能ある冒険者は、その内に秘めたる魔槍”グングニル”を隠す -北欧神話伝来の魔槍グングニルを与えられた俺という最強の存在の苦難の旅路-

泥水すする

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第3章

第10話 忠告は素直に聞けと言うが、だかしかし

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「こうなってしまったのも何かの縁よ!いい皆んな!?あいつらより先にそのお宝とやらを見つけ出して根こそぎ掻っ攫うわよ!?」

 それはすっかり宝探しに乗り気となったマルシャの掛け声である。

 ミミカ達ゴッド信教と別れた俺達とはカナリヤ大墳墓の内部へと突入していた。いよいよ後に引けなくなった手前、やはりと言って姫さん方はかなり楽しそうにしている。

「いやぁ、一時はどうなることかと思いましたが、報酬も返ってきてお宝をゲットできるとあらば何の問題ありませんね!?」

 ルクスは言って、ルンルンとした様子では口笛を吹き始めていた。いやお前何そのピクニック気分?

「よし、ここはいっそ誰が一番先にお宝を見つけ出せるか競争ぞい!」

「お、いいわねぇガイル!それ中々楽しそうじゃない!」

「ガイル様、ナイスです!」

「えへへ…ぞい」

 ガイルは照れていた。照れんでよろしいと言いたくとも、嬉しそうにしているガイルを手前口に出すのも気がひける。もうどうにもでなれ。

「はぁ、お前らよくこんな場所ではしゃいでいられるよな…」

 そう言った俺の視界に陰湿な空間は広がっていた。そんな空間とはもちろんカナリヤ大墳墓の内部で、今現在俺達はカナリヤ大墳墓内部の長い道を歩いてる最中である。

 足元は頭上から滴り落ちてくる水滴のせいかグズグズとぬかるんでおり、壁の石タイルには苔なり蔦なりがびっしりとへだりついたいた。俺達はトレジャーハンターか何かかな?

「ダンジョンと言えばそうも呼べなくないが…」

 何だろうこの感じ…普通のダンジョンとはまた一風違った雰囲気を受けるのは俺の気のせいか?

 このカナリヤ大墳墓については謎でしかない。一体いつからそこにあって、一体誰の為に建造された大墳墓なのか?考え出したらキリのないことばかりだ。

 考えたところで分かるわけもないわけだから、仕方なく前へと進むしかない。ないが、一体この先がどこへと繋がっているのか…不安でしかないのだよ。

「あんた少しはこの状況を楽しみなさいよ?」

「何を馬鹿な事を言っているんだマルシャ、お前はこの状況の危険性についてちっとも理解していない!仮にも伝説の勇者の末裔ならばもっとそれらしく振る舞え!」

「うっさいわね、そんなこと分かってるての!でも仕方ないじゃない?元はと言えばあんたが原因なんだし?」

「くっ…まだそれを言うか…」

 いやでも確かに?ゴッド信教と関わりを持ったのは俺がきっかけだし?ミミカに目を付けられたのも俺が激しくゴッド信教の入会を断ってしまったからだし?でもよ、それ俺が悪いわけ!?

「例えばだがマルシャよ、お前はもしも空から鳥の糞が降ってきて、その鳥の糞を浴びてしまったとして、そんな場合についてお前は鳥の糞を浴びてしまった自分が悪いんだと言い切れるのか?」

「はぁ?何それ?よく意味わかんないけど、いきなり糞を降らしてきた鳥が悪いに決まってるじゃない?」

「だろ?そうだろ?だったら今回のこともそうだ。俺は悪くはない。全てはあのゴッド信教なる者達が全ての元凶!悪のそれだ!決して敵を見誤るな愚か者!」

「ま、まぁそう言われれば確かにそうね…全てはゴッド信教が原因、つまりそのトップであるゴッド様が全て悪いと、あんたはそう言うんでしょ?」

「違う!ゴッド様は何も悪くない!ゴッド様の事を悪く言うな!あいつは俺の友達だ!」

「は、はい!?あんた言ってる事矛盾してるんですけど!?」

「いや違うんだマルシャ、これには深い意味があるんだ」

「どういう意味?」

「そ、それは…むむむ!!」

「???」

 くそ、ゴッド様に自分の正体については黙っておいてくれと言われた手前、その約束を破る事はできない。何故ならあいつは俺の友達、良き理解なのだ!友達を売るなんて、そんな事俺には出来ない…

「……こほん、仰る通りだマルシャ…やっばりゴッド様が悪い。全ての元凶、それで誤りはなかった…だからすまん、さっき俺の言った事は忘れてくれ」

「???」

「ただ覚えておいて欲しい…ゴッド様は凄くいい奴なんだ。俺はあいつを心より応援したい!」

「……あんたほんと大丈夫?」

 あああああああ何この複雑な心境ぉおおおお!!!?





「バンキス殿…ちょっと」

 大墳墓の内部へと進んでしばらく経った頃、俺達は以前として先の見えない不気味な道を進んでいたーーーそんな時だった。不意に、ガイルとは俺の側へと近寄ってきて何やら怪訝そうか顔色を浮かべては俺の袖を引っ張ってくるではないか。

 はて、何かあったのだろうか?

