能ある冒険者は、その内に秘めたる魔槍”グングニル”を隠す -北欧神話伝来の魔槍グングニルを与えられた俺という最強の存在の苦難の旅路-

泥水すする

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第3章

第7話 欲に堕ちた人間とは時に何たらかんたら

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『欲に堕ちた人間とは、時に魔物よりも恐ろしい』

 それは魔物に殺され死んだ俺の爺さんの言葉だ。ただそうは言って於いて、皮肉にも爺さんは魔物に殺された。

 この場合、爺さんの言葉を素直に信じるか否かについてだが、その事を判断するには当時の俺は若すぎた。

 あれから五年過ぎた。では五年経った今はどうかと問われたとして、正直よく分からず仕舞いだった。故に、この分だと一生理解することはないだろうなと、そう思っていたんだよ…

 その日までは。

「ちょ、ちょっと待て!今、何て言った?」

「い、いえ、ですから担当者の話によると、あなた方が倒したとされる魔物ポイズンデスパリストなんですが…規定には五体分の尻尾を採取せよとの通達に対し、あなた方が持参してきた尻尾の採取数が規定に満たないとのことでしたので、そのぅ…」

「つまり、報奨金は発生しないと…そう言うのか?」

「そう、なりますね…はい…」

 なんてこった。

「ちょ、バンキス!どういうことか説明しなさいよ!何で報奨金もらえないわけ!?」

 放心状態のまま皆の元へ戻って報奨金が出ない旨を伝えて、やっぱりマルシャが騒ぎ出していた。

「今言った通りだ。どうも俺たちはヘマを踏んでしまったということらしい」

「そんなわけないでしょ!?だって皆んなでちゃんと確認したじゃない!?あんなクッサい尻尾を数え間違えるわけないもの!」

 ああ、全くその通りだよ。確かに俺たちは尻尾を袋に詰める前にちゃんと確認をした。クッサい尻尾が一本~二本~三本~、と声に出しながらな。つまりだ、間違えるわけないんだよ。

「ただそれを証明する手段がない。また証明してくれる人もな…」

 こんな事ならあの時、袋をお姉さんに渡した時にでも強引にでもいいからちゃんと開けて確かめてもらうべきだったんだ。そうは思ったところで後の祭りだが、これじゃあ余りにも納得できない。

「バ、バンキス様…もしやこれは…」

 重たい口振りでルクスが呟き言って、その後続くだろうルクスの言葉を何となく理解できた俺は「ああ、多分…」と自ら応えていた。そして、

「俺たちを嵌めた犯人がいる!!」

 と、名探偵さながらの考察を披露していた。決まった…

「あ、あんた…何でそんな楽しそうなわけ?」

 マルシャのジト目が飛んできてくる。

「んなわけあるかバーロー!?俺は今無茶苦茶に怒ってんだよ!だがな!?ここで感情に身を任せては犯人に思う壺だ!だからこそ一先ず冷静になろうと…爺ちゃんの名にかけて…」

