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コミカライズ記念 特別番外編【宮ノ入シリーズ①:恋人編】
1 呼び戻されたライバル(1)
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※シリーズ①の追加ストーリーのため、本編と多少の食い違いがあります。
※③の雅冬がで登場しますが、メインヒーローではありません。
「それでもいいよ!」という方向け。
【ご注意ください!!】
※沖重ざまぁ済、シリーズ①『会長への挨拶18話』の前で、会長に挨拶をしていない。
※直真は沖重へ出向している。シリーズ②中。
以上を踏まえ、追加ストーリーに進み、『恋人編』をお楽しみくださいませ。
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「美桜さん、こちらをどうぞ」
朝早くに八木沢さんがやってきたかと思ったら、分厚いファイルをドンッと私の前に置いた。
プレゼントにしては、どうも雰囲気が違1 呼び戻されたライバル(1)う。
ファイルは辞典くらいの厚さがあり、ちょっとした凶器にもなりそうだ。
「あの、これは……?」
「すべて記憶してください。取引先の顔と名前、詳細な情報。瑞生様に逆らう愚か者たちの弱みがここに記されています」
「弱み!?」
「そうです。いざという時に役に立つ情報が記されています」
――いわゆる、門外不出の八木沢ファイル?
ごくりと唾をのみこんだ。
中身が気になり、試しに一ページめくってみる。
まず、一人目。
『妻に内緒で、愛人にマンションを与えている』と書いてある。
それだけなら驚かないけれど、愛人の名前、働いているクラブ、経歴。どこから手に入れたのか、名刺まである。
さらに妻の連絡先が……
夫に逃げ場はない!
――こ、こわい! 弱みっていうレベルじゃないわ。これはもう家庭崩壊、人生終了よ!
八木沢ファイルに震え上がった。
「瑞生様のこと、くれぐれもよろしく頼みますよ」
「は、はい」
八木沢さんは沖重の再建のため、沖重への出向が決まった。
今日から、瑞生さんの秘書ではなく、沖重グループの社長。
不在の間、私に瑞生さんのことを託すしかない八木沢さんは、『瑞生様の敵を凶器で叩き潰せ』と、言わんばかりにファイルを持ってきたという……
「あ、あの……私に八木沢さんの代わりが務まるでしょうか」
普通の社長秘書ならともかく、この分厚いファイルを前に自信を失った……
八木沢さんの冷たい目が、私を突き刺す。
――甘えを許さないぞ……? そういう目ですよね?
憂鬱そうな顔をし、八木沢さんはため息をついた。
瑞生さんのそばを離れるのは、八木沢さんにとって生きがいを奪われるようなもの。
本当は沖重グループの社長より、瑞生さんの社長秘書でいたいという本音が見えた。
「……瑞生様は放っておくと、際限なく働いています。休息をとらせることが一番の目的です」
「は、はい! 休息ですね!」
手帳をバッグから取り出し、八木沢さんの言葉をメモった。
「美桜さんの言うことなら、瑞生様は聞きますからね」
「は、はぁ……」
なお、八木沢ファイルはマンションの部屋のみで閲覧し、持ち出し厳禁と注意書きがされていた。
――書かなくても、こんな危険なファイルを持ち出そうなんて思わないわ……
「なにしているんだ。そろそろ出勤するぞ」
「社長秘書の仕事について、美桜さんにアドバイスしていました」
「直真……。お前、美桜に碌でもないことを吹き込んでいないだろうな?」
瑞生さんは八木沢さんの行動なんてお見通し。
そうなんですよと、目で訴えた。
でも、私の顔を八木沢さんがサッと手で遮った。
それも自然に。
――え、ええっー!?
