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したくないのは…
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「ブライス…お願い、私と離縁して。そしてマリーを私に任せて」
お互いの顔はすぐ近く。
ユーリに腕を絞められ苦しそうにするブライスは私の言葉にすぐには答えず黙っていた。
「ブライス様、リーネに答えてください」
「…ブライス」
ブライスが答えるのを固唾を飲んで見守っている私とユーリ、そしてロータスさん。
そして答えが決まったのかゆっくりと話し始めた。
「そんなに俺と離縁したいんだな。勝手にしろ…。
だがお前のその決断が間違っているとしても俺はもう知らん」
「ブライス…ありがとう」
「じゃあブライス様、ちゃんと誓約書を書いてください。そうするなら…」
「分かった!だからさっさと離せ!?」
私は顔を上げてユーリを見ると、軽く頷くユーリがいた。
お互いが確認しあったのを見ると、するっとブライスを絞めていた手を離していった。
絞められていた右手を庇うような仕草を見せるブライスを私はもう一度見た。
「おまえは馬鹿だな。もうこんな暮らしは一生出来んのに」
「…」
「黙るくらいなら取り消せ。その方が…」
「もういいよ、ブライス。早く書いて…」
そう告げた私は立ち上がりブライスを見下ろした。
その目はもう決心した感じだった。
それを見て、顔を背けながら息を吐き、立つと自分の部屋へと戻っていき机に置かれた紙に素早く文字を書き出していく。
私とユーリはそれを開けられた扉の外から見守っていた。
描き終え戻ってくるブライスは私に一枚の紙を見せてきた。
そこには…
『ブライス=ライオネスは妻リーネと離縁する。
また娘のマリーを妻に引き渡す事にする』
と書かれてあった。
その文字は以前アリスの時に見たような綺麗な字ではなく、苛立って書いていたからだろうか、書かれた文字はよれて紙には穴が空いていた…。
「早くサインしろ、リーネ。条件はちゃんと書いてあるはずだ」
手に取るともう一度、目を紙に移した。
マリーは私に…。
そして顔を上げブライスを見た後、部屋へと移動し紙の余白に私は名前を書き始めた。
その時だった…。
「あっ…」
バタンッ
ガチャ
「えっ…?」
振り向いた私の目に飛び込んできたのは扉を閉め私と目が合うブライスだった…。
「な、なに?」
名前を後少しで書き終える所だったが、止めて入ってきたブライスに声を掛ける。
しかし、黙り私を見るだけだった。
でも、その目には少し涙があるようにも見えた…。
「どうしたの?もう少しで書き終えるから待って。
でも、なぜ鍵を閉める必要があるの?」
「…リーネ、考え直す気はないか?」
意外だった…。
さっきまで潔く私と離縁する事を承諾していたのに今のブライスからは後悔の念があるような雰囲気を醸し、
そして、左目から一筋の涙が流れだす。
「え…え…」
今まで見た事がないブライスの表情と涙。
そんなブライスに私はゆっくり近づいていく。
「リーネ…もうアリスとは会わない。
信じてくれ…。俺はお前しかいないんだ…。
頼む…俺から離れないでくれ…」
体を90度に曲げ私に懇願する姿に困惑してしまった。
でも私が受けたショックは大きく…
「ありがとう…ブライス…」
「いいのか、リーネ?」
「ううん、違う…あなたは私の心を分かってない。
いくら謝っても消えないくらい深く傷つけた…。
だからどんな言葉を投げかけても、もう私には響かないよ、だから…」
私はブライスと向き合っていた体を机の方へと向き直し、書き残していた名前を最後まで書くと、再度ブライスの方へと向き直した。
「私はもう無理だから…。分かって、ブライス」
右下に私の名前が書かれた紙をブライスに見せ、受け取るようにお願いした。
でも、一向に紙を取ろうとせず立ち尽くしており時間だけが過ぎていく。
外からは扉を叩く音が中に響き、更にはユーリの声までも聞こえてくる。
「ブライス…受け取って。
