを覗いて、皆一様にはこう思っていた。
 
『ポルーチェはアブゾーブに敗れて、死ぬ。敬愛するポルーチェが…死ぬ』

 それだけは絶対にあってはならないと、兵士の誰かが思った。そうしてまた1人、また1人と…ポルーチェの後ろを続き、兵士たち全員は剣を構えた。

「ポルーチェ様を、お護りする。その為に我々はここまで来たのだろう?」

「ああそうさ。ポルーチェ様が死ぬ事など、あってはならない」

「我々のような屑をいままで庇ってくれていたポルーチェ様に、今こそ忠義を」

 兵士たちは恐怖を噛み殺した。剣先にアブゾーブの姿を捉え、離さない。

「あなたたち…」

 ポルーチェもまた、それら兵士たちの勇気に鼓舞され、今一度生きる覚悟を改めた。

『絶対に生きる…いや、生きなければならない!これまで自分を支えたくれた人達を裏切りない為にも、そしてこれから私が支えてあげなければならない彼等兵士の為にも!」

 死闘が、開幕する。

「いいぜぇ…纏めてかかってこい…」

 アブゾーブの目に殺気が込められた。

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