「まさか。自分が不在の間、社長秘書として、ちょっとした危機にどう対処するか教えていただけです」
「ちょっとした危機!? 今、ちょっとしたって言いました!?」
「どうかなさいましたか?」
「い、いえ……なにも」
『ちょっとした危機に対処する』というレベルの内容ではなかった気がするけど、八木沢さんににらまれて黙った。
八木沢さんはちょっとでも長く瑞生さんといたいのか、エレベーターに一緒に乗ってきた。
心なしか、瑞生さんは迷惑そうだ。
「俺のことより直真。お前には沖重を再建するという重要な仕事があるだろ? 頼んだぞ」
「わかっています。すぐに仕事を片づけ、瑞生様の元へ速やかに戻ってまいります」
八木沢さんは明日にでも戻ってきそうな勢いだった……
エレベーターの扉が開き、マンションのエントランスに出る。
エントランスは豪華絢爛。
高級ホテルのエントランスのようで、大理石にシャンデリア。
宮ノ入一族のマンションは、どこぞの王族のような雰囲気だ。
なお、高級住宅地にも家を持っている方もいて、そちらにはご両親が住んでいるとか。
もちろん、そのご両親も名のある方らしく、宮ノ入一族が財閥と呼ばれるのも納得。
本社に勤務する現役の方々は、出勤が楽で最低限の家事をこなすだけで済むマンションが、便利でいいらしい。
――なんて煌びやかで華やかな光景……
マンション前に、ずらりと黒塗りの車が列をなしている。
この行列にも驚いたけど、それ以上に重役の面々と奥様たちが勢ぞろいし、瑞生さんがくると一斉にこちらへ視線を向ける。
つい先日まで、宮ノ入グループの一社員だった私。
そんな私にとって、これはかなりのプレッシャー。
奥様たちは会社に出勤する夫を見送るまで、他の奥様との会話を楽しんでいたけれど、瑞生
さんが登場すると、声のトーンが落ちた。
そんな奥様達は、朝の見送りだけであっても、全員の身だしなみは完璧。
――身だしなみに手抜きが感じられないわ。
アクセサリーを身につけ、シルクのショールを羽織り、お金持ちマダムな姿。
エントランスには化粧や香水の甘い香りが漂い、デパートの化粧品売り場を思い出した。
きっと化粧品も、すごく上等な化粧品に違いない。
重役の方々や奥様たちは、瑞生さんを見るなり、さっと道を開け、誰もが挨拶をする。
瑞生さんは挨拶を返しているけど、笑みもなく、頭を下げることもない。
まるで王様のよう――いいえ、瑞生さんは王様なんだわ。
――宮ノ入グループの王様。瑞生さんが社長だってわかっていたけど、住む世界が違うってこういうことを言うのね……
沖重家も華やかな暮らしをしていたけど、その比ではない。
高級な空気に気圧されて、その光景を言葉もなく眺めていた。
「美桜さん、どうしました?」
背後から八木沢さんの声がして、ハッと我に返った。
八木沢さんの複雑な事情について、私は瑞生さんから聞いている。
今の私と同じように、宮ノ入へやってきた時、同じようにこの光景を見たはずだ。
――八木沢さんは相当の努力をして、瑞生様のそばにいる。この人の前で弱音なんてはけない。
「いいえ。なにも」
瑞生さんの隣に立つと決めたのだから、圧倒されている場合ではない。
――今まで暮らしを考えたら、これくらいなんでもないことよ!
私のメンタルは鍛えられている。
それこそ、鋼のように。
八木沢さんが微笑み、『前へどうぞ』と手で差し示した。
奥様たちの突き刺さるような視線を感じながら、会釈をして通りすぎた瞬間――
「瑞生さんたら、妻でもない女性を宮ノ入のマンションに住まわせているんですってね」
話しかけてきたのは、ブランド品に身を固め、気の強そうな美人――年齢的には親世代くらいだろうか。
「常務夫人、それがなにか問題でも?」
瑞生さんが足を止め、常務夫人に冷ややかな目を向けた。
空気が凍りついたけれど、彼女の夫である常務は、瑞生さんの父親の弟。
瑞生さんの叔父である。
近しい存在だからか、常務の顔は『若いお前に注意してやっている』という雰囲気だった。
「私も夫も、若い瑞生さんを心配しているの。そもそも、会長はご存じなのかしら? 今まで瑞生さんはいい子で、会長のお気に入りだったのに勝手な真似をして。ねぇ? 皆様?」
常務夫人はわざとらしく、全員に尋ねた――
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
奥様たちは気まずそうに愛想笑いを浮かべた。
常務夫人に逆らえず、かといって瑞生さんに嫌われるのも困るようで、微妙な空気が流れた。
