猫は恋したので、カフェに行く(仮)

月詠世理

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番外編②

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 縄が溶けて自由になった石英さん。身動きが取れるようになって嬉しそうだった。皆は解く作業をしていたため、ぐったりしていた。

「今度こそ帰ろうぜ。まじ疲れた」
「逃げられないようにと思ってやりすぎたみたい。でも、これくらいしないとだめだってことがわかったよ」
「ここまで雁字搦めにしないと逃げる石英さんは何者ですか!?」
「えへへ、ただの学生だよ」

 はにかんではいるけれど、全く褒めてないので、勘違いしないで欲しい。制服を着ていることからもそうだし、先生には見えないことからも学生であることはわかる。それが聞きたかったわけではない。私自身、何が聞きたかったかさえ、もうわからないけれど。

「石英さん」
「うっ、りっちゃん」

 じりじりと後退する石英さんに奥村先輩は懐からチケットを取り出した。それを見て気まずそうな表情が緩んだ。警戒心も薄れたようである。

「それ! 渡してくれるっていう約束!!」
「別に約束はしてませんし、渡すとも言ってません。考えると言っただけです」
「えー!! りっちゃんまで意地悪しないでよ」

奥村先輩に迫ってチケットを取ろうとしたが、伸ばした手は避けられている。それを何回か繰り返していた。

「あなたたち遊ぶなら他所でやって」
「遊んでるわけじゃありません。タダで取られるのは困ります」
「えー、りっちゃん、早くそれ寄越してー!!」
「石英。あなたは推し事禁止よ。それを譲り受けたところで目的の場所へ行けるわけないでしょう」

 衝撃を受け、その場にへたり込んだ。泣いている。

「酷いよ。道、ちゃんと喋ったのに!!」
「依頼人は?」
「えへっ?」

 知らんふりを決め込んでいた。それにピクリと眉を動かした山城先輩。

「はぁ、それ寒気がするからやめて。あなたがやったことの後始末をするなら行けるようになるかもね。そのために、レジを直して、アプリを復旧して、調査と返金対応。アプリにはお知らせをする」
「じゃあ、そこまでできたらチケットを譲ってもいいかもですね。石英さんの頑張り次第で考え直しますけど」
「え? マジ? りっちゃん、嘘つくなよ? 僕、調査は徹夜してでもやってみせるから! 返金は先生に確認してもらってから。他は楽々復旧できるし!!」

 チケットがもらえるかもしれないということで、やる気になっている石英さん。それを冷めた視線で見つめるのは奥村先輩だった。

「絶対に渡すだなんて言ってないのに、勝手に一人で盛り上がってますよ」
「まあ、いいんじゃないの? どうせ渡す気だったんでしょ?」
「僕としては困りませんからね」

***

数日後。

「これなら、妖精の隠れ家を再開できますね。ありがとうございます」
「そ、そんなことは……あります。もともと僕が招いたことなんですけど。そ、それで、アレはありますよね? アレですよ?」

 そわそわと動き出した石英さん。それを冷静に対処する奥村先輩。

「これですか? どうぞ」

 キラキラとしたチケットが渡された。嬉々としてチケットを眺めている。

「やったーー!!! これで特典もらえ……」

 急に動きが止まった。その後、何回かチケットを確認している。

「ハ? ン? エ? 道の目がおかしくなったのかな?」

 どうやら戸惑っているらしい。何度も何度もチケットを見ているが、それはどんな理由があっての行いなのかと思う。奥村先輩だけが石英さんの行動の意図を把握しているのだろう。

「正常だと思いますよ。僕が持っていたのは過去にいただいたものなので」
「もったいな! その時は道に譲れよ!? てか、全然日付違うじゃん! 道、何のために頑張ったんだ!? お金もなくなったし、彼女のグッズもほとんど消えたし。やっぱり、りっちゃんは悪魔だ!!」

 泣き喚いてどこかへ走り去った。

「ミッチー、働いた分のお金は入ってくるから、そのために頑張ったと思うしかない」

 本人には届かぬ声があった。
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