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第一章 エルフの少女
41話 「ドライアドの森の戦い前哨戦」
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とりあえず現場を見て見ようと森の入り口まで来てイリスは呆然とする。
シルヴァーナの結界の外の木々が切り倒されて切り株だけが広がる荒野と化していたのだ。
「戦争の準備とか言って人間達が木を切り倒して持って行ってしまったの・・・」
スッとシルヴァーナが現れて悔しそうにイリスに話し掛けて来た。
人間の主張だとドライアドの森以外の土地は我々の物になったから、そこに生える木をどう使おうともこちら勝手だ。
との事だ。
「何てことを!」ウッドエルフも木の恵みで家を建てたり道具を作ったり当然している、しかしこれは、やり過ぎにも程がある。
「人間はね、備蓄しないと生きていけない生き物なんだよ」
声をする方向を見ると警戒しているのだろうウッドエルフの戦士が弓を持って木の上で座っていた。
「備蓄?」元ウッドエルフのイリスには理解出来ない感覚だ。
その日に必要な分だけ森の恵みを頂く、そうやってウッドエルフは長い時を生きて来たのだ、余計に獲っていく感性は無いのだ。
「俺たちがラーデンブルクに行ってしまったらどうなるか・・・
君にも予想がつくだろう?」
間違いなくこの周辺は荒らされる!そうイリスは思った。
自分達の生活圏からは外れた森ではあるが看過できない事態だ。
徹底抗戦を選択した男達の気持ちを瞬時に理解したイリス。
「イリス?考えてる事は分かるけど先ずは避難する人達を誘導する事が先だよ」
ブリックリンの言葉にハッとするイリス。
確かにここに戦いに来た訳じゃ無い、避難誘導の任務で来たのだ。
「そう・・・だね、とりあえず皆んなを連れてユグドラシルの森に行こう」
産まれて初めて覚えた激しい怒りを抑えて任務に専念する事にしたイリス。
「そうしてくれると俺達も助かる。妻や子供達をよろしくお願いします」
そう言って頭を下げる男性。
「陸路では危険だと思います、何人かづつでも空で運んで頂けないでしょうか?」
シルヴァーナ曰く、ここからユグドラシルの森までの道を急に人間達が占拠しはじめたらしい。
その事に危機感を抱いたこの地域の全集落の者全員が急遽ドライアドのシルヴァーナの庇護を求めてドライアドの森に集まり籠城したのだそうだ。
下手に進むと何をされるか分からずに避難が停滞しているのが現実だ。
斥候によると放棄した集落はすぐに人間達が占拠して残して来た物質は全て略奪されたらしい。
もはや人間達はウッドエルフに対して宣戦布告状態と言っても過言では無い。
話しを聞くたびにどんどん人間の事が嫌いになるイリス。良い悪い関係無く総じて「人間は敵」との認識を持ち始める。
実際に今回の一部の者達が行った一連の蛮行に猛反発している人間も多かったのだがイリスにそれを知る術は無かったのだ。
「分かりました、人間共に大事な仲間を誰一人傷付けさせません」
《イリス・・・》
シルフェリアは今回、明らかに悪いのは人間だがイリスが「人間共」と言った事を悲しく思った。
出来ればイリスには種族に関係無く仲良くして欲しいと願ったシルフェリアの思いは人間達によって打ち砕かれたのだ。
こうして避難民のピストン輸送が開始された。
さすがブリックリン、一度に15人乗せてもビクともしなかった。
「「まだまだいけるけどスペースが無いね」」
「帰ったら大きな籠を持ってくる?」
「「そうだね」」
第一陣のユグドラシルの森への避難が終わったのは15時間後だった。
到着してすぐにクレアに向こうの事を報告すると・・・
「そうか・・・話し合いもせずにいきなり武力制圧とはな・・・
なればこちらも何一つ遠慮する必要は無いのう」
この日中央大陸のエルフは「自衛権」を人間に対して布告して、人間対エルフの戦争が勃発したのだ。
この事態に東側のヴィアール領などエルフと交流があった多数の地方領が即座に反応して、中立を宣言した。
中立とは言うが事実上エルフ寄りに反発したのだ。