「ねぇ馬鹿なの?あんたやっぱ馬鹿なの?ねぇ教えて?ねぇねぇねぇ?」

「お、落ち着けマルシャ…調子に乗って悪かったよ…」

 冗談はさておき、

「俺としてはその尻尾を確認した担当者が怪しいと思うだが、みんなはどう思う?」

 かくして、ギルド内に設置されたテーブル席を陣取った俺たちによる俺たちの為の緊急会議は始まった。

「いやそいつ以外考えられなくない?」

 と、呆れ顔のマルシャ。

「そうですよ。大体なんですか担当者って?一体何を担当してるんですかね?無能を担当しているんですか?職務怠慢が趣味なんですかね?」

 それは苛立ち口調のルクスだ。

「全くけしからん奴だ!一回とっちめてやる必要があるぞい!」

 などと血気盛んなのはガイル。

 では皆の意見を纏めよう。

「よし、じゃあその担当者を抹殺するということで決まりだな?」

「「「もちろん!!」」」

 満場一致で緊急会議は終了した。よし、ではその担当者を早速殺しに行こうということで動き出して、

「いや駄目じゃん!それ犯罪じゃん!」

 咄嗟に冷静になった俺とは、既にお姉さんのいるカウンターの真ん前までやってきていた。

「あ、あのう…まだ何か?」

「いや、実はですね?やっぱりさっきの件について納得がいかないので、その担当者さんとやらに直接話を聞きたいなぁー、なんて、あはははは」

「ちょっとバンキス!?あんた何でいきなり弱気になってんのよ!ちょっとどきなさい!」

 俺を押し退けたマルシャがお姉さんに詰め寄って、

「御託はいいから早くその担当者やらを出しなさいよ!」

 声を張り上げてはそう言った。うん、やっぱお前マジ頼もしいよ。頼もし過ぎて怖いぐらいだよ。

「そ、そう言われましても…」

「何よ!?やっぱり何かやましい事があるってそういうこと!?」

 お姉さんはひどく困った顔色を浮かべていた。いやそりゃそうだよな、だって別にお姉さんが悪いわけじゃないんだし、いきなり怒鳴られても困るよな。

「なぁマルシャ?やっぱ一旦戻ってもう一度作戦を、」

 と、俺がいいかけた。

 その時だった。

「おや、どうかされましたか?」

 カウンターの奥から姿を現したそいつが言った。言って、俺はそいつと目線が合う。

 おいおいマジかよ…

 俺はそいつの顔を見た時点で、此度の騒動の大体を察していた。

「おやおや、これはこれはバンキス様ではありませんか!?奇遇ですね!」

 そう言ってニッコリスマイルを浮かべるそいつとは昨日会ったばかりである。ただそうだと言うのも関わらず、そいつの顔が脳裏に焼き付いていたのはそいつが悪い意味で印象深かったから。

「ミ、ミミカさん?あれ、お知り合いでしたか?」

 受付けお姉さんはそいつへと一礼して、確かに「ミミカ」とはその名を読んだ。要するに、そういうことなんだろう。

「はぁ…じゃあ何か?お前が俺たちのクエストにケチをつけた『担当者』とでも言うんじゃないだろうな?」

「ケチをつけたとは意味がよく分かりませんが、担当者という事に関して言えばその通りです。それで、何かあったんですか?」

 白々しい言い草でミミカは言って、ウフフとは悪戯な笑い声をあげた。その笑みとは、まるで弱みを握ってやったとは言いたげで。

「ゴッド信教の人間が冒険者ギルドに組みしているなんてな…職権乱用も甚だしいぞ!?」

「おやおや、やはり言っている意味が分かりませんね?私が何か疚しい事をしたとでも?証拠は?証拠はありますかぁあああ!?」

 汚ねぇ…マジ汚ねぇ!

「バンキス、こいつが昨日あんたが言ってた、」

 マルシェが訝しげな目線をミミカにぶつけながら言って、俺は頷いて、

「ああ、その通り。こいつが昨日俺に絡んできたゴッド信教のイカれ野郎だ。まさかこの件に関わっていたなんてな…」

「じゃあ、私達はまんまとこいつの術中に嵌っていて、手のヒラの上ではコロコロ躍らされていたってわけね…ふん、ゴッド信教か何か知らないけど、中々やるじゃない…」

 おい、なに勝手に感心してんだ!?今の状況ほんと分かってんの?

「まぁ、話は奥で聞きますので、皆様ご一緒で構いませんので一度奥に来てもらってもいいですか?」

 依然としてニヤニヤと悪い笑みを浮かべたミミカとはそう言って、辺りを見回した。俺はミミカの視線に続いて周りを見渡して、辺りに人集りができている事を知る。

 いかん、かなり悪目立ちしているようだ。

「くそ、仕方ねぇ…今はお前に従うしかねぇって、そういうことだな?」

「分かって頂けて助かります!では、行きましょう!こちらです!」

 そう声を弾ませたミミカを視界先に、昔爺さんが言っていた『欲に堕ちた人間とは、時に魔物よりも恐ろしい』という言葉の意味を深いところで理解している俺がいた。理解したくはなかったとは、そうも思ったね。

 いやはや、悪運も極まれば笑いが溢れるよ。

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