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第66話:国王への告発
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「―――やれ」
宰相ヴァルザーの冷たい号令と共に、『影蛇』の暗殺者たちが一斉に俺たちへと襲いかかってきた。
同時に魔族の将軍ザルガスも、地響きを立てて突進してくる。
絶体絶命の包囲網。
だが、俺たちは怯まなかった。
「フレア!」
俺の叫びに、フレアは雄叫びで応えた。
「おおおおおっ!」
彼女はウォーハンマーを大地に叩きつけた。それは攻撃ではない。彼女が事前に足元に埋めておいた、ドワーフ製の閃光玉を起動させるための合図だった。
カーン!という甲高い音と共に、足元の石畳から太陽のように眩い光が爆発した。
「ぐわっ!?」
「目があああ!」
不意の閃光に、暗闇に慣れていた暗殺者たちの目が眩む。ザルガスの動きも一瞬だけ止まった。
その、ほんの一瞬の隙。
「リリア、走れ!」
俺はリリアの手を掴み、唯一の突破口――ヴァルザーがいる広間の奥――へと駆け出した。
俺たちの目的は脱出。敵の数が少ない方向へ抜けるのが最善の策だった。
「小賢しい!」
ヴァルザーは袖で目を庇いながらも、俺たちに向かって黒い剣を振るった。
闇の斬撃が、唸りを上げて飛んでくる。
だが、その斬撃が俺たちに届く寸前、頭上の天井から都合よく巨大な岩塊が落下してきた。
俺の『幸運』が、またしても発動したのだ。
岩塊は闇の斬撃を受け止めて砕け散り、俺たちの盾となった。
その衝撃で、遺跡全体がさらに激しく揺れる。
俺たちはヴァルザーの横を駆け抜けた。彼の驚愕に歪んだ顔が、スローモーションのように見えた。
「ザルガス! 奴らを追え!」
ヴァルザーが叫ぶ。
だが、ザルガスが体勢を立て直すよりも早く、フレアが彼の前に立ちはだかった。
「へっ! てめえの相手は、このあたしだぜ、トカゲ野郎!」
「どけ! 小娘が!」
「嫌だね!」
フレアとザルガスの壮絶な一騎打ちが始まった。ウォーハンマーと戦斧が激しく打ち合わされ、火花が散る。フレア一人では長くは持たないだろう。だが、彼女は俺とリリアが逃げるための時間を、命懸けで稼いでくれていた。
俺とリリアは、広間の奥にある別の通路へと飛び込んだ。
「フレア様が!」
リリアが心配そうな声を上げる。
「信じろ! あいつは簡単にはやられない!」
俺はリリアを励ましながら、ひたすら走った。
背後からフレアの雄叫びとザルガスの怒声、そして遺跡が崩れ落ちる轟音が追いかけてくる。
俺たちは、バルガスたちが待つ合流地点を目指した。
だが、道は複雑に入り組んでいる。
「こっちですわ!」
リリアが精霊の導きを頼りに、俺を先導する。
俺の幸運も、脱出という目的に向かって最大限に作用していた。
行く手を塞ぐはずだった瓦礫は、なぜか俺たちが通る時だけ崩れ落ちず、俺たちが通り過ぎた直後に道を塞いで追手の足止めをしてくれた。
迷路のような分岐路では、必ず正しい道の方から都合よく風が吹いてきた。
やがて、俺たちは見覚えのある通路へとたどり着いた。バルガスたちと出会った隠し通路だ。
そこには、俺たちを待っていたバルガスとレジスタンスのメンバーたちがいた。
「アッシュ殿! リリア殿! 無事か!」
バルガスが俺たちの姿を見て、安堵の声を上げる。
「証拠は!」
「ここに!」
リリアが懐から『記憶水晶』を取り出して見せた。その水晶は淡い光を放っている。
「よくやった! 実に見事だ!」
その時、背後からフレアが合流した。その体のあちこちに傷を負い、息も絶え絶えだったが、その瞳は勝利の光に輝いていた。
「はあ……はあ……あのトカゲ野郎、しつけえのなんのって! なんとか足止めはしてきたぜ!」
「フレア! 無事だったか!」
「あたりめえよ! この程度であたしが死ぬか!」
彼女は悪態をつきながらも、嬉しそうに笑った。
俺たち三人は、ついに生きて帰還した。
そして、最強の切り札を手に入れた。
「―――全員、聞け!」
バルガスが、集まったレジスタンスたちに向かって高らかに宣言した。
「我々の反撃の時は来た! これより、我々は王城へと向かう! 宰相ヴァルザーの罪を、国王陛下に直接告発し、奴に正義の裁きを下すのだ!」