本社では、社長派と常務派の二大派閥がある。
それは、どんな社員であっても知っている話だ。
若い瑞生さんを『経験不足』『どれだけ有能であっても若すぎる』と、否定する人は少なからずいて、会長が社長を退く際、常務を社長にという声があったそうだ。
けれど、会長は瑞生さんを社長にした。
社長の地位を争った両者が不仲なのは知っていたけど……
――社外でもそうなのね。
常務夫人は瑞生さんではなく、隣の私へ視線を向けた。
敵意を含んだ視線に、継母を思い出し、身をこわばらせた。
「あなた、結婚前に男性の部屋に転がり込むなんて、どんなお育ちをしているの? ご両親はなんておっしゃっているのかしら?」
「両親は……私の母は早くに亡くなったので、もういません。父は……」
その先を言えずに口籠った。
父とは音信不通で、絶縁状態。
長年、継母と一緒になって、私を虐げたあの人を『父』と呼べなかった。
――自分の境遇は、目の前にいる人々とまったく違う。だからといって、嘘もつきたくない。
私が父のことを言えずにいると、瑞生さんが横から私の肩を抱き、全員の前ではっきりと告げた。
「美桜の家族は俺だ。もうじき、俺の妻になる」
常務が険しい顔をして言った。
「瑞生、お前の結婚相手は会長が決める。宮ノ入グループのトップであるお前の相手は、しっかり教育を受けた女性が相応しい」
「そうよ、瑞生さん。社長の椅子を捨てるならともかく、会長のお許しがないのに、結婚できるわけないでしょう?」
常務は私のほうをちらりと見た。
「沖重は倒産しかけている。そんな家の娘を妻にしてどうするつもりだ。まあ、こっちはそのほうが好都合だが」
含みのある言い方をし、そして嬉しそうな顔で、常務夫妻は笑った。
――な、なに? 私が妻になったほうが、常務にとって都合がいいの?
奥様たちがひそひそとなにか話しているけど、内容まで聞こえてこない。
――私の存在が瑞生さんの弱みになる。それはわかっていたことだけど、常務夫妻に好都合ってどういうこと?
意味深な常務の態度に嫌な予感がした。
「おしゃべりは終わりましたか?」
八木沢さんが極上の笑みを浮かべ、常務夫妻の前に出た。
常務夫妻は八木沢さんが苦手なのか、わずかに後ずさった。
「常務、おはようございます。これを渡しておきますね」
八木沢さんは上着の内ポケットから、白い紙を一枚取り出し、常務の手に握らせた。
その紙になにが書かれていたのか、中を確認した常務はギョッとし、慌てふためきながら紙をぐしゃぐしゃに丸めた。
「あなた、そのメモはなんですの?」
「し、仕事だっ! 仕事の伝票を受け取っただけだ」
「伝票? まさか女がいる店の……」
「違う、断じて違う!」
メモと言っておけばよかったのに、常務は動揺したあまり、ぽろっと『伝票』と口走ってしまったようだ……
慣れているのか、瑞生さんと八木沢さんは涼しい顔をし、スッと横を通り過ぎる。
常務夫妻がもめている隙に、私たちはマンションから出た。
「常務夫妻は無謀にも、自分の息子を社長にしたいという野望を持っていますからね。弱みの二つや三つ持ち歩いてないと」
「直真、ほどほどにしておけよ。お前が恨まれる」
「瑞生様にご心配をおかけしない程度に、気をつけて行動します」
あくまで瑞生さん基準。
八木沢さんは瑞生さんの忠告が耳に入っていない――というか、聞く気がない。
瑞生さんのことなら、無茶をしてしまう八木沢さんこそ、誰か止めてくれるような人がそばに必要だと思う。
「美桜さん、瑞生様の体調管理だけはしっかりお願いしますよ」
「はっ、はい!」
社長秘書以上の仕事を任されてしまったような気がする。
八木沢さんの期待が重く、肩にずっしり『責任』がのしかかった。
黒塗りの車に乗り込むと、八木沢さんが運転手さんの代わりにドアを閉めた。
瑞生さんと八木沢さんはうなずき合う。
そして、八木沢さんは車から離れた。
窓の外を見ると、八木沢さんが髪をあげ、メガネをかけるのが見えた。
表情が一瞬で冷たいものに変わる。
――瑞生さんといる時と、まったく別人ね……。なにを考えているか、わからないというか、無茶しなければいいけど。
冷たい顔が気になった。
でも、それ以上にひっかかるのは、先ほどの常務夫妻の態度。
私のことが気に入らないのであれば――
『あなたは社長なのよ。もっといい家のお嬢さんを迎えたら?』
『そんな恋人、宮ノ入グループの社長であるお前にふさわしいと思っているのか!』
――って、反対し続けるわけよね? それなのに、私との結婚を歓迎しているみたいだった……?
