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第3章
第9話 苦労人は苦労人に同情する
しおりを挟むその場所について、初見の感想とは陰気臭い。また邪悪なる気配を感じなくもない。要するにだ、普通の思考判断を持ち合わせている人間が来るような場所じゃないということだけは先に述べさせて頂こう。
カナリヤ大墳墓、何でもどこぞの偉い奴の死体が埋葬されているとかいないとか、その辺については俺もよく知らない。また誰も近寄りたがらないこの大墳墓の情報とは、誰に聞いたって二つ返事で「知らない」と即答される始末。ただはっきりと、得体の知れない異質な空間とだけは理解できたね。
では、どうしてそんな得体の知れない異質な空間であるカナリヤ大墳墓についていきなり語り出したという件についてだが、
というのも、俺たちパーティ御一行はゴッド信教らについて行く形でそのカナリヤ大墳墓へとやってきたいた。
ではでは、どうしてそんな得体の知れない異質な空間であるカナリヤ大墳墓にやってきたという件についてだが、
その件については俺達をカナリヤ大墳墓へと誘ったゴッド信教の方々の先頭に立つミミカにでも直接尋ねる他ないという次第である。
「で、一体全体ここで何を始める気だ?」
「よくぞ聞いてくれましたバンキス様!では、お答えしましょう!」
ミミカは空に向かって大きく両手を広げて、
「今からこのカナリヤ大墳墓で、お宝探しをしたいと、そう思っております!」
などと、突然そんな訳のわからない事を大きな声で口走っていた。
いきなり何を言い出すかと思いきや宝探しときたもんだ。もうね、全く持って理解不能だと、そう思ったね。
「た、宝探し?」
「そうです!いやそうと言うのもですね?何でもこのカナリヤ大墳墓の奥地である地下の間には手付かず財宝が眠っているとの情報を聞きまして~」
んなもん聞いた事ねぇぞ?
「情報の根拠は?」
「ありません!」
全くふざけた野郎だ。
「いやね?私もギルドたまたま冒険者達が話しているのを小耳に挟んだ程度でしたので~あははははは」
ああ、そうかい。つまり信憑性のカケラもない無根拠の元には俺たちをこの大墳墓に連れ出したと、
「分かったよ、じゃあその宝探しとやらに協力したとして、本当に俺達が本来受け取るはず報酬を返してくれるんだな?」
「まぁ、結果次第ではありますが、そういうことですね、はい」
はい、じゃねーよ!?こいつ悪いことしてるって自覚あんのか!?
「なぁ、お前あんな奴に仕切らせといていいのか?仮にもお前がゴッド様で、この宗教の頭なんだろ?」
ヒソヒソ声で、俺は自身のすぐ隣に佇むゴッド様へと耳打ちしていた。
「別に構わない。いつもこうだから」
ゴッド様は俺同様にはヒソヒソ声で呟いた。その口調とはミミカの独断劇場には慣れっこだとは言いたげである。呆れ返っているとも捉えられなくはない。
「何だよ、じゃあ実質あいつがリーダーみたいなもんなのか?」
「否定はしない」
いや否定しろよ教祖様!?
「な、なぁ…お前はそれでいいわけ?」
「いいわけないだろ。でも仕方ないではないか…俺だって始めはこんな事になるなんて聞いてはなかったし、ただ姉貴に『ゴッド信教の教祖様やってみない!?あんた確か魔法で槍っぽいやつ作れたでしょ?』とかいきなり持ちかけれてさぁ…まぁ暇だったし?少しぐらい手伝ってやろうかなって軽いノリで教祖様になってみたらこの有り様だ。今じゃあゴッド様となった俺はレッドドラゴンを一撃で葬り去ったという英雄様扱い…荷が重い…重すぎるだろこんなの…」
「そ、そうだったのか…って、いや待て。お前の姉貴ってまさか、あれ?」
俺はミミカを指差して、ゴッド様はコクリと一回頷いた。
「ウチの馬鹿姉貴がほんと申し訳ない…」
何故か謝られていた。
うん、何かこいつの気持ち少しわかる気がするの。てかめっちゃ理解できるの!
「お前も大変なんだな…いやな、というのも俺もおかしな仲間に囲まれちまってさ…これまで散々な目にあってきてさぁ…」
「お、お主もなのか?いや、でもそんな方々には見えないが…」
と、ゴッド様の目線がマルシャとルクスとガイルの方へとチラッと一瞬だけ向いて、彼女達はと言うと、宝探しというワードに何やら心躍らせている様子。どうしてこんな状況になってまでそんな楽しめるのか理解が遠く及ばない姫さん方の姿がそこにはあった。
「ゴッド様…俺の方こそ、なんかごめんって、そう言いたい」
「…確かにウチの馬鹿姉貴と同じ波長を発しているような気がする」
俺へと向き直っては何かを悟ってくれていた。
何てこった、まさかこんなところで良き理解者を得る事になるとは思わなんだ、こいつとは良い酒が飲めそうな気がするわ、マジで。
「ゴッド様?先ほどからバンキス様と何コソコソと話しておられるのですか?」
ついつい話に夢中になり過ぎていたせいか、ミミカの不審がる瞳が俺達へと向けられていた。俺は焦って言い訳を口にしようとして、
「いや、ただの作戦会議だ。何の問題もない、続けろミミカ」
慣れた口調ではゴッド様を演じるゴッド様を見た。
流石ゴッド様だ、もう俺なんかよりずっとゴッド様としての風格はあるよ。まさか本物のゴッド様が隣にいるだなんて思っちゃいないだろうが、そのまま気づかないでは欲しいね。
「ナイスだゴッド様、助かったよ」
「いいんだ。もう俺ゴッド様として生きる道しかないから」
「…まぁ、元気だせって?今度酒でも奢ってやるから、そん時にでも悩み聞いてやるよ、な?」
「…恩にきる。お前、中々いい奴だな?」
ゴッド様はフッと笑みをこぼした。
そんな笑みとは苦労人のそれだ。大変なのは俺だけじゃないんだなぁと思わせる見事な苦労人スマイルである。
同情の余地あり、そう思う俺も苦労人だがな。
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