「「「おおおおおおっ!」」」
レジスタンスたちの雄叫びが、地下通路に響き渡った。
***
翌日の早朝。
王城の玉座の間は、異様な緊張感に包まれていた。
バルガス率いる『王国の盾』のメンバーたちが、武装したまま玉座の間に押し入ったのだ。
騎士団は、かつての尊敬する上官の姿に剣を抜くこともできずに狼狽している。
玉座に座す国王も、この予期せぬ事態にただ震えているだけだった。
そこへ当の本人、宰相ヴァルザーが冷静な顔で現れた。
「……これは何の騒ぎかな、バルガス殿。武装して玉座の間に押し入るとは、反逆罪に問われるとご存知かな?」
その声には余裕さえ感じられた。
彼は俺たちが地下から脱出したことを知っている。だが、証拠を掴まれたとまでは思っていないのだろう。
「黙れ、国賊めが!」
バルガスが怒声で応えた。
「貴様の罪は全て分かっておる! 貴様が魔族と手を組み、勇者パーティを謀殺し、この国を我が物にしようとしていること、その全てをな!」
「……ほう。面白い妄想だな。証拠もなしにそのような戯言を」
ヴァルザーが鼻で笑った、その時だった。
「証拠なら、ここにあります」
俺がレジスタンスたちの後ろから、ゆっくりと前に進み出た。
リリアとフレアも俺の後に続く。
俺の姿を見て、ヴァルザーの顔からついに余裕の色が消えた。
「……貴様……!」
俺はリリアから受け取った『記憶水晶』を、高く掲げた。
「この中には昨夜、貴様が魔族の将軍と交わした売国の密約の全てが記録されている。国王陛下、そしてここにいる全ての者たちの前で、再生してやろうか?」
その言葉に、玉座の間は水を打ったように静まり返った。
国王も騎士たちも、皆信じられないという顔でヴァルザーと俺を交互に見ている。
ヴァルザーの額に、一筋の冷や汗が流れた。
彼の完璧な計画が、音を立てて崩れ始めた瞬間だった。
追い詰められた。
完全に。
誰もがそう思った。
だが、ヴァルザーはヴァルザーだった。
彼は絶望的な状況の中で、狂気に満ちた最後の賭けに出た。
「……ククク。フハハハハハ!」
彼は突然、高らかに笑い出した。
そして、その体から黒い禍々しいオーラが嵐のように噴き出した。
「証拠だと? 良いだろう! もはやそのようなものに意味はない! この国は、この私が力で支配する!」
彼の体が、変貌を始める。
ヴァルザーは、最後の切り札を切ったのだ。
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同時に魔族の将軍ザルガスも、地響きを立てて突進してくる。
絶体絶命の包囲網。
だが、俺たちは怯まなかった。
「フレア!」
俺の叫びに、フレアは雄叫びで応えた。
「おおおおおっ!」
彼女はウォーハンマーを大地に叩きつけた。それは攻撃ではない。彼女が事前に足元に埋めておいた、ドワーフ製の閃光玉を起動させるための合図だった。
カーン!という甲高い音と共に、足元の石畳から太陽のように眩い光が爆発した。
「ぐわっ!?」
「目があああ!」
不意の閃光に、暗闇に慣れていた暗殺者たちの目が眩む。ザルガスの動きも一瞬だけ止まった。
その、ほんの一瞬の隙。
「リリア、走れ!」
俺はリリアの手を掴み、唯一の突破口――ヴァルザーがいる広間の奥――へと駆け出した。
俺たちの目的は脱出。敵の数が少ない方向へ抜けるのが最善の策だった。
「小賢しい!」
ヴァルザーは袖で目を庇いながらも、俺たちに向かって黒い剣を振るった。
闇の斬撃が、唸りを上げて飛んでくる。
だが、その斬撃が俺たちに届く寸前、頭上の天井から都合よく巨大な岩塊が落下してきた。
俺の『幸運』が、またしても発動したのだ。
岩塊は闇の斬撃を受け止めて砕け散り、俺たちの盾となった。
その衝撃で、遺跡全体がさらに激しく揺れる。
俺たちはヴァルザーの横を駆け抜けた。彼の驚愕に歪んだ顔が、スローモーションのように見えた。
「ザルガス! 奴らを追え!」
ヴァルザーが叫ぶ。
だが、ザルガスが体勢を立て直すよりも早く、フレアが彼の前に立ちはだかった。
「へっ! てめえの相手は、このあたしだぜ、トカゲ野郎!」
「どけ! 小娘が!」
「嫌だね!」