「美桜? 会社に着いたぞ」
「あっ! は、はい! すみません」
瑞生さんが手を差し伸べ、私を待ってくれていた。
でも――
「瑞生さん、ここから先は社長と秘書ですよ?」
「まだ会社に入ってない」
瑞生さんは優しく微笑んでいた。
会社に入れば、社長と秘書。こうはいかない――だから、素直にその大きな手を取り、車から降りた。
「直真がいろいろ言ったかもしれないが、気にしなくていいからな」
考え事をしていただけだったけれど、私がプレッシャーを感じていると思ったようだ。
「いえ、秘書として配属されたからには、仕事をさせてもらいます。瑞生さんの足手まといになりたくないんです」
「それを言うなら、今朝、マンションで嫌な思いをさせたのは俺のせいだ。常務とは以前から気が合わない。マンションから引っ越したほうがいいか……」
「大丈夫です。私が瑞生さんの妻になるのなら、重役の方々や奥様たちと無関係ではいられませんから」
――そうでしょう?
ちらりと瑞生さんを見上げると、瑞生さんが照れた顔を隠し、嬉しそうに笑っていた。
――瑞生さんの幸せな顔を見続けるためにも、私はもっと強くなりたい。
瑞生さんは宮ノ入グループの孤独な王様。
社長の地位を狙う敵は多い。
八木沢さんも瑞生さんのため、今頃、沖重の再建のため奮闘しているはずだ。
――瑞生さんと一緒にいるために、これから頑張らないと!
私たちより遅れて、常務の車が着いた。
瑞生さんが乗っていた車の前に停めないように配慮し、前が空いていても重役の車は後ろにつく。
それは常務も同じで、社長の椅子が一族内の力関係にも影響しているようだ。
常務は奥様とうまく話の決着がついたのか、それとも逃げてきたのか、見るからにイライラしている。
「常務につかまる前にさっさと中へ入ろう」
「そうですね……」
会社のエントランスホールへ一緒に入り、エレベーターへ向かった。
瑞生さんといると社員の視線が突き刺さり、痛いくらいだ。
でも、これも慣れていかなくてはいけない。
エレベーターのボタンを押し、扉が開く。
「エレベーターの扉が開きましたよ、瑞生さ……ん?」
瑞生さんの顔を見上げると、こちらではなく会社の出入り口のほうに目を向けていた。
――え? なに?
私がそう思うが早いか、大きなざわめきが起きた。
瑞生さんの視線を追う。
その視線の先には、華やかな顔立ちで、そこにいるだけで人の目を引く美男美女がいた。
でも、ざわめきの原因は、その美男美女がモデルのような外見だったからというのが、理由ではない。
彼らは――
「今朝、瑞生に言うつもりだったんが、こちらを無視してさっさと行ってしまうから、言えなかったんだよ」
私たちに追いついた常務が、にやりと笑った。
「お前の従弟の宮ノ入雅冬、私の息子だ。まさか、従弟の存在を忘れていたわけではないだろう?」
雅冬さんは驚く瑞生さんを見て笑った。
その不敵な笑みは、どこか瑞生さんを彷彿させた。
「瑞生、正月の集まり以来か? じいさん……いや、会長を怒らせるなんてお前らしくもないヘマをしたな」
――従弟!?
色素の薄い髪と瞳、快活そうな雰囲気と自信に満ちた空気。
そう言われてみれば、常務夫人にどことなく似ている気がする。
「おじ様、私のことは紹介してくださらないの?」
女性のほうは長い黒髪と大きな黒い目、豊満でスタイルがよく、高いヒールの靴を履いている。
迫力のある美人で、 宮ノ入のマンションに漂っていた香水の香りを思い出した。
「ははは、そうだな。瑞生、綾香さんも会長に呼ばれ、雅冬と一緒に、海外支店から戻ってきたんだぞ。覚えているだろう? 宮ノ入綾香さん、お前の二従妹だ」
「わざわざ言わなくても覚えている」
「知らない人間もいると思ってね」
常務は私をちらりと見た。
――宮ノ入の血を引く二人が、海外から呼び戻されたのは、私が恋人になったから?
