能ある冒険者は、その内に秘めたる魔槍”グングニル”を隠す -北欧神話伝来の魔槍グングニルを与えられた俺という最強の存在の苦難の旅路-

泥水すする

文字の大きさ
44 / 46
第5章

第3話 ご注文は決戦ですか?

しおりを挟む

 俺が激戦の舞台に辿り着く頃、既に彼等の勝敗は決していた。

「貴様も我に刃向かうつもりか?」

 と、覇気に満ちた声が問い掛けてくるのは魔剣豪ガイスト=バスタード様だ。間近で見るとかなりでかい。軽く5メートルは越えているのではないか?しかもだ遠く目で見た時は分からなかったが、このガイストという魔剣士はアンデット。肉体を失ったガイコツに魂が宿ってるいる、的なガイコツ野郎だった。

 そんなガイコツ野郎が仰々しい鎧姿で仁王立ちする様はかなりの迫力である。

 そして、ガイストの肩には三人の少女達がグッタリとした様子では乗っかっていた。右から順にマルシャ、ルクス、ガイル、かつての俺の仲間達だった。そんな仲間達とはどうもガイストに敗北したらしい。

 小さな擦り傷やらはあるがそれ以外に目立った外傷はない。ただすっかり気を失っているみたいだ。

 取り敢えず死んでなくて良かったとホッとする。ホッとして良かったのかは甚だ疑問ではあるが、

「よう、どうやら俺の仲間が世話かけちまったみたいだな」

「仲間ぁあ!?」

 と、ガイストは自身の肩で伸び切っている少女達を指差して、俺は頷いてそれに応えた。

「そうそう、それそれ」

「それ呼ばわり、だと?おい貴様…貴様の言う『それ』の中にはガイル様も含まれているのかぁあ?えぇ!?」

 途端にガイストのただでさえ歪んだ顔が更に歪んでいた。随分とご立腹な様子である。知るか。

「ああもちろん。ガイルは俺の愉快でお馬鹿な仲間の一人だよ。わざわざ運んでくれてありがとな?後は俺が面倒みるから平気平気、帰っていいぞ?」

 俺が何の意識もせずに軽い調子のままそう言い切った、次の瞬間、

「ガイル様を誑(たぶら)かした人間とは貴様かぁあああああああッ!!」

 と、やはりかなり怒っていた。激しい怒号が地鳴りのようには飛んでくる。

 しかもそれだけじゃない、禍々しくも巨大な大剣もセットでた。

「ちょ、たんま!?何キレてんだよ!?カルシウム足りてねーんじゃねーのか!?」

「ふざけた事を言うなぁッ!!俺は見ての通り全身ガイコツでカルシウムの塊でって…今はそんな事どうでも良いッ!!とにかく死に晒せぇええッ!」

「うわぁああああああ」

 なんて、驚いてみたりした。うん、中々見事な演技っぷりだと思う。俺も冒険者なんか辞めて劇団員にでもなろうかな…





 なんてな?

「は、はぁッ!?」

 それはガイストの声だ。驚愕そうな声色を上げている。無理もない、

「わ、我のッ!我の腕がぁあああああッ!?」

「おー、中々骨太だなー、確かにカルシウムは足りてるみたいだな…」

 俺は切断したガイストの腕を片手に持って、それを眺める。

 すげー…かなり重い、何食えばこんな骨になるのか不思議で仕方がないぜ全く。てか重すぎて邪魔だなコレ。

「やっぱ返すわ。なんか捨てるの勿体ねーし」

「ききき、貴様ぁああッ!?一体何をしたッ!?」

「何って、見たまんまだろ?」

 と、俺はグングニルを見せつける。

「お前がいきなり斬りかかってきたから腕ごと切り取ってやった。言わばあれだ!正当防衛?」

「ほざけぇえッ!!」

 やっぱり襲いかかってくるガイスト。地面に落ちていた大剣を掴み上げる。そして、

「今度こそッ、死ぬぇえッ!!!」

「死ぬかアホ」

 俺はひらりと回避、ガイストの残った腕を綺麗に切断してやった。

「グハァッ!!!」

 流石はグングニル、投げてもいいし振ってもいいし何でもアリ。でも俺的にはやっぱ投げる方が好きかな?だってその方が神の一撃っぽくてなんかカッコイイだろ?

「く、クソォッ…我は…こんなの認めないゾぉッ…」

「何だよ、まだやる気か?何度やっても無駄、とっとと諦めてくれよ。疲れるから」

「抜かせぇえッ!人間風情がこの我に指図するでないッ!」

「じゃあ何?土下座でいい?土下座すればそいつら返してくれんの?」

「返すワケなかろうがァッ!?此奴らは我に楯突いた愚かな奴等だぁッ!あ、ガイル様は別ね?だから魔王城へと連れて帰り、あんな事やこんな事を…グヘヘへへ…あ、ガイル様にはマジそんなことしないから?ほんとだから?魔王様に絶対引き渡すから?」

「なに、お前ガイルの事好きなの?」

「ばばばば、馬ッ鹿じゃねーのッ!?我が!?ガガガが、ガイル様を!?はぁッ!?ちっげーし!!そんなんじゃねーし!?確かに?ガイル様はこの世で一番可愛くて美して気高くて可愛くて美して気高くて、」

 何回繰り返す気!?

