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第二章
2 昔の女
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今日の授業はまったく頭に入らなかった。
朝の女性は宮ノ入綾香さんというらしい。
会長の弟の孫で、つまりカナダに移住された貴子様のお孫さん。
海外支店で雅冬さんと一緒に働いていた―――そこまでは聞いた。
でも、親戚だからって、抱き合うなんてありえないわよね。
夕食の茶碗蒸し用の卵をぐるぐるとかき混ぜながら、悶々としていた。
「美人だったな…。しかも、スーツすごい似合ってた」
茶碗蒸しを蒸し器にいれた。
「ただいま」
ふらふらと雅冬さんが帰ってきた。
「おかえりなさい」
疲れているみたいだった。
「どうしました?」
「いや、ちょっと疲れただけだ」
綾香さん絡みだと言うことは察しがついた。
「……そうですか」
ピンポーンと玄関のチャイムが鳴り響いた。
げんなりした顔で雅冬さんがドアを開けた。
「ちょっと!どうして置いていくのよ!雅冬ったら、部屋に入れてって言ったのに入れてくれないんだから」
「当り前だ!」
玄関で押しとどめようとしていたけれど、声が大きかったので迷惑になりそうだった。
「あの……あがってもらったほうがいいですよ。廊下に声が響いていますから」
「ほらー、いいって言ってるじゃないの」
雅冬さんは渋々、チェーンを外すと、綾香さんは嬉しそうに部屋に入ってきた。
「へぇ。日本の雅冬の部屋はこんな感じなのね」
きょろきょろと綾香さんは楽し気に部屋の中を見回した。
そして、最後に私の方を見た。
「海外赴任してきたおじ様と聖子おばさまから聞いたけど。本当に取り柄もなさそうだし。普通ねえ。雅冬。女の趣味変わったんじゃないの?」
「え?」
「雅冬の好きなタイプはきつめの美人なのよ。それに胸も小さいし」
「綾香!菜々子におかしなことを吹き込むな!もういいだろ!帰れ!」
本気で雅冬さんが怒鳴っても綾香さんは動じていなかった。
「せっかく、恋人が海外から追いかけてきてあげたっていうのに冷たいわね」
「恋人!?」
「あら。雅冬から何も聞いてないの?」
「綾香!」
「私、雅冬と付き合っていたの。ねえ?雅冬?」
「ちゃんと別れただろ!?誤解を招く言い方はやめろ!」
「私はそんなつもりないわよ?一方的に別れを切り出して、さっさと日本に帰っちゃって」
綾香さんは怒鳴られ、イライラしてきたのか、私の方を見て言った。
「私は奥さんがいても気にしないわよ。雅冬と結婚してもいいのよって聖子おばさまから言われてるから」
「あのクソババア」
「今日はこの辺にしといてあげるわね?奥様?」
「待て、綾香」
機嫌のいい顔をして帰りかけたところを雅冬さんが止めた。
そして、私の腕を掴み、抱き寄せ、強引に唇を重ねた。
「まっ、待ってっ―――ふっ……あっ…」
深く貪るような口づけに脚が震えた。
長い口づけの後、唇を離して言った。
「言っておくけどな。菜々子を傷つけるようなことを言うなら、本気で潰すから覚悟しておけよ」
青ざめた顔で綾香さんは何も言えず、部屋から出て行った。
「な…な…なんてことするんですか」
「お前がっ…傷ついた顔するから悪いんだろ!俺の事信用してないから……」
「あんな綺麗な人と付き合っていたなんて、驚いただけです」
「そうか?」
「そうですよ」
はあ、とため息を吐きながら、茶碗蒸しを蒸し器から取り出した。
確かにこの顔である。
彼女の一人や二人、いや十人くらい過去にいてもおかしくない。
「どういう別れ方したんですか?」
「普通だぞ?一緒にいると疲れるから別れたいって言って別れて、あいつもわかったって言ったんだぞ?連絡もとってなかったしな。なんで今頃……」
海外赴任についていった聖子さんが焚きつけたんだろうけど……。