雅冬さんと綾香さんは自信たっぷりな表情で、瑞生さんと私を見て笑っていた。
「息子の雅冬を海外支店から、急遽帰国させろと会長から言われてね」
常務は瑞生さんの肩をぽんっと叩いた。
「会長の許しもなく、恋人を作るからだ。息子の雅冬にチャンスをくれて感謝するよ」
瑞生さんと常務はにらみ合う。
社内には不穏な空気が漂い、雅冬さんと綾香さんの帰国は、本社に新たな緊張をもたらした――
※③の雅冬がで登場しますが、メインヒーローではありません。
「それでもいいよ!」という方向け。
【ご注意ください!!】
※沖重ざまぁ済、シリーズ①『会長への挨拶18話』の前で、会長に挨拶をしていない。
※直真は沖重へ出向している。シリーズ②中。
以上を踏まえ、追加ストーリーに進み、『恋人編』をお楽しみくださいませ。
.。.:✽・゚+.。.:✽・゚.。.:✽・゚+.。.:✽・゚.。.:✽・゚+.。.:✽・゚
「美桜さん、こちらをどうぞ」
朝早くに八木沢さんがやってきたかと思ったら、分厚いファイルをドンッと私の前に置いた。
プレゼントにしては、どうも雰囲気が違1 呼び戻されたライバル(1)う。
ファイルは辞典くらいの厚さがあり、ちょっとした凶器にもなりそうだ。
「あの、これは……?」
「すべて記憶してください。取引先の顔と名前、詳細な情報。瑞生様に逆らう愚か者たちの弱みがここに記されています」
「弱み!?」
「そうです。いざという時に役に立つ情報が記されています」
――いわゆる、門外不出の八木沢ファイル?
ごくりと唾をのみこんだ。
中身が気になり、試しに一ページめくってみる。
まず、一人目。
『妻に内緒で、愛人にマンションを与えている』と書いてある。
それだけなら驚かないけれど、愛人の名前、働いているクラブ、経歴。どこから手に入れたのか、名刺まである。
さらに妻の連絡先が……
夫に逃げ場はない!
――こ、こわい! 弱みっていうレベルじゃないわ。これはもう家庭崩壊、人生終了よ!
八木沢ファイルに震え上がった。
「瑞生様のこと、くれぐれもよろしく頼みますよ」
「は、はい」
八木沢さんは沖重の再建のため、沖重への出向が決まった。
今日から、瑞生さんの秘書ではなく、沖重グループの社長。
不在の間、私に瑞生さんのことを託すしかない八木沢さんは、『瑞生様の敵を凶器で叩き潰せ』と、言わんばかりにファイルを持ってきたという……
「あ、あの……私に八木沢さんの代わりが務まるでしょうか」
普通の社長秘書ならともかく、この分厚いファイルを前に自信を失った……
八木沢さんの冷たい目が、私を突き刺す。
――甘えを許さないぞ……? そういう目ですよね?
憂鬱そうな顔をし、八木沢さんはため息をついた。
瑞生さんのそばを離れるのは、八木沢さんにとって生きがいを奪われるようなもの。
本当は沖重グループの社長より、瑞生さんの社長秘書でいたいという本音が見えた。
「……瑞生様は放っておくと、際限なく働いています。休息をとらせることが一番の目的です」
「は、はい! 休息ですね!」
手帳をバッグから取り出し、八木沢さんの言葉をメモった。
「美桜さんの言うことなら、瑞生様は聞きますからね」
「は、はぁ……」
なお、八木沢ファイルはマンションの部屋のみで閲覧し、持ち出し厳禁と注意書きがされていた。
――書かなくても、こんな危険なファイルを持ち出そうなんて思わないわ……
「なにしているんだ。そろそろ出勤するぞ」
「社長秘書の仕事について、美桜さんにアドバイスしていました」
「直真……。お前、美桜に碌でもないことを吹き込んでいないだろうな?」
瑞生さんは八木沢さんの行動なんてお見通し。
そうなんですよと、目で訴えた。
でも、私の顔を八木沢さんがサッと手で遮った。
それも自然に。
――え、ええっー!?
