33 / 56
本編
33 人質
しおりを挟む
おじいちゃんと玄関に向かうと―――
「嶋倉!約束が違うだろうが!」
「若い衆をやりやがって!」
怒号と罵声が飛びかう中、玄関には殴り倒されたと思われる人達が転がっていた。
そして、冬悟さんの両側にはいつもより引き締まった顔をした竜江さんと黒いサングラスをかけ、熊みたいな威圧感がある仙崎さんが立っていた。
「冬悟。こんなことをしてタダですむと思うなよ」
玄馬さんが冬悟さんを睨み付けた。
その視線の先には礼華さんがいて荒縄で体をぐるぐる巻きにされ、口にはガムテープが貼ってある。
お世辞にも丁寧な扱いを受けたとは思えず、今も地べたに転がされて、仙崎さんの部下らしい人達が押さえつけている。
それでも生きのいい魚のようにビッタンバッタンと暴れていた。
す、すごいなぁ……
「こっちは妻を取り返しにきただけだが?」
「それにしてはうちの孫の扱いが雑だな」
おじいちゃんが前にでると玄馬さんはハッとしたように身を引いた。
もしかして、おじいちゃん、すごく怖い人……?
けれど冬悟さんの方は平然としている。
「妻に危害を加えた。こっちは手加減してやったほうだ」
「ふん。まだ優しい方か」
「そうだ」
メガネのない冬悟さんは鋭い目をしておじいちゃんとにらみあった。
確かに迫力がある。
でも―――
「冬悟さん。私は無事ですから!」
「羽花」
ホッとしたのか、冬悟さんの険しい表情がすこしだけ優しいものになった。
私が無傷かどうか、確認するように頭から爪先までさっと視線を走らせる。
「足が泥だらけだが?手首と腕に縄のあとがある」
めざとい……
でも、礼華さんよりはかなりマシだと思うけど。
礼華さんは疲れたらしく、ぐったりとして動かない。
それを心配してか、おじいちゃんは言った。
「玄馬。人質を交換しろ」
「じいさっ……いや、組長」
「馬鹿でも可愛い孫娘だ。これで少しはこりただろうからな。手当てしてやれ」
鶴の一声とはこのことで、矢郷組の人達はおじいちゃんの言葉に従った。
礼華さんは荷物のように担がれて矢郷組の人達に運ばれていったけれど、おじいちゃんが礼華さんに一言だけ言った。
「素人相手に勝手な真似をしたお前にはきついお灸をすえてやるからな」
青い顔をした礼華さんはおじいちゃんに一睨みされ、なにか言い訳しかけてやめた。
「ほら、戻れ」
「おじいちゃん。ありがとうございます」
孫があんな目にあって腹が立たないわけがない。
けど、おじいちゃんは自分の感情を一切みせなかった。
どっしりと構えて玄馬さんをにらんだ。
「嶋倉との約束はお互いに不干渉になることだ。玄馬。約束を違えるな。自分の都合のいいように解釈するのも許さん」
ぐっと言葉に玄馬さんは詰まり、無言で頭を下げた。
おじいちゃんは絶対らしい。
「冬悟さん!」
「羽花!」
思わず、冬悟さんに抱きついた。
やっぱり助けにきてくれた。
「竜江さんと仙崎さんもありがとうございます」
「いやー、無事でよかった。顔にかすり傷ひとつでもついてたら、全面戦争になってましたよ」
「危ないところでした」
―――え?ひとつでも?
