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19話
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「こんにちは~!!」
弾んでいる声。その挨拶と共に、水神の隠れ家に遠慮なく入ってきた者がいる。それは、十二から十四歳くらいの水色の髪をしたおかっぱの少年。
「だれ?」
口をモグモグさせながら、声のほうへ目線を動かした。ニコニコと笑みを浮かべる少年が一人で立っている。
「あれ? ご飯食べてたの? 僕も食べていい?」
自由だなぁ。誰だか尋ねているのに、なんでご飯の話になるんだろうか。食べているものの見た目も味も質素なものだ。それに、採集してきたものを調理し、適当に目に付いたお皿に盛り付けただけ。この緑ばかりのものを食べたいと本当に思っているようには見えない。まあ、私は、食べられるだけで感謝している。
ゴクンッ。口の中にあったものを飲み込んで、気になっていることをもう一度、聞いてみた。
「君、だれ?」
「あ~、うんうん。僕はね、シズクっていうんだ。これからよろしくね~、ククリちゃん!」
ゾワっとした。「ククリちゃん」と呼ばれたのが、とても気持ち悪かった。思わず、両腕をさすってしまう。
「あれ? 一応、僕、女の子にモテるんだけどな~。その嫌そうな反応、新鮮だ~」
間延びした声が、耳に入ってくる。この人のモテるモテないの情報はどうでもいい。ただ、気の抜けるような話し方をする子だな、と思っていた。
「あ、麗しき水神様~。やっほーー! 久方ぶりですね。僕、貴方様の神子です!!」
無駄にテンションが高い。敬っている感じもしない。ほら、君が馴れ馴れしいから水神も顔をしかめているよ。
「ミコ?」
「ええ!? 僕は男ですけど、今代の貴方様の神子ですよ~。久方ぶりとは言いましたが、実は会ったのはこれが初めてです! よろしくおねが……」
「いらぬ」
「え~~!?」
意外なことにトントンと話が進んでいく。水神、彼が馴れ馴れしいところには触れないんだね。そこが一番、問いただしたいところだとは思うのだけれど……。「ミコ」の話に発展してるし……。私にはさっぱりわからない話だよ。
少年の挨拶を遮り、水神は瞬時に断った。その拒絶に驚いたのは彼である。大きな声で叫んだ後、「なんで~!? なぜだ~~!?」と騒ぎたてている。
「足手纏いだ。邪魔だ。お前の心の奥には澱みがある。何かの企みを隠しているのは、私に害がなければどうでもよい。だから、神子のくせに私に隠し事をするのは許そう。が、私はお前を信じようとは思えないな」
「ふ~ん。水神様ってケッペキショウ? 心が澱むなんて、生きていれば当たり前のことだよ~。僕は村のやつらに血の繋がった家族を殺されたから、尚更」
彼は人を睨み殺せそうな表情をしている。明るくチャラけたような人間が、一瞬にして無表情に近い顔を見せた。彼は村の人間に、どれだけの恨みを持っているのだろうか。村の人々に虐げられていた私とは違った理由であるが、村の人間が憎いところは私と少し似ている気がした。
「さっさと帰ってはどうだ? 居候は一人で十分だ」
「あはっ! 水神様も難儀だよね~~。ある人に利用されて、生贄なんかもらうことになってさ。僕、これでもいろんなこと知ってるんだよ?」
水神が促した帰宅を無視し、違う話をはじめた彼。まるで、自分のペースに引き込もうとしているみたいだ。
満面の笑みで水神へ近づいていく。食べたいと言っていたご飯を素通りして、一直線に水神のもとへ。一体、彼は何を知っているのだろうか。
弾んでいる声。その挨拶と共に、水神の隠れ家に遠慮なく入ってきた者がいる。それは、十二から十四歳くらいの水色の髪をしたおかっぱの少年。
「だれ?」
口をモグモグさせながら、声のほうへ目線を動かした。ニコニコと笑みを浮かべる少年が一人で立っている。
「あれ? ご飯食べてたの? 僕も食べていい?」
自由だなぁ。誰だか尋ねているのに、なんでご飯の話になるんだろうか。食べているものの見た目も味も質素なものだ。それに、採集してきたものを調理し、適当に目に付いたお皿に盛り付けただけ。この緑ばかりのものを食べたいと本当に思っているようには見えない。まあ、私は、食べられるだけで感謝している。
ゴクンッ。口の中にあったものを飲み込んで、気になっていることをもう一度、聞いてみた。
「君、だれ?」
「あ~、うんうん。僕はね、シズクっていうんだ。これからよろしくね~、ククリちゃん!」
ゾワっとした。「ククリちゃん」と呼ばれたのが、とても気持ち悪かった。思わず、両腕をさすってしまう。
「あれ? 一応、僕、女の子にモテるんだけどな~。その嫌そうな反応、新鮮だ~」
間延びした声が、耳に入ってくる。この人のモテるモテないの情報はどうでもいい。ただ、気の抜けるような話し方をする子だな、と思っていた。
「あ、麗しき水神様~。やっほーー! 久方ぶりですね。僕、貴方様の神子です!!」
無駄にテンションが高い。敬っている感じもしない。ほら、君が馴れ馴れしいから水神も顔をしかめているよ。
「ミコ?」
「ええ!? 僕は男ですけど、今代の貴方様の神子ですよ~。久方ぶりとは言いましたが、実は会ったのはこれが初めてです! よろしくおねが……」
「いらぬ」
「え~~!?」
意外なことにトントンと話が進んでいく。水神、彼が馴れ馴れしいところには触れないんだね。そこが一番、問いただしたいところだとは思うのだけれど……。「ミコ」の話に発展してるし……。私にはさっぱりわからない話だよ。
少年の挨拶を遮り、水神は瞬時に断った。その拒絶に驚いたのは彼である。大きな声で叫んだ後、「なんで~!? なぜだ~~!?」と騒ぎたてている。
「足手纏いだ。邪魔だ。お前の心の奥には澱みがある。何かの企みを隠しているのは、私に害がなければどうでもよい。だから、神子のくせに私に隠し事をするのは許そう。が、私はお前を信じようとは思えないな」
「ふ~ん。水神様ってケッペキショウ? 心が澱むなんて、生きていれば当たり前のことだよ~。僕は村のやつらに血の繋がった家族を殺されたから、尚更」
彼は人を睨み殺せそうな表情をしている。明るくチャラけたような人間が、一瞬にして無表情に近い顔を見せた。彼は村の人間に、どれだけの恨みを持っているのだろうか。村の人々に虐げられていた私とは違った理由であるが、村の人間が憎いところは私と少し似ている気がした。
「さっさと帰ってはどうだ? 居候は一人で十分だ」
「あはっ! 水神様も難儀だよね~~。ある人に利用されて、生贄なんかもらうことになってさ。僕、これでもいろんなこと知ってるんだよ?」
水神が促した帰宅を無視し、違う話をはじめた彼。まるで、自分のペースに引き込もうとしているみたいだ。
満面の笑みで水神へ近づいていく。食べたいと言っていたご飯を素通りして、一直線に水神のもとへ。一体、彼は何を知っているのだろうか。
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