「まさか。自分が不在の間、社長秘書として、ちょっとした危機にどう対処するか教えていただけです」
「ちょっとした危機!? 今、ちょっとしたって言いました!?」
「どうかなさいましたか?」
「い、いえ……なにも」
『ちょっとした危機に対処する』というレベルの内容ではなかった気がするけど、八木沢さんににらまれて黙った。
八木沢さんはちょっとでも長く瑞生さんといたいのか、エレベーターに一緒に乗ってきた。
心なしか、瑞生さんは迷惑そうだ。
「俺のことより直真。お前には沖重を再建するという重要な仕事があるだろ? 頼んだぞ」
「わかっています。すぐに仕事を片づけ、瑞生様の元へ速やかに戻ってまいります」
八木沢さんは明日にでも戻ってきそうな勢いだった……
エレベーターの扉が開き、マンションのエントランスに出る。
エントランスは豪華絢爛。
高級ホテルのエントランスのようで、大理石にシャンデリア。
宮ノ入一族のマンションは、どこぞの王族のような雰囲気だ。
なお、高級住宅地にも家を持っている方もいて、そちらにはご両親が住んでいるとか。
もちろん、そのご両親も名のある方らしく、宮ノ入一族が財閥と呼ばれるのも納得。
本社に勤務する現役の方々は、出勤が楽で最低限の家事をこなすだけで済むマンションが、便利でいいらしい。
――なんて煌びやかで華やかな光景……
マンション前に、ずらりと黒塗りの車が列をなしている。
この行列にも驚いたけど、それ以上に重役の面々と奥様たちが勢ぞろいし、瑞生さんがくると一斉にこちらへ視線を向ける。
つい先日まで、宮ノ入グループの一社員だった私。
そんな私にとって、これはかなりのプレッシャー。
奥様たちは会社に出勤する夫を見送るまで、他の奥様との会話を楽しんでいたけれど、瑞生
さんが登場すると、声のトーンが落ちた。
そんな奥様達は、朝の見送りだけであっても、全員の身だしなみは完璧。
――身だしなみに手抜きが感じられないわ。
アクセサリーを身につけ、シルクのショールを羽織り、お金持ちマダムな姿。
エントランスには化粧や香水の甘い香りが漂い、デパートの化粧品売り場を思い出した。
きっと化粧品も、すごく上等な化粧品に違いない。
重役の方々や奥様たちは、瑞生さんを見るなり、さっと道を開け、誰もが挨拶をする。
瑞生さんは挨拶を返しているけど、笑みもなく、頭を下げることもない。
まるで王様のよう――いいえ、瑞生さんは王様なんだわ。
――宮ノ入グループの王様。瑞生さんが社長だってわかっていたけど、住む世界が違うってこういうことを言うのね……
沖重家も華やかな暮らしをしていたけど、その比ではない。
高級な空気に気圧されて、その光景を言葉もなく眺めていた。
「美桜さん、どうしました?」
背後から八木沢さんの声がして、ハッと我に返った。
八木沢さんの複雑な事情について、私は瑞生さんから聞いている。
今の私と同じように、宮ノ入へやってきた時、同じようにこの光景を見たはずだ。
――八木沢さんは相当の努力をして、瑞生様のそばにいる。この人の前で弱音なんてはけない。
「いいえ。なにも」
瑞生さんの隣に立つと決めたのだから、圧倒されている場合ではない。
――今まで暮らしを考えたら、これくらいなんでもないことよ!
私のメンタルは鍛えられている。
それこそ、鋼のように。
八木沢さんが微笑み、『前へどうぞ』と手で差し示した。
奥様たちの突き刺さるような視線を感じながら、会釈をして通りすぎた瞬間――
「瑞生さんたら、妻でもない女性を宮ノ入のマンションに住まわせているんですってね」
話しかけてきたのは、ブランド品に身を固め、気の強そうな美人――年齢的には親世代くらいだろうか。
「常務夫人、それがなにか問題でも?」
瑞生さんが足を止め、常務夫人に冷ややかな目を向けた。
空気が凍りついたけれど、彼女の夫である常務は、瑞生さんの父親の弟。
瑞生さんの叔父である。
近しい存在だからか、常務の顔は『若いお前に注意してやっている』という雰囲気だった。
「私も夫も、若い瑞生さんを心配しているの。そもそも、会長はご存じなのかしら? 今まで瑞生さんはいい子で、会長のお気に入りだったのに勝手な真似をして。ねぇ? 皆様?」
常務夫人はわざとらしく、全員に尋ねた――
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
奥様たちは気まずそうに愛想笑いを浮かべた。
常務夫人に逆らえず、かといって瑞生さんに嫌われるのも困るようで、微妙な空気が流れた。
本社では、社長派と常務派の二大派閥がある。
それは、どんな社員であっても知っている話だ。
若い瑞生さんを『経験不足』『どれだけ有能であっても若すぎる』と、否定する人は少なからずいて、会長が社長を退く際、常務を社長にという声があったそうだ。
けれど、会長は瑞生さんを社長にした。
社長の地位を争った両者が不仲なのは知っていたけど……
――社外でもそうなのね。
常務夫人は瑞生さんではなく、隣の私へ視線を向けた。
敵意を含んだ視線に、継母を思い出し、身をこわばらせた。
「あなた、結婚前に男性の部屋に転がり込むなんて、どんなお育ちをしているの? ご両親はなんておっしゃっているのかしら?」
「両親は……私の母は早くに亡くなったので、もういません。父は……」
その先を言えずに口籠った。
父とは音信不通で、絶縁状態。
長年、継母と一緒になって、私を虐げたあの人を『父』と呼べなかった。
――自分の境遇は、目の前にいる人々とまったく違う。だからといって、嘘もつきたくない。
私が父のことを言えずにいると、瑞生さんが横から私の肩を抱き、全員の前ではっきりと告げた。
「美桜の家族は俺だ。もうじき、俺の妻になる」
常務が険しい顔をして言った。
「瑞生、お前の結婚相手は会長が決める。宮ノ入グループのトップであるお前の相手は、しっかり教育を受けた女性が相応しい」
「そうよ、瑞生さん。社長の椅子を捨てるならともかく、会長のお許しがないのに、結婚できるわけないでしょう?」
常務は私のほうをちらりと見た。
「沖重は倒産しかけている。そんな家の娘を妻にしてどうするつもりだ。まあ、こっちはそのほうが好都合だが」
含みのある言い方をし、そして嬉しそうな顔で、常務夫妻は笑った。
――な、なに? 私が妻になったほうが、常務にとって都合がいいの?