この騒動を引き起こした勢力が後のゴルド王国になり、反発した勢力がピアツェンツェア王国になるのだが、そこに至るまで長い戦乱期へ経てからになる。
第二陣、第三陣の避難は何事もなく終わったが事件は第四陣の避難準備の時に起こった。
遠巻きに様子を伺っていた人間の武装集団がドライアドの森へ接近して来たのだ。
「斥候部隊だね、奴ら俺たちがいつまで経っても陸路を使って移動しないから痺れをきらした見たいだね」
エルフの固有スキル「遠視」を使い監視しているエルフの戦士が説明をしてくれた。
「攻撃してくるの?」イリスに緊急が走った。
「いや、後詰が少な過ぎるからまだだよ、避難を急いだ方が良い」
「了解」
大きな籠を使い始めて一回に護送出来る人数が30人に増えた。
避難予定の残り人数は350人、まだまだ掛かる。
「「護送した帰りに周囲を偵察して場合によっては先制攻撃をしよう」」
ブリックリンの提案にイリスは息を飲む。
イリスが実際に戦うのは始めてだからだ。
「「大丈夫、長距離からブレスを撃ち込んで牽制するだけだから」」
それでも緊張が隠せないイリスだった。
第四陣の護送の帰り予定した通りに高高度からドライアドの森周辺を俯瞰的偵察すると森の北30kmに敵勢力2000人程度の駐屯地を発見する。
「「良いかなイリス?見たくなかったら目を瞑っていてね」」
「大丈夫、見ておかないとダメだと思うから」
「「・・・分かったよ、じゃあ行くよ!!」」
「「ヒュウウウウ・・・ガアアアアアアアアアアア!!!!」」
今まで聞いた事が無いブリックリンの咆哮が上がる!!
イリスは優しい地龍が戦う姿を見た事が無い。
本当に戦うの?と思うくらいに地龍は好戦的では無いからだ。
それでは抑止力にならないのでブリックリンは敢えて敵を吹き飛ばす事にする!
咆哮に伴って地脈から魔力がブリックリンに集中するのが分かる。
圧倒的な破壊の波動だ!
「ガアアアア!!!!」ゴオオオオンンンンンン!!!!
ブリックリンから放たれたブレスが敵の駐屯地に直撃する!!
ドゴオオオオオンンン!!!!
着弾点を中心に猛烈な爆発が発生した!
巻き上げた煙が晴れた後には焼け焦げた大地しか残ってなかった。
敵兵2359名全員が即死したのだった・・・
シルヴァーナの結界の外の木々が切り倒されて切り株だけが広がる荒野と化していたのだ。
「戦争の準備とか言って人間達が木を切り倒して持って行ってしまったの・・・」
スッとシルヴァーナが現れて悔しそうにイリスに話し掛けて来た。
人間の主張だとドライアドの森以外の土地は我々の物になったから、そこに生える木をどう使おうともこちら勝手だ。
との事だ。
「何てことを!」ウッドエルフも木の恵みで家を建てたり道具を作ったり当然している、しかしこれは、やり過ぎにも程がある。
「人間はね、備蓄しないと生きていけない生き物なんだよ」
声をする方向を見ると警戒しているのだろうウッドエルフの戦士が弓を持って木の上で座っていた。
「備蓄?」元ウッドエルフのイリスには理解出来ない感覚だ。
その日に必要な分だけ森の恵みを頂く、そうやってウッドエルフは長い時を生きて来たのだ、余計に獲っていく感性は無いのだ。
「俺たちがラーデンブルクに行ってしまったらどうなるか・・・
君にも予想がつくだろう?」
間違いなくこの周辺は荒らされる!そうイリスは思った。
自分達の生活圏からは外れた森ではあるが看過できない事態だ。
徹底抗戦を選択した男達の気持ちを瞬時に理解したイリス。
「イリス?考えてる事は分かるけど先ずは避難する人達を誘導する事が先だよ」
ブリックリンの言葉にハッとするイリス。
確かにここに戦いに来た訳じゃ無い、避難誘導の任務で来たのだ。
「そう・・・だね、とりあえず皆んなを連れてユグドラシルの森に行こう」
産まれて初めて覚えた激しい怒りを抑えて任務に専念する事にしたイリス。
「そうしてくれると俺達も助かる。妻や子供達をよろしくお願いします」
そう言って頭を下げる男性。
「陸路では危険だと思います、何人かづつでも空で運んで頂けないでしょうか?」
シルヴァーナ曰く、ここからユグドラシルの森までの道を急に人間達が占拠しはじめたらしい。