離れていても、何かしないと気が済まない人なんだから。
本日、何度目かのため息を吐いたのだった。
朝の女性は宮ノ入綾香さんというらしい。
会長の弟の孫で、つまりカナダに移住された貴子様のお孫さん。
海外支店で雅冬さんと一緒に働いていた―――そこまでは聞いた。
でも、親戚だからって、抱き合うなんてありえないわよね。
夕食の茶碗蒸し用の卵をぐるぐるとかき混ぜながら、悶々としていた。
「美人だったな…。しかも、スーツすごい似合ってた」
茶碗蒸しを蒸し器にいれた。
「ただいま」
ふらふらと雅冬さんが帰ってきた。
「おかえりなさい」
疲れているみたいだった。
「どうしました?」
「いや、ちょっと疲れただけだ」
綾香さん絡みだと言うことは察しがついた。
「……そうですか」
ピンポーンと玄関のチャイムが鳴り響いた。
げんなりした顔で雅冬さんがドアを開けた。
「ちょっと!どうして置いていくのよ!雅冬ったら、部屋に入れてって言ったのに入れてくれないんだから」
「当り前だ!」
玄関で押しとどめようとしていたけれど、声が大きかったので迷惑になりそうだった。
「あの……あがってもらったほうがいいですよ。廊下に声が響いていますから」
「ほらー、いいって言ってるじゃないの」
雅冬さんは渋々、チェーンを外すと、綾香さんは嬉しそうに部屋に入ってきた。
「へぇ。日本の雅冬の部屋はこんな感じなのね」
きょろきょろと綾香さんは楽し気に部屋の中を見回した。
そして、最後に私の方を見た。
「海外赴任してきたおじ様と聖子おばさまから聞いたけど。本当に取り柄もなさそうだし。普通ねえ。雅冬。女の趣味変わったんじゃないの?」
「え?」
「雅冬の好きなタイプはきつめの美人なのよ。それに胸も小さいし」
「綾香!菜々子におかしなことを吹き込むな!もういいだろ!帰れ!」
本気で雅冬さんが怒鳴っても綾香さんは動じていなかった。
「せっかく、恋人が海外から追いかけてきてあげたっていうのに冷たいわね」
「恋人!?」
「あら。雅冬から何も聞いてないの?」
「綾香!」
「私、雅冬と付き合っていたの。ねえ?雅冬?」
「ちゃんと別れただろ!?誤解を招く言い方はやめろ!」
「私はそんなつもりないわよ?一方的に別れを切り出して、さっさと日本に帰っちゃって」
綾香さんは怒鳴られ、イライラしてきたのか、私の方を見て言った。
「私は奥さんがいても気にしないわよ。雅冬と結婚してもいいのよって聖子おばさまから言われてるから」
「あのクソババア」
「今日はこの辺にしといてあげるわね?奥様?」
「待て、綾香」
機嫌のいい顔をして帰りかけたところを雅冬さんが止めた。
そして、私の腕を掴み、抱き寄せ、強引に唇を重ねた。
「まっ、待ってっ―――ふっ……あっ…」
深く貪るような口づけに脚が震えた。
長い口づけの後、唇を離して言った。
「言っておくけどな。菜々子を傷つけるようなことを言うなら、本気で潰すから覚悟しておけよ」
青ざめた顔で綾香さんは何も言えず、部屋から出て行った。
「な…な…なんてことするんですか」
「お前がっ…傷ついた顔するから悪いんだろ!俺の事信用してないから……」
「あんな綺麗な人と付き合っていたなんて、驚いただけです」
「そうか?」
「そうですよ」
はあ、とため息を吐きながら、茶碗蒸しを蒸し器から取り出した。
確かにこの顔である。
彼女の一人や二人、いや十人くらい過去にいてもおかしくない。
「どういう別れ方したんですか?」
「普通だぞ?一緒にいると疲れるから別れたいって言って別れて、あいつもわかったって言ったんだぞ?連絡もとってなかったしな。なんで今頃……」
海外赴任についていった聖子さんが焚きつけたんだろうけど……。
離れていても、何かしないと気が済まない人なんだから。
本日、何度目かのため息を吐いたのだった。
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