奥様たちがひそひそとなにか話しているけど、内容まで聞こえてこない。
――私の存在が瑞生さんの弱みになる。それはわかっていたことだけど、常務夫妻に好都合ってどういうこと?
意味深な常務の態度に嫌な予感がした。
「おしゃべりは終わりましたか?」
八木沢さんが極上の笑みを浮かべ、常務夫妻の前に出た。
常務夫妻は八木沢さんが苦手なのか、わずかに後ずさった。
「常務、おはようございます。これを渡しておきますね」
八木沢さんは上着の内ポケットから、白い紙を一枚取り出し、常務の手に握らせた。
その紙になにが書かれていたのか、中を確認した常務はギョッとし、慌てふためきながら紙をぐしゃぐしゃに丸めた。
「あなた、そのメモはなんですの?」
「し、仕事だっ! 仕事の伝票を受け取っただけだ」
「伝票? まさか女がいる店の……」
「違う、断じて違う!」
メモと言っておけばよかったのに、常務は動揺したあまり、ぽろっと『伝票』と口走ってしまったようだ……
慣れているのか、瑞生さんと八木沢さんは涼しい顔をし、スッと横を通り過ぎる。
常務夫妻がもめている隙に、私たちはマンションから出た。
「常務夫妻は無謀にも、自分の息子を社長にしたいという野望を持っていますからね。弱みの二つや三つ持ち歩いてないと」
「直真、ほどほどにしておけよ。お前が恨まれる」
「瑞生様にご心配をおかけしない程度に、気をつけて行動します」
あくまで瑞生さん基準。
八木沢さんは瑞生さんの忠告が耳に入っていない――というか、聞く気がない。
瑞生さんのことなら、無茶をしてしまう八木沢さんこそ、誰か止めてくれるような人がそばに必要だと思う。
「美桜さん、瑞生様の体調管理だけはしっかりお願いしますよ」
「はっ、はい!」
社長秘書以上の仕事を任されてしまったような気がする。
八木沢さんの期待が重く、肩にずっしり『責任』がのしかかった。
黒塗りの車に乗り込むと、八木沢さんが運転手さんの代わりにドアを閉めた。
瑞生さんと八木沢さんはうなずき合う。
そして、八木沢さんは車から離れた。
窓の外を見ると、八木沢さんが髪をあげ、メガネをかけるのが見えた。
表情が一瞬で冷たいものに変わる。
――瑞生さんといる時と、まったく別人ね……。なにを考えているか、わからないというか、無茶しなければいいけど。
冷たい顔が気になった。
でも、それ以上にひっかかるのは、先ほどの常務夫妻の態度。
私のことが気に入らないのであれば――
『あなたは社長なのよ。もっといい家のお嬢さんを迎えたら?』
『そんな恋人、宮ノ入グループの社長であるお前にふさわしいと思っているのか!』
――って、反対し続けるわけよね? それなのに、私との結婚を歓迎しているみたいだった……?