そして、私のことは忘れてアリスと仲良く…」
そう告げた瞬間、ブライスは私に近づき抱きしめてきた…。
お互いの顔はすぐ近く。
ユーリに腕を絞められ苦しそうにするブライスは私の言葉にすぐには答えず黙っていた。
「ブライス様、リーネに答えてください」
「…ブライス」
ブライスが答えるのを固唾を飲んで見守っている私とユーリ、そしてロータスさん。
そして答えが決まったのかゆっくりと話し始めた。
「そんなに俺と離縁したいんだな。勝手にしろ…。
だがお前のその決断が間違っているとしても俺はもう知らん」
「ブライス…ありがとう」
「じゃあブライス様、ちゃんと誓約書を書いてください。そうするなら…」
「分かった!だからさっさと離せ!?」
私は顔を上げてユーリを見ると、軽く頷くユーリがいた。
お互いが確認しあったのを見ると、するっとブライスを絞めていた手を離していった。
絞められていた右手を庇うような仕草を見せるブライスを私はもう一度見た。
「おまえは馬鹿だな。もうこんな暮らしは一生出来んのに」
「…」
「黙るくらいなら取り消せ。その方が…」
「もういいよ、ブライス。早く書いて…」
そう告げた私は立ち上がりブライスを見下ろした。
その目はもう決心した感じだった。
それを見て、顔を背けながら息を吐き、立つと自分の部屋へと戻っていき机に置かれた紙に素早く文字を書き出していく。
私とユーリはそれを開けられた扉の外から見守っていた。
描き終え戻ってくるブライスは私に一枚の紙を見せてきた。
そこには…
『ブライス=ライオネスは妻リーネと離縁する。
また娘のマリーを妻に引き渡す事にする』
と書かれてあった。
その文字は以前アリスの時に見たような綺麗な字ではなく、苛立って書いていたからだろうか、書かれた文字はよれて紙には穴が空いていた…。
「早くサインしろ、リーネ。条件はちゃんと書いてあるはずだ」
手に取るともう一度、目を紙に移した。
マリーは私に…。
そして顔を上げブライスを見た後、部屋へと移動し紙の余白に私は名前を書き始めた。
その時だった…。
「あっ…」
バタンッ
ガチャ
「えっ…?」
振り向いた私の目に飛び込んできたのは扉を閉め私と目が合うブライスだった…。
「な、なに?」
名前を後少しで書き終える所だったが、止めて入ってきたブライスに声を掛ける。
しかし、黙り私を見るだけだった。
でも、その目には少し涙があるようにも見えた…。
「どうしたの?もう少しで書き終えるから待って。
でも、なぜ鍵を閉める必要があるの?」
「…リーネ、考え直す気はないか?」
意外だった…。
さっきまで潔く私と離縁する事を承諾していたのに今のブライスからは後悔の念があるような雰囲気を醸し、
そして、左目から一筋の涙が流れだす。
「え…え…」
今まで見た事がないブライスの表情と涙。
そんなブライスに私はゆっくり近づいていく。
「リーネ…もうアリスとは会わない。
信じてくれ…。俺はお前しかいないんだ…。
頼む…俺から離れないでくれ…」
体を90度に曲げ私に懇願する姿に困惑してしまった。
でも私が受けたショックは大きく…
「ありがとう…ブライス…」
「いいのか、リーネ?」
「ううん、違う…あなたは私の心を分かってない。
いくら謝っても消えないくらい深く傷つけた…。
だからどんな言葉を投げかけても、もう私には響かないよ、だから…」
私はブライスと向き合っていた体を机の方へと向き直し、書き残していた名前を最後まで書くと、再度ブライスの方へと向き直した。
「私はもう無理だから…。分かって、ブライス」
右下に私の名前が書かれた紙をブライスに見せ、受け取るようにお願いした。
でも、一向に紙を取ろうとせず立ち尽くしており時間だけが過ぎていく。
外からは扉を叩く音が中に響き、更にはユーリの声までも聞こえてくる。
「ブライス…受け取って。
そして、私のことは忘れてアリスと仲良く…」
そう告げた瞬間、ブライスは私に近づき抱きしめてきた…。
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