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三章

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 「アデルバート……さ、ま」
 燃えるような目をしたアデルバート様が、部屋の中に入ってきた。

 ピリピリとアデルバート様から怒気が伝わる。

「抱いてない。ヒュームに何か言われたらしく、テオが落ち込んでいた様子だったから慰めていただけだ」
バージル様は私を脚の上に乗せたまま、アデルバート様に話しかけた。
さらにアデルバート様から、ピリリと怒りが伝わってきた。

 「ヒュームは時々テオにキツく当たりすぎる。お前が注意しなければいけないだろう?」
「なんだと?」
バージル様は不機嫌そうにアデルバート様に言った。私はバージル様の脚の上に座って腰を抱かれているので、アデルバート様の顔が見えない。
 ……怖くて見れない。

 「あ、あの! そ、そろそろテオドール様のお休みの時間です、が……」
ラント君が怯えながら二人の間に入って、不穏な空気を変えようとした。
「あ"あ"?」
アデルバート様は低い声でラント君に威嚇し、ズイと近づき上から見下ろし睨んだ。ラント君は震えている。

 いけない。私がとめなければ。
私の腰を掴んでいるバージル様の手をそっと離して脚の上から降りて、アデルバート様の側に寄った。

 「申し訳ございません。私が未熟者で、皆様やヒューム様にご迷惑おかけしてます。己の勉強不足なのは分かっております。ですが、落ち込んでいた私をバージル様は慰めてくれたのです」
アデルバート様は背が高く、私は見上げて理由を話した。

 「私が悪いのです。どうか、私を罰して下さい」
お二人が気まずくなるのは避けたい。私は震えてくる自分の手を握り、アデルバート様の目をジッと見て伝えた。

 強く、深くまで暴かれるようなアデルバート様の視線。嘘や良くないことを考えている者ならば、見透かされるだろう。
だが、私にはもう何も隠すものはない。幼い頃からの秘密は知られ体の隅まで見られて、体全部アデルバート様とバージル様に捧げた。
真っ直ぐにアデルバート様をみつめる。

 燃えるような強い視線が私の全身を観察するかのように動いて、また私と目を合わせる。
「うっ! ……っ」 

 側にラント。部屋のベッドに座っているバージル様の前で、アデルバート様は私を引き寄せ後頭部を掴んで乱暴なキスをした。
 「は……! あ、ぅん……。あ。ぁん」
チュ、クチュリ……と室内に濃厚なキスの音が響く。片方の手は後頭部を掴み、もう片方の手が私のお尻を強く掴んで動かしている。

 「あ……、っあ!」
ゴリッと、固くなったアデルバート様の剛直が私のモノに押し付けられた。
「ぁん!」
気持ち良さに声を出してしまった。アデルバート様は両肩を掴んでグイと体を離した。

 ハッと気がついて、ラント君を見ると真っ赤な顔をして側にいた。……恥ずかしい。

 「罰は、二人きりの時に与えよう」
そう言い、アデルバート様はチラとバージル様に視線を向けてから部屋から出て行った。私はアデルバート様が離れてしまって、熱を持った体が寒く感じた。

 「テオドール、すまなかった」
振り向くと、豪華な私のベッドから立ち上がってバージル様がこちらへ歩いてきた。
「い、いえ。バージル様、謝らないで下さい」
私が未熟なのだから。 

 「今日はとりあえず、部屋に戻る。ラント、来い」
「は、はい」
バージル様は赤くなっていたラント君を、肩を抱いて部屋から下がって行った。

 「……」
パタンと閉められた扉をしばらく見て、ふぅ……と息を吐いてベッドの端に座った。
お二人が気まずくなるのは避けたかった。あの謝罪で大丈夫だっただろうか……。

 そのあとのアデルバート様のキス。ラント君に見られて恥ずかしかった。ラント君、真っ赤になっていたな。

 「はぁ……」
押し付けられたアデルバート様の剛直……。固くなっていて、私のモノにグリと……。私のモノが反応してしまった。
 今日はゆっくり休む日。なのに。
アデルバート様はそういう所はいじわるだ。分かっていてやっている。

 シュル……、とズボンの紐を緩めて前をくつろげる。立ち上がってしまった己のモノに指を添える。
「あ……」
軽く上下するだけで、ゾクゾクと足先まで震えてくる。タラリと先走りが溢れてきて、人差し指で液を先端に塗りつけるとベッドの端に座っていられず、ポスンと横に倒れる。

 粘着質の水音が自分の耳にも聞こえて興奮してくる。
「あ……っ、あぁ」
声を出してしまうのでベッドの中に入って、枕で口を塞ぐ。どの寝具も高級品で肌触りが良く、それが気持ちよさを助長する。

 ハァハァと息が荒くなり、興奮が高まっているのが分かる。でも……。
「足りない」
頭では否定したいけれど、体は従わない。アデルバート様とバージル様に嫌というほど、体に教え込まれてしまった。 
 ポロッと涙が流れたのが見えた。――この涙は何の涙だろう?