「美桜? 会社に着いたぞ」
「あっ! は、はい! すみません」
瑞生さんが手を差し伸べ、私を待ってくれていた。
でも――
「瑞生さん、ここから先は社長と秘書ですよ?」
「まだ会社に入ってない」
瑞生さんは優しく微笑んでいた。
会社に入れば、社長と秘書。こうはいかない――だから、素直にその大きな手を取り、車から降りた。
「直真がいろいろ言ったかもしれないが、気にしなくていいからな」
考え事をしていただけだったけれど、私がプレッシャーを感じていると思ったようだ。
「いえ、秘書として配属されたからには、仕事をさせてもらいます。瑞生さんの足手まといになりたくないんです」
「それを言うなら、今朝、マンションで嫌な思いをさせたのは俺のせいだ。常務とは以前から気が合わない。マンションから引っ越したほうがいいか……」
「大丈夫です。私が瑞生さんの妻になるのなら、重役の方々や奥様たちと無関係ではいられませんから」
――そうでしょう?
ちらりと瑞生さんを見上げると、瑞生さんが照れた顔を隠し、嬉しそうに笑っていた。
――瑞生さんの幸せな顔を見続けるためにも、私はもっと強くなりたい。
瑞生さんは宮ノ入グループの孤独な王様。
社長の地位を狙う敵は多い。
八木沢さんも瑞生さんのため、今頃、沖重の再建のため奮闘しているはずだ。
――瑞生さんと一緒にいるために、これから頑張らないと!
私たちより遅れて、常務の車が着いた。
瑞生さんが乗っていた車の前に停めないように配慮し、前が空いていても重役の車は後ろにつく。
それは常務も同じで、社長の椅子が一族内の力関係にも影響しているようだ。
常務は奥様とうまく話の決着がついたのか、それとも逃げてきたのか、見るからにイライラしている。
「常務につかまる前にさっさと中へ入ろう」
「そうですね……」
会社のエントランスホールへ一緒に入り、エレベーターへ向かった。
瑞生さんといると社員の視線が突き刺さり、痛いくらいだ。
でも、これも慣れていかなくてはいけない。
エレベーターのボタンを押し、扉が開く。
「エレベーターの扉が開きましたよ、瑞生さ……ん?」
瑞生さんの顔を見上げると、こちらではなく会社の出入り口のほうに目を向けていた。
――え? なに?
私がそう思うが早いか、大きなざわめきが起きた。
瑞生さんの視線を追う。
その視線の先には、華やかな顔立ちで、そこにいるだけで人の目を引く美男美女がいた。
でも、ざわめきの原因は、その美男美女がモデルのような外見だったからというのが、理由ではない。
彼らは――
「今朝、瑞生に言うつもりだったんが、こちらを無視してさっさと行ってしまうから、言えなかったんだよ」
私たちに追いついた常務が、にやりと笑った。
「お前の従弟の宮ノ入雅冬、私の息子だ。まさか、従弟の存在を忘れていたわけではないだろう?」
雅冬さんは驚く瑞生さんを見て笑った。
その不敵な笑みは、どこか瑞生さんを彷彿させた。
「瑞生、正月の集まり以来か? じいさん……いや、会長を怒らせるなんてお前らしくもないヘマをしたな」
――従弟!?
色素の薄い髪と瞳、快活そうな雰囲気と自信に満ちた空気。
そう言われてみれば、常務夫人にどことなく似ている気がする。
「おじ様、私のことは紹介してくださらないの?」
女性のほうは長い黒髪と大きな黒い目、豊満でスタイルがよく、高いヒールの靴を履いている。
迫力のある美人で、 宮ノ入のマンションに漂っていた香水の香りを思い出した。
「ははは、そうだな。瑞生、綾香さんも会長に呼ばれ、雅冬と一緒に、海外支店から戻ってきたんだぞ。覚えているだろう? 宮ノ入綾香さん、お前の二従妹だ」
「わざわざ言わなくても覚えている」
「知らない人間もいると思ってね」
常務は私をちらりと見た。
――宮ノ入の血を引く二人が、海外から呼び戻されたのは、私が恋人になったから?
雅冬さんと綾香さんは自信たっぷりな表情で、瑞生さんと私を見て笑っていた。
「息子の雅冬を海外支店から、急遽帰国させろと会長から言われてね」
常務は瑞生さんの肩をぽんっと叩いた。
「会長の許しもなく、恋人を作るからだ。息子の雅冬にチャンスをくれて感謝するよ」
瑞生さんと常務はにらみ合う。
社内には不穏な空気が漂い、雅冬さんと綾香さんの帰国は、本社に新たな緊張をもたらした――
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