一瞬、固まってしまった。
「無事でよかった。羽花……」
聞き返したかったけど、感動の抱擁に水を差すようで
きくにきけず、そのまま抱き締められていた。
「これですんだと思うなよ」
玄馬さんが悔しそうに言ったのをおじいちゃんがじろりと睨み付けた。
「玄馬。今後は一度でも嶋倉の嫁に手を出すな」
「組長……俺は……」
「横恋慕なんぞ、女々しい真似をするな!矢郷の名前に泥を塗るつもりか。これ以上、恥をかかせるのなら、孫といえども破門するぞ!」
おじいちゃんの一喝にしんっと静まり返った。
青い顔をした玄馬さんを見て、破門というのはそれくらい重いことなのだとわかった。
仙崎さんがすっと前に出た。
「片付いたようですので、これで失礼させていただきます」
「矢郷組長。もう会うことはないと思うが、長生きしてくれ」
「クソガキが。生意気な奴だ。お前はこっちの人間だろうが」
おじいちゃんの言葉に冬悟さんは笑った。
「そうかもな」
ひょいっと私の体を抱える。
「と、と、冬悟さんっ!重いですからっ!」
「足が汚れる」
靴がない私をお姫様だっこしてくれたけど、恥ずかしすぎる。
「冬悟。いい嫁だな。ぼた餅、うまかったぞ。マンションのセキュリティはザルだ。しっかりしておけ」
「次はおはぎを作りますね」
わぁ、褒められたと思って返事をすると呆れた顔で冬悟さんは私を見た。
「羽花。二度とあのジジイを俺の部屋にいれるな」
「え?でも、合鍵を持っていたじゃないですか」
「偽造だ」
ぎ、偽造!?
驚いておじいちゃんを見るとにやりと笑っていた、
やっぱり、普通の人じゃない。
「今回はお互い痛み分けだったな」
んん!?
痛み分け?
冬悟さんが玄関を出る。
広い庭が現れた。
「マンション襲撃の時に嶋倉の人間が大分やられちゃったからねー」
「嶋倉から矢郷組への仕返しはこれですみましたね」
庭に転がる矢郷組の人達が目にはいる。
それは死屍累々といった様子で『これって倍返しじゃないですか?』と思わずにはいられなかった……
「嶋倉!約束が違うだろうが!」
「若い衆をやりやがって!」
怒号と罵声が飛びかう中、玄関には殴り倒されたと思われる人達が転がっていた。
そして、冬悟さんの両側にはいつもより引き締まった顔をした竜江さんと黒いサングラスをかけ、熊みたいな威圧感がある仙崎さんが立っていた。
「冬悟。こんなことをしてタダですむと思うなよ」
玄馬さんが冬悟さんを睨み付けた。
その視線の先には礼華さんがいて荒縄で体をぐるぐる巻きにされ、口にはガムテープが貼ってある。
お世辞にも丁寧な扱いを受けたとは思えず、今も地べたに転がされて、仙崎さんの部下らしい人達が押さえつけている。
それでも生きのいい魚のようにビッタンバッタンと暴れていた。
す、すごいなぁ……
「こっちは妻を取り返しにきただけだが?」
「それにしてはうちの孫の扱いが雑だな」
おじいちゃんが前にでると玄馬さんはハッとしたように身を引いた。
もしかして、おじいちゃん、すごく怖い人……?
けれど冬悟さんの方は平然としている。
「妻に危害を加えた。こっちは手加減してやったほうだ」
「ふん。まだ優しい方か」
「そうだ」
メガネのない冬悟さんは鋭い目をしておじいちゃんとにらみあった。
確かに迫力がある。
でも―――
「冬悟さん。私は無事ですから!」
「羽花」
ホッとしたのか、冬悟さんの険しい表情がすこしだけ優しいものになった。
私が無傷かどうか、確認するように頭から爪先までさっと視線を走らせる。
「足が泥だらけだが?手首と腕に縄のあとがある」
めざとい……
でも、礼華さんよりはかなりマシだと思うけど。
礼華さんは疲れたらしく、ぐったりとして動かない。
それを心配してか、おじいちゃんは言った。
「玄馬。人質を交換しろ」
「じいさっ……いや、組長」
「馬鹿でも可愛い孫娘だ。これで少しはこりただろうからな。手当てしてやれ」
鶴の一声とはこのことで、矢郷組の人達はおじいちゃんの言葉に従った。
礼華さんは荷物のように担がれて矢郷組の人達に運ばれていったけれど、おじいちゃんが礼華さんに一言だけ言った。
「素人相手に勝手な真似をしたお前にはきついお灸をすえてやるからな」
青い顔をした礼華さんはおじいちゃんに一睨みされ、なにか言い訳しかけてやめた。
「ほら、戻れ」
「おじいちゃん。ありがとうございます」
孫があんな目にあって腹が立たないわけがない。
けど、おじいちゃんは自分の感情を一切みせなかった。
どっしりと構えて玄馬さんをにらんだ。
「嶋倉との約束はお互いに不干渉になることだ。玄馬。約束を違えるな。自分の都合のいいように解釈するのも許さん」
ぐっと言葉に玄馬さんは詰まり、無言で頭を下げた。
おじいちゃんは絶対らしい。
「冬悟さん!」
「羽花!」
思わず、冬悟さんに抱きついた。
やっぱり助けにきてくれた。
「竜江さんと仙崎さんもありがとうございます」
「いやー、無事でよかった。顔にかすり傷ひとつでもついてたら、全面戦争になってましたよ」
「危ないところでした」
―――え?ひとつでも?
