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新しい生活
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暗い部屋の中で一人寝る事なく悶々とした感情の私がいた…。
(なんでユーリが…?ブライスと何か関係でもあるの?)
膝に置いた手をギュッと握りしめ、口は真一文字になり寝ているユーリをジッと見ていた。
そのまま時間は過ぎていき、一階から聞こえる時刻を教える時計の音を耳にしていた。
このまま寝ずに明日を迎えた際、勘のいいユーリの事だ、寝不足では何か感じ取られてしまうのではないか…と思い、ゆっくりと寝るマリーの隣に横になった。
「おはよう、ユーリおばさん!」
元気のいいマリーの声で私はハッと目を覚ました。
体を起こすとユーリとマリーが二人で話をし始めている。
その様子を私は何も言わずにただ見ていた…。
「おはよう、リーネ。ちゃんと寝れた?」
「え…あ、うん。寝たよ」
急に私に話しかけてくるユーリの声に私はうまく反応する事は出来ずに吃りがちであった。
「お母様、ひどい寝癖!」
頭の後ろが盛大に持ち上がり軽いちょんまげのような感じになっていた。
そんな私を見て大笑いするマリー。
そしてクスクスと笑うユーリがいる。
「やめて!?」
たかが寝癖で私は大声をあげて二人にぶつかっていた。
何も悪くないはずの二人に、だ…。
「な…どうしたの?リーネ。いきなり…。
笑ったのは謝るけど、そんな大声で言わなくても…」
「…変なお母様。寝癖なんて私もあるのに。ほら」
そういうと私に背を向けるマリーの髪も同じように少し後ろが持ち上がった感じになっていた。
直そうと何回も手を後ろに送り、それを撫でたりしている。
「…ごめん」
「今日はレイ事務長が任せてくれたお店行くんでしょ。
早く下に行ってレイ事務長に挨拶しないと」
「私が先に行くー!」
我先にとマリーが部屋を出て下に向かうのをユーリが後を追いかけるようについて行った。
一人残された私は昨日見た『あの』本が気がかりでベットから立つとユーリが寝ていたベットに近づき、本を探した。
「…あった」
ベットの下に隠すように置かれた本。
(やっぱり、この本は…ブライスのと同じ…)
そう思うと軽く動悸を起こしてしまった…。
まさか、何か挟まってるなんてないよね?と不安になり本をペラペラとめくっていく。
どこにも何かが挟まってる形跡は無い。
至って普通の本だった。
安心し、深く息を吐くと本を閉じ、またあった場所へと戻し、私も二人の元へと急いだ。
「おはよう、リーネ。遅かったわね」
「すみません…」
「謝らなくていいのよ。さぁ、座って。ご飯にしましょう」
私が来る前にはもうテーブルに人数分の食事が用意されていた。
パンにハム、卵。
屋敷にいた時に比べて質素な朝食。
でも私にそんな事が言える立場でもないし、なにより離縁した身の私を暖かく迎えてくれるレイ事務長には感謝しかないのだから。
「いただきまーす」
声と共に食べ始めるマリーを横目で見ながら私達も食事を取り始める。
「レイさん、ところで一緒にされてる方の名前って?」
「あぁ、そうね。言ってなかったわね。フリックよ。
ただ…ちょっと頑固な部分もあるから、そこだけは注意してね」
(頑固、か。ブライスみたいだと嫌だな…)
パンを口に含みながら私はユーリとレイ事務長が話すのを目だけキョロキョロしながら見ていた。
「マリーは留守番よ、その間私が勉強を教えてあげるわ。
勉強以外にも色々とね」
「えー…私も行きたい…」
「頑固なおじいさんに怒られてもいいの?」
「う…それは、いやだ…」
「じゃあこの家で留守番」
「…分かった」
「すみません、レイ事務長…。マリー、迷惑かけちゃダメだからね!」
「はぁい…」
不貞腐れているマリーを託し、私とユーリは
これから始まる新しい生活の第一歩を歩み出した。
(なんでユーリが…?ブライスと何か関係でもあるの?)