その事に危機感を抱いたこの地域の全集落の者全員が急遽ドライアドのシルヴァーナの庇護を求めてドライアドの森に集まり籠城したのだそうだ。
下手に進むと何をされるか分からずに避難が停滞しているのが現実だ。
斥候によると放棄した集落はすぐに人間達が占拠して残して来た物質は全て略奪されたらしい。
もはや人間達はウッドエルフに対して宣戦布告状態と言っても過言では無い。
話しを聞くたびにどんどん人間の事が嫌いになるイリス。良い悪い関係無く総じて「人間は敵」との認識を持ち始める。
実際に今回の一部の者達が行った一連の蛮行に猛反発している人間も多かったのだがイリスにそれを知る術は無かったのだ。
「分かりました、人間共に大事な仲間を誰一人傷付けさせません」
《イリス・・・》
シルフェリアは今回、明らかに悪いのは人間だがイリスが「人間共」と言った事を悲しく思った。
出来ればイリスには種族に関係無く仲良くして欲しいと願ったシルフェリアの思いは人間達によって打ち砕かれたのだ。
こうして避難民のピストン輸送が開始された。
さすがブリックリン、一度に15人乗せてもビクともしなかった。
「「まだまだいけるけどスペースが無いね」」
「帰ったら大きな籠を持ってくる?」
「「そうだね」」
第一陣のユグドラシルの森への避難が終わったのは15時間後だった。
到着してすぐにクレアに向こうの事を報告すると・・・
「そうか・・・話し合いもせずにいきなり武力制圧とはな・・・
なればこちらも何一つ遠慮する必要は無いのう」
この日中央大陸のエルフは「自衛権」を人間に対して布告して、人間対エルフの戦争が勃発したのだ。
この事態に東側のヴィアール領などエルフと交流があった多数の地方領が即座に反応して、中立を宣言した。
中立とは言うが事実上エルフ寄りに反発したのだ。
この騒動を引き起こした勢力が後のゴルド王国になり、反発した勢力がピアツェンツェア王国になるのだが、そこに至るまで長い戦乱期へ経てからになる。
第二陣、第三陣の避難は何事もなく終わったが事件は第四陣の避難準備の時に起こった。
遠巻きに様子を伺っていた人間の武装集団がドライアドの森へ接近して来たのだ。
「斥候部隊だね、奴ら俺たちがいつまで経っても陸路を使って移動しないから痺れをきらした見たいだね」
エルフの固有スキル「遠視」を使い監視しているエルフの戦士が説明をしてくれた。
「攻撃してくるの?」イリスに緊急が走った。
「いや、後詰が少な過ぎるからまだだよ、避難を急いだ方が良い」
「了解」
大きな籠を使い始めて一回に護送出来る人数が30人に増えた。
避難予定の残り人数は350人、まだまだ掛かる。
「「護送した帰りに周囲を偵察して場合によっては先制攻撃をしよう」」
ブリックリンの提案にイリスは息を飲む。
イリスが実際に戦うのは始めてだからだ。
「「大丈夫、長距離からブレスを撃ち込んで牽制するだけだから」」
それでも緊張が隠せないイリスだった。
第四陣の護送の帰り予定した通りに高高度からドライアドの森周辺を俯瞰的偵察すると森の北30kmに敵勢力2000人程度の駐屯地を発見する。
「「良いかなイリス?見たくなかったら目を瞑っていてね」」
「大丈夫、見ておかないとダメだと思うから」
「「・・・分かったよ、じゃあ行くよ!!」」
「「ヒュウウウウ・・・ガアアアアアアアアアアア!!!!」」
今まで聞いた事が無いブリックリンの咆哮が上がる!!
イリスは優しい地龍が戦う姿を見た事が無い。
本当に戦うの?と思うくらいに地龍は好戦的では無いからだ。
それでは抑止力にならないのでブリックリンは敢えて敵を吹き飛ばす事にする!
咆哮に伴って地脈から魔力がブリックリンに集中するのが分かる。
圧倒的な破壊の波動だ!
「ガアアアア!!!!」ゴオオオオンンンンンン!!!!
ブリックリンから放たれたブレスが敵の駐屯地に直撃する!!
ドゴオオオオオンンン!!!!
着弾点を中心に猛烈な爆発が発生した!
巻き上げた煙が晴れた後には焼け焦げた大地しか残ってなかった。
敵兵2359名全員が即死したのだった・・・
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