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以前とは違う

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ブライスが許した事により使用人は手綱を馬に当て走らせた。
先程みたいに森をゆっくりと進む感じではなく、慣れた感じに森を進んでいく。
私を追ってきたラークさんの姿が徐々に小さくなっていくのを見ると、私はホッと胸を撫で下ろしていく。

「ふっ、ラークから逃げてもどうせ追ってくるぞ?
行き先はわかってるんだからな」

「屋敷でしょ?なら私も慣れているから必ず振り切ってみせる」

「どうだか…」

私の言葉を聞いてもブライスは余裕たっぷりと言った感じであった。
でも私達が話すのをユーリは一切口を開かず、お腹を摩っていた。
私に見せつけるように…。

(ユーリ…さっき、何を言いかけていたんだろう?)

気にはなるが、今ここで聞いてもはぐらかしたり濁される気がしたから私はグッと抑え黙っていた。
だが、そんな私をみてブライスは話してくる。

「お前、屋敷でどうなるかわかってないだろう?」

目線をユーリからブライスに移す私。
真正面に座るブライスは私の事を踏ん反りながら見て、ふっ、と鼻で笑った。

「な、なに?」

「いや、お前の味方は誰も居ないな、と思ってな。
いっとくが、お前、屋敷に来たら死ぬぞ?」

「え…」

馬車はいつの間にか森を抜け見慣れた街が見え始めてきた。
そしてガラガラ…とスピードを出し屋敷へと急いでいるようだった。
アカデミーが見え、もう屋敷までは少しだった…。

「どういう事?死ぬ…ってなに?」

ブライスが発した『死ぬ』と言う言葉を理解出来ず、狭い馬車の中で私は何度も問いただした。
でも、もうそれ以上聞いても何も答えず馬車はとうとうライオネス家の屋敷に到着した。

「お帰りなさいませ、ブライス様」

出迎えたロータスさんは馬車にいる私を見つけると目を見開き驚いた表情を見せブライスに話しかけた。

「ブライス様、なぜ…?」

「気にするな、ユーリと共に屋敷に入れろ」

「…わかりました」

ブライスは屋敷へと向かい、それを追うようにユーリもついていく。
すると、私の時には無かった『待つ』という行動をとるブライスがいた。
そして、ユーリの腰に手を当てくっつきながら屋敷へと入っていく。

二人の後ろ姿を見て立ち止まった私。
しかし、ロータスさんが舌打ちをし、私を見てきた。

「なんで、またここにいるんだ?あんたはブライス様とは終わったはずだろう?」

「…ブライスが入れろといっていたはず。変な詮索しないで」

私はロータスさんから逃げるように足早に屋敷へと入っていった。

入ったのは良いが、何処に向かうのか分からなかった。
そうしていると、背中をドンと押され、振り向くとロータスさんがおり、ブライスの部屋へ迎えと言う。

「…それより、なんだ?その格好は。
まるで襲われたようじゃないか。
…ははぁん、さてはラークさんですか?」

「…違います、ただ転んだけです」

「転んだ?それだけでそんなに破れる物ですかねー、
それに手に縄なんて拷問でもされたみたいですけどね。
まぁ、いい。早く歩いてもらえませんか?」

以前とはうってかわりこの屋敷が私を拒否しているような感覚に陥る。
ついこの前までいたのにまるで別の人の家のように感じる。
ブライスの部屋の場所はもちろん知っているのに一歩を踏み出すのが怖かった。

「何立ち止まっているんです?早く行かないとユーリ様にも迷惑ですよ」

明らかに違う…。
以前はユーリの事を『様』をつけて呼ぶことなんて無かった。
でも今ではブライスの妻として扱っている。

「もうなにもかも違うんだ…・」

ボソッという私の言葉に力は無かった。
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