「ああ分かった分かった、だから取り敢えず落ち着こ?な?ほら、深呼吸深呼吸!」

「き、貴様ぁあああ…我をどこまでもコケにするつもりかぁああ…」

「いやだからそんなんじゃないって!?俺はただ仲間を助けに来ただけだからな!?てかそもそも悪いの攻めて来たお前だからな!?悪い事してる自覚ないわけ!?」

「あるか戯けぇッ!!人間は魔物に仕えるべき下級種族…そんな人間共がどうなろうと我の知ったところでないッ!!」

 あー、そういう感じ?人間を下に見ちゃうタイプの魔物?

「ふーん、あっそ。何だよ、せっかく穏便には済まして背後から闇討ちしてやろうと思ったのに…お前みたいなとんでもねークソ野郎は正々堂々殺したくなっちゃうだろうが…」

「我を殺すッ!?ぶははははははッ!戯け愚かな人間よ!!腕の一本や二本を落としたぐらいでいい気になるなよぉッ!?我の真の姿を見て尚その威勢を保てるか実物だなぁ!?ククク…いくぞッ!人間ッ!」

 そうして、魔剣豪ガイスト=バスタードは真の姿とやらになるべく変身を開始していた。ご丁寧にも少女達を地面に降ろして。

 俺の勘違いかもしれないが、こいつ本当はいい奴なんじゃないかってそう思ったりしていた。

 だってそうだろ?人質をわざわざ自分から手離してくれて、尚且ついきなり真の姿やらへと変化し出してくれたからかなり無防備な状態だ。ガイストの行動一切が「自分を殺してください」とは体現しているようで、そんな気がしてならないのだ。

「ぶはははははははッ!人間…あと少し…あと少しで我の真の姿が見られるぞ!」

「ちなみにあとどれ位?」

「…そうだなぁ…あと1分ぐらいとかそんなところか…おや?どうした人間…怖いか?」

「いや、全然?」

「え?あ、そう?では…ククク…あと暫し待て!」

 待つか馬鹿。

「グハァッ!!」

「もう一突き」

「ッ痛!おいッ!やめんかッ!?変身中に攻撃してくるとは何と卑怯なッ!?」

「うっせ」

「ッ痛い痛い!!分かったッ!分かったから少し待て人間よッ!?冷静になって考えてみろッ!?我の真の姿を見たくないのかッ!?ヤバイぞ?本当に強いんだぞッ!?カッコイイんだぞッ!?」

「じゃあ初めからその姿で来れば良かったのでは?」

「ちょ、おま…アホか貴様はッ!?後から変身するから良いのではないかッ!?ビフォーアフターというやつが何故分からんッ!?第二形態ぞ第二形態!?ほんとロマンのない奴めッ!」

 め、めんどくせ…

「もういいや、じゃあそのロマンとやらごとブチ抜いてやるからさ…それでいいだろ?」

「は、はぁッ!?待てッ!何をする気だッ!?やめろッ!マジやめろッ!」

「知るか馬鹿。恨むなら自分の無能さを呪って…そして死ね」

 グングニルに力を込める。こいつは少しばかりタフそうだから、いつもよりちょっとだけ力増し。

「ステンバ~イ」

「や、やめろぉおおおおおおおッ!!!」

 そして、

「せいっ!!」

「うわぁああああああああああああああああああッ!!」

 グングニルが変身中のガイストの胸元を貫いた。そのままガイストとは激しい勢いのまま宙へと投げ出され、爆散。

 戦闘終了。

「あっけねー」

 さすが俺。最強過ぎる。

「さてと、」

 俺はぐったりと地面に伏した少女達の元へと歩み寄ろうと歩き出して、

「…ん?」

 身が震える程の殺意を感じた。

「おい、何余所見している?」

 と、声を聞いた。それはついしがた葬った筈の奴の声。

「ッ!?」

 慌てて振り返ろとした時には、既に遅かった。

「ーーーえ?」

 脳が揺らぐ。揺らいで、視界がぐらりと赤く滲んでいた。そのまま脳天に激痛を感じて、そして、

「さぁ、始めようじゃないか…決戦をッ!!」

 朦朧とする意識の中で聞いた声とは、やはりガイストのもので間違いはなかった。

 どうやら死んでなかったらしい。うん、最悪だ。

「……はぁ、ほんと…めんどくさい奴…」

 ご注文は決戦ですか?

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

商人でいこう!

八神
ファンタジー
「ようこそ。異世界『バルガルド』へ」

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

処理中です...