一瞬、固まってしまった。
「無事でよかった。羽花……」
聞き返したかったけど、感動の抱擁に水を差すようで
きくにきけず、そのまま抱き締められていた。
「これですんだと思うなよ」
玄馬さんが悔しそうに言ったのをおじいちゃんがじろりと睨み付けた。
「玄馬。今後は一度でも嶋倉の嫁に手を出すな」
「組長……俺は……」
「横恋慕なんぞ、女々しい真似をするな!矢郷の名前に泥を塗るつもりか。これ以上、恥をかかせるのなら、孫といえども破門するぞ!」
おじいちゃんの一喝にしんっと静まり返った。
青い顔をした玄馬さんを見て、破門というのはそれくらい重いことなのだとわかった。
仙崎さんがすっと前に出た。
「片付いたようですので、これで失礼させていただきます」
「矢郷組長。もう会うことはないと思うが、長生きしてくれ」
「クソガキが。生意気な奴だ。お前はこっちの人間だろうが」
おじいちゃんの言葉に冬悟さんは笑った。
「そうかもな」
ひょいっと私の体を抱える。
「と、と、冬悟さんっ!重いですからっ!」
「足が汚れる」
靴がない私をお姫様だっこしてくれたけど、恥ずかしすぎる。
「冬悟。いい嫁だな。ぼた餅、うまかったぞ。マンションのセキュリティはザルだ。しっかりしておけ」
「次はおはぎを作りますね」
わぁ、褒められたと思って返事をすると呆れた顔で冬悟さんは私を見た。
「羽花。二度とあのジジイを俺の部屋にいれるな」
「え?でも、合鍵を持っていたじゃないですか」
「偽造だ」
ぎ、偽造!?
驚いておじいちゃんを見るとにやりと笑っていた、
やっぱり、普通の人じゃない。
「今回はお互い痛み分けだったな」
んん!?
痛み分け?
冬悟さんが玄関を出る。
広い庭が現れた。
「マンション襲撃の時に嶋倉の人間が大分やられちゃったからねー」
「嶋倉から矢郷組への仕返しはこれですみましたね」
庭に転がる矢郷組の人達が目にはいる。
それは死屍累々といった様子で『これって倍返しじゃないですか?』と思わずにはいられなかった……
3
あなたにおすすめの小説
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない
絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。
ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~
cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。
同棲はかれこれもう7年目。
お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。
合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。
焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。
何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。
美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。
私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな?
そしてわたしの30歳の誕生日。
「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」
「なに言ってるの?」
優しかったはずの隼人が豹変。
「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」
彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。
「絶対に逃がさないよ?」
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ヤクザの組長は随分と暇らしい
海野 月
恋愛
キャバクラでバイトするリカ
店に来たヤクザの組長である中井律希のテーブルにつかされた
目当ての女の接客じゃないことに面倒くさそうな態度だったこの男。それがどうして――
「リカちゃん。俺の女になって」
初めての彼氏がヤクザなんて絶対にごめんだ!
汚い手も使いながらあの手この手で迫ってくる中井を躱し、平和な日常を取り戻そうとあがくストーリー
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる