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逆転
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ケホケホ…と苦しそうに息をするローズは私から奪い取った指輪を弾みで手から離し、カランカランと床を転がっていった。
転がる指輪は本棚の隙間に転がり入り、すぐには取れそうな状態ではなかった。
「ってぇ……。リース、なにをする!」
「なにをするってそれはこっちのセリフでしょ。いくら兄妹とはいえ、人が見てる前で殺そうとするなんてあり得ない!」
「殺そうとは思ってない。ただお前にやった物を取り返そうとしただけだ」
「私は貰ったつもりはないけど?いきなり嵌めてきたのはニコル、あなたでしょ?」
言い争う二人を尻目にローズは転がっていった先の本棚にふらりふらりと近づくと隙間を覗き込き、その細い隙間に指をいれ必死に取り出そうと試みていた。
「私の!?」
「違う、お前じゃない。リースのだ」
その言葉で指を入れ取り出す行為を取りやめ、今度はローズがニコルに詰め寄り始めていった。
首には締めつけられた際に出来た赤く、ハッキリと残るニコルの指跡。
相当強く掴んでいたのだろう、すぐには元の肌色に戻る様子は見受けられなかった。
「お兄様、どうして私じゃないの?そんなネズミを本気で妻として迎え入れるつもり?
だとしたら私は一切認めない、いくらお兄様とはいえ拒否する権利はあるはず」
「権利、なんてなんだ?俺はフィリスの王だぞ?王の言葉は絶対のはずなのはお前もよく分かっているだろう。拒むなら妹とはいえ、タダではおかないぞ?」
ニコルが再び右手の指を軽く曲げたのを私は見るなり、その手首を掴み取った。
「リース、なんのつもりだ?」
「また、するつもり?」
またやられると思ったローズは『ひっ』と声を上げた後、一歩だけ後ずさりしニコルとの距離を取った。
その様子に『……ふっ』と鼻で笑うと、私に掴まれた手を振り払い執務机へと戻っていった。
「……もういい、二人とも出てけ」
声に反応し、先に動き出したのはローズだった。
兄に殺されるかもしれない恐怖心から慌てて玉座の間の扉をバンッと音を立て逃げる様に出ていった。
一方、私は座るニコルをしばし見ていた。
視線を受け、転がっていった本棚へと顔を向けるニコル
の目は細め、口は軽く下唇を噛み、悔しさのような表情を見せていた。
ローズがいなくなった部屋は静寂が訪れ、二人とも声を発する事なくただお互い視線を絡ませる事は無かった。
そのまま時間だけが過ぎ、部屋の上方に設置された窓に当たる雨が虚しく響いていた。
と、その時だった。
「いつまでそこにいるつもりだ?」
か弱い声を発するが、目線だけは本棚にあった。
「出てくけど、私には居場所がない」
「そうだったな、ファーラスにでも聞け」
「自分が追い出したくせに……」
そうだったな…と歯をギリっと鳴らすと外にいるメイドにでも聞けと言い直していた。
それを聞き、私はニコルから視線を外し、玉座の間を後にしていった。
転がる指輪は本棚の隙間に転がり入り、すぐには取れそうな状態ではなかった。
「ってぇ……。リース、なにをする!」
「なにをするってそれはこっちのセリフでしょ。いくら兄妹とはいえ、人が見てる前で殺そうとするなんてあり得ない!」
「殺そうとは思ってない。ただお前にやった物を取り返そうとしただけだ」
「私は貰ったつもりはないけど?いきなり嵌めてきたのはニコル、あなたでしょ?」
言い争う二人を尻目にローズは転がっていった先の本棚にふらりふらりと近づくと隙間を覗き込き、その細い隙間に指をいれ必死に取り出そうと試みていた。
「私の!?」
「違う、お前じゃない。リースのだ」
その言葉で指を入れ取り出す行為を取りやめ、今度はローズがニコルに詰め寄り始めていった。
首には締めつけられた際に出来た赤く、ハッキリと残るニコルの指跡。
相当強く掴んでいたのだろう、すぐには元の肌色に戻る様子は見受けられなかった。
「お兄様、どうして私じゃないの?そんなネズミを本気で妻として迎え入れるつもり?
だとしたら私は一切認めない、いくらお兄様とはいえ拒否する権利はあるはず」
「権利、なんてなんだ?俺はフィリスの王だぞ?王の言葉は絶対のはずなのはお前もよく分かっているだろう。拒むなら妹とはいえ、タダではおかないぞ?」
ニコルが再び右手の指を軽く曲げたのを私は見るなり、その手首を掴み取った。
「リース、なんのつもりだ?」
「また、するつもり?」
またやられると思ったローズは『ひっ』と声を上げた後、一歩だけ後ずさりしニコルとの距離を取った。
その様子に『……ふっ』と鼻で笑うと、私に掴まれた手を振り払い執務机へと戻っていった。
「……もういい、二人とも出てけ」
声に反応し、先に動き出したのはローズだった。
兄に殺されるかもしれない恐怖心から慌てて玉座の間の扉をバンッと音を立て逃げる様に出ていった。
一方、私は座るニコルをしばし見ていた。
視線を受け、転がっていった本棚へと顔を向けるニコル
の目は細め、口は軽く下唇を噛み、悔しさのような表情を見せていた。
ローズがいなくなった部屋は静寂が訪れ、二人とも声を発する事なくただお互い視線を絡ませる事は無かった。
そのまま時間だけが過ぎ、部屋の上方に設置された窓に当たる雨が虚しく響いていた。
と、その時だった。
「いつまでそこにいるつもりだ?」
か弱い声を発するが、目線だけは本棚にあった。
「出てくけど、私には居場所がない」
「そうだったな、ファーラスにでも聞け」
「自分が追い出したくせに……」
そうだったな…と歯をギリっと鳴らすと外にいるメイドにでも聞けと言い直していた。
それを聞き、私はニコルから視線を外し、玉座の間を後にしていった。
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