全てを失った私を救ったのは…

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身分

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薄暗い部屋で私とジャックさんは向かい合い緊張感ある時を過ごした。
目の前には今まさに人殺しをした人物がいて、その人の部屋に私はいる。
壁にもたれどうする事もできない私にジャックさんはナイフを前に出す。

「……怖いですか?」

こくんこくんと素直に頷き、冷や汗を掻く。
月日に当たりキラリと光る刃は四方八方に光を拡散させ、私の顔にも当たる。

「私はあなたを襲いませんよ、約束しましたから。……遅いので休みましょう」
「あの!?」
「……なんですか?」
「あの人は……」

私が指差す方は扉で、その外にいる男性をどうするのかと尋ねた。

「もう、息もしてないので。でもあなたが気になるなら『処分』しますよ」

処分……?
それはまさか隠すという事か、と思い手を強く握った。

「リースさん」
「は、はい」
「気にしなくていい。あなたは何も。全部やりますから」

そう言い残すと男性をそのままにし、ジャックさんは床に寝そべりキースを招いていた。
私はそんな姿を見てその場から動けず、ずりずりと壁に沿いながら床にへたり込んだ。

時が過ぎ、ジャックさんは私に構わず寝入り、再び寝息を立てていた。
でも私はそんな人殺しを前に寝るなど出来ず、ずっとその日は起きていた……。



ーーーーーー




夜が明け、太陽の光が部屋に届き始めた。

(ようやく、朝……)

これだけ朝が待ち遠しいなんて初めてだ。
ジャックさんとキースはまだ寝ているようでイビキまでかいていた。

「……出よう」

外にはあの男性がいるが、それでもここに留まるのは危険だと思い、音を立てないように立ち、ゆっくりと忍足で扉へと向かい、すこしずつ扉を開いていった。

キィィ…っと擦れる音が鳴ったため慌てて振り返るがまだ大丈夫そうだった。
少しホッと胸を下ろした時……

「出ていくのは良くないですよ」

ジャックさんの声だ。
ゴクリと生唾を飲み動きを止めたが、声のする方をみずに答えた。

「……いえ、ちょっとトイレに」
「嘘、ですね。明らかに動揺もしてる。それを開けたら見たくないものを見ますよ?人の『死』というものを」
「わ、私は」

気づくと扉が勝手に私の方へと戻って来ていた。
いや……違う……。
背中越しに人の熱量を感じる……。

「それに、本当は家出ではないんですよね?」
「なんでそれを……。あっ」

しまったと思い、口を塞いだがもう後の祭りだ。

「やっぱり、家出にしては荷物など全くない。まるで何処かから逃げて来たかのようだ」
「あっ、いや……」
「本当の事言った方がリースさんのためですよ」

後ろから聞こえる声は私を苦しめ、まるでニコルが私を威圧していた時と同じような感覚を覚えた。

「はぁ…はぁ…」
「言った方が楽になりますよ。……さぁ」

私はフィリス家を追い出された王妃であった事をバラした。
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