「バンキス殿、気付かないか?」

「ん?何をだよ?」

「いや、この奥から多数の魔物の気配が漂っているぞい」

「魔物か…やはりここにも棲み着いていやがったか…」

 と、驚きはしたがそんな気はしていた。大体こんなに広い大墳墓に何もいない方がおかしいってもんだ。

「詳しい数はわからないのか?」

「ええ…でも、かなりの数とだけは…」

 ガイルは訝しげな口振りでは言って、やはりと言ってその顔はどこか晴れない。

 たかだか魔物如きにビビるガイルではないだろうに、一体どうしたってんだと俺はガイルを眺めて、

「何でそんなビビってんだよ?」

「…ビビってなどはいないぞい!ただ…この反応は明らかに…いや、でもでも…ぞい…」

「ハッキリしねーな。ヤバイ奴なのか、その魔物ってのは?」

「ヤバイかどうかは実際に見ないと分からぬが…通常の魔物とは少し違う。これは多分、古種の魔物という奴だぞい」

「古種の、魔物?」

 聞いた事なかった。てか、魔物に古種なんてものが存在する事すら知らなかった俺とは魔物についてかなり疎い。知りたいとも思いはしないが。

「古種の魔物、それは現代に生息している魔物達の起源ようなものぞい。今この世界に現存している魔物とはその古種の魔物から派生して誕生したと言われていて、別名プロトタイプと呼ばれている…私も遭遇するのは初めてぞい」

「成る程な。魔王に最も近しいガイルが知らないというのであれば、それはそれは珍しい魔物ってことなんだな」

「その通り。故にどんな魔物かも、果たしてどれ程の力量かも謎が多い…バンキス殿、気を引き締めておくようにとだけ伝えておくぞい」

 と、ガイルの顔はいつものお茶らけ顔とは打って変わって真剣である。こいつがこんな顔をするなんてそっちの方が驚きだった。

 でもそうか、ガイルも知らない魔物ってことはもちろんマルシャも知らないだろうし、つまり対策の立てようがないということだ。

 不測事態に備えておく必要があるだろう。もしかしたら先日の赤紙クエストのようには手こずる可能性が無きにしも非ずと言えなくもない。

 改めてガイルの忠告を念頭に置いて、ふと、ルクスの背負ったリュックから顔だけを出したペトロちゃん(改)と目が合ってしまった。そんな刹那である。

『バンキス…バンキスよ…我の声が聞こえるか?』

 何者かが頭の中に直接語りかけている感覚を覚えていた。そんな存在とはペトロちゃん(改)に憑依合体した大精霊サンダルフォン様ことサンちゃんだとは自ずと理解する俺がいた。

『いや、聞こえないよ?だから早くその気色悪い顔を下げてくれないか?』

『うむ、聞こえているようだな…って、貴様!我の仮初めの姿を愚弄するでない!これでも我は大精霊ぞ!?結構偉いんぞ!?』

『ああはいはい、分かった分かった悪かったよ。で、今度はまた何だ?』

『ふん、白々しい奴め…まぁいい。今はそれどころじゃない。バンキス、今回は大精霊である我から有難い忠告しといてやるからな、心して聞け』

 などと、いつにも増して大精霊らしい大精霊らしさを見せつけるサンちゃんである。

『忠告?』

『ああ、そうだ。流石のお前でも今回ばかりはちと荷が重いだろうと思ってな…先程ガイルちゃんに古種の魔物が近付いてきているとは聞いているな?』

『まぁ、チラッとは』

 ほとんど無知に近い範囲ぐらいにだけどな?

『その古種の魔物については無理に理解する必要はない。そもそも貴様のようなアホウが理解できるものではないからな、あれは』

 ほうほう、言ってくれんじゃねーの。

『バンキスよ、もしも古種の魔物と遭遇した場合、即時撤退を肝に命じておけ。間違っても倒そうなどと思わぬことだな…死ぬぞ?』

 死ぬ?この俺が?

『悪い冗談か何かか?はたまた大精霊なりに俺を心配してくれているとか?』

『馬鹿言え!何故我が貴様のようなアホウを気遣わなければならない!?勘違いするなよ?我はただルクスらを死ねせたくないだけだ!貴様だけが死ぬぶんには特に問題はないが…』

『サンちゃん?最後のは別に口に出す必要なくない?泣くよ?俺泣いちゃうよ?』

『とにかくだ!バンキス、彼女ら美少女達を全力で守れ!そしてもしもの時は自らを盾として、そして死ね!我が言えることはそれだけだ!』

『もっと他に言うことあんだろ!?辛辣にも程があんだろうが!?』

『五月蝿い!とりあえずバンキスよ、前を向け!来るぞ…』

 そこでサンちゃんとの通信は途絶えた。途絶えて直ぐにも、俺はサンちゃんの言われた通りには渋々前へと向いたーーその時だ。


 奥から、何やらガサゴトと俺たちに向かって近付いて来るのが分かった。それが何なのかは今更考える余地もなく、その古種の魔物というやつなのだろう。

 ガイル曰く、謎多き魔物の元祖的な奴。サンちゃん曰く、この俺でも敵わない奴らしい。

 はて、そんな奴とは一体全体どんな奴なのか様子を伺うこと数秒後、ついにそいつは姿を現した。
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