全てを失った私を救ったのは…

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「フィリス家の、王妃……」

私の告白にジャックさんは言葉に詰まりつつも扉を完全に閉め私の行く手を閉した。

「本当にあなたがニコルの妻……」
「えっ、なんでニコルを知ってるんですか?」
「……私は昔、衛兵をしていた。フィリス家で」

私はその言葉を聞き、背を向けていたのを直り、ジャックさんと対峙した。

「私がいた時にはいなかった……。嘘ですよね、それ」
「嘘じゃない。5年前までそこにいた」

5年前というと私がまだニコルに会ってない。
会って3年、4年近くは経つからそれより前にいたなら一致する。

「……なんで辞めたんですか」
「色々と」
「色々、って」
「詳しく知りたいなら出ていくのは辞めた方がいいですよ、お腹だって空いたでしょう」

正直それはあった。
お腹は空いている、だから私はご飯だけ食べたらすぐ出ようと考えた。

「じゃあ」

ジャックさんは私を避け、外に行き用意をするようだ。
多分昨日食べた残りがあるからそれだと思う。
だが、その用意の音とは別に『ザッ、ザッ』と何かを掘る音も聞こえる。

(まさか……)

処理すると言っていた行動をしているのかと思い、思わず耳を塞いでいた。
だが、耳を塞いでも掘る音、そして引き摺る様な音が聞こえてくるのでいてもたってもいられずベットへと逃げた。

音はずっと聞こえ料理が出て来ることはしばらく無かった。


ーーーーーー


「お待たせしました」

気づくとジャックさんは中へ入ってきていた。

「……もう終わりましたよ、出て来てください」

ゆっくり出ると、そこには昨日と同じボウルを持つジャックさんがおり、指先に少しだけ血のような赤い物が付いているのが生々しさを醸していた。

「どうぞ」
「……どうも」

受け取るとやはり昨日の残り物だ。
お腹は空いてるのに手は全く動かず、ただ出された物を見ていると、『血なんて入ってませんよ』と見透かされたような言葉を投げかけてくる。

「そんな、違いますっ」
「なら、どうぞ。冷めますよ」

ジャックさんは私の目の前でボウルに口をつけ食べ始めていく。
ググ…っと持つ手に力をいれつつ私もそれに口をつけた。


料理を食べ終わり、一息つくとゆっくりジャックさんは口を開いていった。

「それで?知りたい事はなんですか?」
「辞めた理由……」
「あぁ、簡単です。ムカついたからです」
「ムカついた?誰に、ですか」

私の質問にみるみる顔色を変え、『ニコル、ファーラス、ローズ』と立て続けに名を上げていった。
中でもローズに一番ムカついているらしい。

「どうして、ローズを」
「あなたもいたならわかりますよね、あの性格。……アイツがいなかったら私はエリスと」
「エリスっ!?……ちょっと待ってください。エリスとジャックさんは」
「隠す事などないですね、付き合ってました。でもローズに見つかり……それ以降は何となく察しがつくでしょう」

多分告げ口したんだろう……。
それがファーラスに伝わり、そしてニコルに。
で、引き離される形でと私は考えた。

「……あなたがフィリス家の王妃だったなんて意外です。それなら達成出来そうだ」
「達成?なにがですか?」
「……復讐ですよ」
「復讐!?誰を……」
「ローズに決まってる。そしてニコルとファーラス」

ジャックさんは床に手を押し当て怒りに満ちているようで私の事など全く見ず押し付けた手を振るわせていた。

「協力してもらえますよね?」
「協力って、なにをです……」
「屋敷に入るための口実を作ってもらいたい」
「そんな……私はもうフィリス家には……」
「うるさいっ!?」

大声と共に私を睨んできた。
その目はとっても冷たい目をしており、完全に人殺しの目だ。

「……私は簡単に人を殺しますよ」

床に置いた手を離すとポキっと鳴らし、私を威嚇してくる。

「それにあなたも『共犯』ですからね」
「共犯っ?なんで?!」
「外には人が埋まってる。そしてそれを知ってるあなたは私を匿っている。それを口外すればあなたも疑われますよ?」
「匿ってなんか、ここはあなたの家……」
「はたからみたらそんな言葉信用されませんよ。人殺しだとしか」
「そ、そんなぁ……」
「だから協力するしかない、そして黙っているしか」

私は人殺しのレッテルを貼られ、もうここから逃げる事は出来なくなってしまった。

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