フレアとザルガスの壮絶な一騎打ちが始まった。ウォーハンマーと戦斧が激しく打ち合わされ、火花が散る。フレア一人では長くは持たないだろう。だが、彼女は俺とリリアが逃げるための時間を、命懸けで稼いでくれていた。
俺とリリアは、広間の奥にある別の通路へと飛び込んだ。
「フレア様が!」
リリアが心配そうな声を上げる。
「信じろ! あいつは簡単にはやられない!」
俺はリリアを励ましながら、ひたすら走った。
背後からフレアの雄叫びとザルガスの怒声、そして遺跡が崩れ落ちる轟音が追いかけてくる。
俺たちは、バルガスたちが待つ合流地点を目指した。
だが、道は複雑に入り組んでいる。
「こっちですわ!」
リリアが精霊の導きを頼りに、俺を先導する。
俺の幸運も、脱出という目的に向かって最大限に作用していた。
行く手を塞ぐはずだった瓦礫は、なぜか俺たちが通る時だけ崩れ落ちず、俺たちが通り過ぎた直後に道を塞いで追手の足止めをしてくれた。
迷路のような分岐路では、必ず正しい道の方から都合よく風が吹いてきた。
やがて、俺たちは見覚えのある通路へとたどり着いた。バルガスたちと出会った隠し通路だ。
そこには、俺たちを待っていたバルガスとレジスタンスのメンバーたちがいた。
「アッシュ殿! リリア殿! 無事か!」
バルガスが俺たちの姿を見て、安堵の声を上げる。
「証拠は!」
「ここに!」
リリアが懐から『記憶水晶』を取り出して見せた。その水晶は淡い光を放っている。
「よくやった! 実に見事だ!」
その時、背後からフレアが合流した。その体のあちこちに傷を負い、息も絶え絶えだったが、その瞳は勝利の光に輝いていた。
「はあ……はあ……あのトカゲ野郎、しつけえのなんのって! なんとか足止めはしてきたぜ!」
「フレア! 無事だったか!」
「あたりめえよ! この程度であたしが死ぬか!」
彼女は悪態をつきながらも、嬉しそうに笑った。
俺たち三人は、ついに生きて帰還した。
そして、最強の切り札を手に入れた。
「―――全員、聞け!」
バルガスが、集まったレジスタンスたちに向かって高らかに宣言した。
「我々の反撃の時は来た! これより、我々は王城へと向かう! 宰相ヴァルザーの罪を、国王陛下に直接告発し、奴に正義の裁きを下すのだ!」
「「「おおおおおおっ!」」」
レジスタンスたちの雄叫びが、地下通路に響き渡った。
***
翌日の早朝。
王城の玉座の間は、異様な緊張感に包まれていた。
バルガス率いる『王国の盾』のメンバーたちが、武装したまま玉座の間に押し入ったのだ。
騎士団は、かつての尊敬する上官の姿に剣を抜くこともできずに狼狽している。
玉座に座す国王も、この予期せぬ事態にただ震えているだけだった。
そこへ当の本人、宰相ヴァルザーが冷静な顔で現れた。
「……これは何の騒ぎかな、バルガス殿。武装して玉座の間に押し入るとは、反逆罪に問われるとご存知かな?」
その声には余裕さえ感じられた。
彼は俺たちが地下から脱出したことを知っている。だが、証拠を掴まれたとまでは思っていないのだろう。
「黙れ、国賊めが!」
バルガスが怒声で応えた。
「貴様の罪は全て分かっておる! 貴様が魔族と手を組み、勇者パーティを謀殺し、この国を我が物にしようとしていること、その全てをな!」
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これで最悪な責務から解放された!
隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。
そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。
2025/9/29
追記開始しました。毎日更新は難しいですが気長にお待ちください。
勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~
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※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
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