 ズボンと下履きを膝裏まで下げて、自分ので濡れた指を後孔まで持っていく。
「う……」
閉じられた後孔に中指の先で触ってみた。

 指は濡れているがなかなか中に入らない。
「くっ……、は……っ。はいら、ない」
いつもは後孔を十分に解してもらってから、アデルバート様やバージル様の剛直が入ってきた。自分の後孔を解すなんてやったことがないので、焦るばかりで入らない。
「なんで……だ?」

 何で私は今一人でこんなことをしている?
快楽を教え込まれた私の体は、アデルバート様とバージル様しか受け付けられなくなってしまったらしい。 
もともとそんなに、性欲は強くなかった筈なのに一人では解消さえ出来なくなった。 

 「うぅ……。私は」
私の体は、こんなに淫らになってしまった。一人ではこの欲を鎮められない。
酷い。アデルバート様。

 私は眠れぬ夜を過ごした。


 ――――――――――――――――

 そうしてランバルト国へ向かう日になった。

「ラント! テオドールの準備は出来ているか?」
アデルバート様の響く声が扉の向こうから聞こえる。

 「はいっ! もう準備出来ております!」
ラント君は私の手を引き、椅子から立たせてくれた。
「テオドール様。本当に大丈夫ですか? どこか具合が悪いのでは?」
心配そうに私の顔を覗き込んだ。
「……大丈夫」
返事をして無理矢理微笑んだ。

 私は熱い体を持て余して、二日間眠れなかった。
うまく欲を鎮められないまま眠れず、朝になって鏡を見たらひどい顔をしていた。部屋にやってきたラント君は驚き、私の目の下のクマや身なりを頑張って整えてくれた。

 これからランバルト国へに行くのに心配をかけてはいけない。だけど……。
「アデルバート様がお待ちです! 行きましょう」
手を引かれて部屋を歩く。私の為に用意してくれた豪華な私室を、チラと振り返ってから扉から部屋を出た。

 ラント君に手を預けて、城の裏手らしき場所に案内されると長い赤絨毯の両脇には騎士様達と臣下の人達が両脇に並んで立っていた。
呆然としているとラント君が説明をしてくれた。
「ランバルト国との結婚の報告、および同盟の絆を結ぶ為の出立式です」

 「テオドール様!」
「おめでとうございます!」
「テオドール様ー!!」「美しい!」「綺麗だ……」
「行ってらっしゃいませー!!」
「おめでとう御座いますー!!」
「行ってらっしゃいませ!」

 両脇のお城の人々に拍手と祝福を受けて、赤絨毯の上をラント君と真っ直ぐ進んで行く。
その先には、大きな竜がいた。
「竜……!」
初めて見た竜はしゃがんでいても大きく、大人の男性の二倍くらいの高さの背だった。

 「テオドール、待っていたぞ」
竜を従えて堂々たる姿の王、アデルバート様が私を待っていた。
「お待たせしました」
アデルバート様の前まで行き、ラント君の手を離す。 

 私の顔を見て、微笑んで手を握った。
「行くぞ」
あっ……と思った時には抱きかかえられて、いつの間にか竜の背に乗っていた。 

 竜の背には大きな鞍らしきものがあって、私はアデルバート様の前に竜にまたがっている。
後ろから背中ごと包まれるように、アデルバート様は竜の手綱を持った。

 二人乗り……なのか? とボーッとしていたら急に竜がバサバサと翼を動かした。
「わっ!」
そして何回か翼を動かしたのち、浮遊感を感じた。

 「行ってらっしゃいませー!!」
「お気をつけて! アデルバート様! テオドール様!」

 城の人達に見送られて、地面から離れて行く。
「落ちるから、俺にしがみついておけ」
アデルバート様が私に話しかけたと思ったら、グンと空へ上昇した。
「……!」
安全装置……。落ちた時の為に鞍と体に太い綱を結んでいるが、慣れない私はアデルバート様が言ったとおりにしがみついた。

 翼の動かすバサ! バサ! と激しい音から、バッサ、バッサと規則正しい音に変わったのでそっと目を開けてみた。
「凄い!」
眼下に小さくなったドラゴラン国のお城が見えた。初めて見る空中を飛ぶ、竜からの景色に私は感激した。

 「気に入ったか? テオドール」
アデルバート様が耳元で聞いてきた。
 竜の鞍をまたぎ、上半身だけひねってアデルバート様にしがみついている。その密着加減に今更気が付き、恥ずかしくなる。
「は、はい……!」
心臓がドキドキとうるさい。

 「それは良かった」
機嫌良く、私に言う。その笑顔にまたドキッとした。ごまかすように辺りを見ると、竜に乗った騎士様達が並んで飛んでいた。
「凄い。たくさんの竜が飛んでいる……」
アデルバート様を守るように飛んでいる。 

 「っ!」
「どうした?」
体がピクリと動いた為、アデルバート様は気が付き私に話しかけてきた。
「な、何でもありません」
周りに騎士様達がいるのに……言えません。

 服が乳首に擦れて感じてしまった。
それにアデルバート様にくっついているので、アデルバート様の体の逞しさと良い香りにクラクラしてきた。
騎士様達に気づかれないようにしないといけない。
 ……アデルバート様にも。
 
 竜の乗り心地は悪くない。だがやはり振動があってどうしても姿勢に無理があった。
「アデルバート様、あの、姿勢が」
竜の手綱を持っているアデルバート様に悪いと思いつつ、話しかけた。
「ああ、その体勢は辛いな。俺の背中に両手を回して、体を反対に向けられないか?」
いつもより優しい話し方だ。私はホッとするが……。
体を反対に向ける?? アデルバート様と向きあって座るのか?

 「こ、怖いですけど、やってみます」
度胸を決めて、アデルバート様の背中を両手で抱きしめて足を縮めて向き合い、足を伸ばした。
「あっ!」
そんなつもりはなかったが、アデルバート様の脚の上に抱っこされた形になってしまった。

 「申し訳ございません! すぐに足を下ろします!」
私は慌てた。アデルバート様に対して不敬だ。

 「待て。このままでいい」
そう言って腕の間に私を閉じ込めた。アデルバート様の体と密着し、私は抱きついたまま手を離せなくなってしまった。 



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