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もう一度

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森の中をゆっくりと進む馬車に追いつくのは簡単だった。
それよりも思うのはあれから時間が経っているのにいまだにこの場所にいるのが不思議でならなかった。
何か他に用がある様には思えず、ただ、ゆっくりと馬車は進んでいた。

後ろからラークさんの声が聞こえてくる。
でも、まだ少し遠いみたいだ。

「待って!」

私は馬車に追いつき馬を操る使用人に声を掛けた。

「え…?リーネ様?」

私の顔を見るなりすぐに手綱を絞り馬を静止させる動作を見せた。
急に止まる事に違和感を覚えたブライスが馬車の中から薄いレースのカーテンを開け、私の姿を確認してくる。
それを見るなり眉を片方だけ上げ、憮然な顔で見てきた。

完全に馬車が止まると不機嫌そうにブライスだけが馬車から降りてくる。
降りる際に見えた中にはユーリのドレスが多少乱れているみたいだった。
もちろん、降りてくるブライスも慌てていたのだろうか、衣服は少し乱れていた。

(まさか…こんな馬車の中で…)

「なんだ?何か用か?」

かなりご立腹のようで、怒りを露わにし、邪魔された事がムカついているようだった。

「あ、あの…」

「ちっ、さっさと言え。昔からお前は言葉を伝えるのが下手だ。
もう少しユーリを見習ったらどうだ?」

「ゆ、ユーリ…」

「なんだ、ハッキリと言え!」

腕を組み、足は地面をトントンと貧乏揺すりをしているようだった。

「リーネ!逃げても無駄だよ、何処にいるんだ?」

ラークさんの叫び声にビクッと反応を見せる私に対し、ブライスは私の今の状態をなめるように見てきた。

「ふっ、ラークと楽しんだんだろう?
そんな風に破れた服に手には縄。
逃げてきたとしてもあいつはしつこいからな、諦めてあいつと共にいるのが良いんじゃないか?
ククク…」

「馬鹿にしないで!あんな人と一緒になるくらいなら死んだ方がマシ!?」

「死んだ方がマシ、か。それもアリじゃないか?
だが…」

「だが…何よ、あなたこそハッキリと言ったらどうなの?」

「お前、逃げるのに必死で一つ忘れているだろう。
死んだらマリーはどうするんだ?
まぁ…お前もあいつの事をそこまで思ってないんだろうな、だからそんな言葉が出るんだ。
死んだら、俺が適当に相手してやるから安心しろ」

そう言うと、もう私と話すことはないといった感じにまた馬車の中へと戻って行こうとする。
ブライスに言われた『マリー』と言う言葉。
逃げるのに必死で私にとって何よりも守らないといけない存在を忘れていた…。

(そうだ…私にはマリーが、いる…)

「そんなとこにいたのか、リーネ。そこから動くなよ!」

ラークさんに見つかった私は、馬車に乗り込むブライスについて行き、強引に馬車に乗り込むと使用人に急いで出す様に声を荒げた。

「おい!」

ブライスは怒号を上げ、私をすぐに馬車から追い出そうとするが、そんな時、ユーリが静かに声を出した。

「ブライス様、リーネを連れて屋敷に行きましょう。
もうそこで…」

いきなり何かを提案するユーリに、私は訳が分からなかったが、ブライスは納得し、馬車を走らせるのを許した。

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