膝に置いた手をギュッと握りしめ、口は真一文字になり寝ているユーリをジッと見ていた。
そのまま時間は過ぎていき、一階から聞こえる時刻を教える時計の音を耳にしていた。
このまま寝ずに明日を迎えた際、勘のいいユーリの事だ、寝不足では何か感じ取られてしまうのではないか…と思い、ゆっくりと寝るマリーの隣に横になった。
「おはよう、ユーリおばさん!」
元気のいいマリーの声で私はハッと目を覚ました。
体を起こすとユーリとマリーが二人で話をし始めている。
その様子を私は何も言わずにただ見ていた…。
「おはよう、リーネ。ちゃんと寝れた?」
「え…あ、うん。寝たよ」
急に私に話しかけてくるユーリの声に私はうまく反応する事は出来ずに吃りがちであった。
「お母様、ひどい寝癖!」
頭の後ろが盛大に持ち上がり軽いちょんまげのような感じになっていた。
そんな私を見て大笑いするマリー。
そしてクスクスと笑うユーリがいる。
「やめて!?」
たかが寝癖で私は大声をあげて二人にぶつかっていた。
何も悪くないはずの二人に、だ…。
「な…どうしたの?リーネ。いきなり…。
笑ったのは謝るけど、そんな大声で言わなくても…」
「…変なお母様。寝癖なんて私もあるのに。ほら」
そういうと私に背を向けるマリーの髪も同じように少し後ろが持ち上がった感じになっていた。
直そうと何回も手を後ろに送り、それを撫でたりしている。
「…ごめん」
「今日はレイ事務長が任せてくれたお店行くんでしょ。
早く下に行ってレイ事務長に挨拶しないと」
「私が先に行くー!」
我先にとマリーが部屋を出て下に向かうのをユーリが後を追いかけるようについて行った。
一人残された私は昨日見た『あの』本が気がかりでベットから立つとユーリが寝ていたベットに近づき、本を探した。
「…あった」
ベットの下に隠すように置かれた本。
(やっぱり、この本は…ブライスのと同じ…)
そう思うと軽く動悸を起こしてしまった…。
まさか、何か挟まってるなんてないよね?と不安になり本をペラペラとめくっていく。
どこにも何かが挟まってる形跡は無い。
至って普通の本だった。
安心し、深く息を吐くと本を閉じ、またあった場所へと戻し、私も二人の元へと急いだ。
「おはよう、リーネ。遅かったわね」
「すみません…」
「謝らなくていいのよ。さぁ、座って。ご飯にしましょう」
私が来る前にはもうテーブルに人数分の食事が用意されていた。
パンにハム、卵。
屋敷にいた時に比べて質素な朝食。
でも私にそんな事が言える立場でもないし、なにより離縁した身の私を暖かく迎えてくれるレイ事務長には感謝しかないのだから。
「いただきまーす」
声と共に食べ始めるマリーを横目で見ながら私達も食事を取り始める。
「レイさん、ところで一緒にされてる方の名前って?」
「あぁ、そうね。言ってなかったわね。フリックよ。
ただ…ちょっと頑固な部分もあるから、そこだけは注意してね」
(頑固、か。ブライスみたいだと嫌だな…)
パンを口に含みながら私はユーリとレイ事務長が話すのを目だけキョロキョロしながら見ていた。
「マリーは留守番よ、その間私が勉強を教えてあげるわ。
勉強以外にも色々とね」
「えー…私も行きたい…」
「頑固なおじいさんに怒られてもいいの?」
「う…それは、いやだ…」
「じゃあこの家で留守番」
「…分かった」
「すみません、レイ事務長…。マリー、迷惑かけちゃダメだからね!」
「はぁい…」
不貞腐れているマリーを託し、私とユーリは
これから始まる新しい生活の第一歩を歩み出した。
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