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聖夜

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「った・・・。」

葵は痛みで目を覚ました。

(痛み止め切れたかな・・?)

リビングに行くと司がソファーで寝ていた。

(また、なんにも掛けないで寝てる・・。)

毛布を持ってくるとソッと掛けた。
起こさない様に薬を探すとテーブルの上にあった。
薬を手にするとキッチンに向かい水を冷蔵庫から取って飲んだ。
時計を見ると、午前6時だった。
ソファーの前に座ると司の寝顔を覗き込む。
眠っていても甘く整った顔がよくわかる。
ちょっとクセのある髪を撫でる。

(司には何時も救われてるな・・。)

手を離そうとした時、司に手を握られた。

「・・・。あおい。」

手を引かれると抱きしめられた。

(っ・・。寝ぼけてる?)

手が頬に添えられて親指で唇を撫でられた。
頭の後ろに手が伸びて引き寄せられ、唇が触れるか触れない距離で目を覚ました。

「ん。あおい?」

吐息がかかる。

「起きた?」

間近で視線が合う。

「・・。あっ・・。ごめん。」

パッと手を離された。

「えっと。あれ?」

まだ状況が追い付いてないみたいで取り乱していた。

「ふふっ。寝ぼけてたの?」

「あ、うん。夢を見てた。」

「夢?」

「いや、いいんだ。気にしないで。葵は早かったな?もしかして痛むのか?」

「薬飲んだから大丈夫だよ。ソファーじゃ疲れ取れないでしょう?ベッドで寝れば?まだ早いし。」

「いや、大丈夫だ。」

起き上がると欠伸をしながら伸びをした。

「そんな所に座ってないで」

空いたソファーを叩いた。
葵は司の隣に座ると、司は掛けていた毛布を膝に掛けてくれた。

「暖かい。」

司は葵を抱き寄せた。

「くっついてればもっと暖かいだろ?」

「そうだね。」

司の肩に身を委ねた。




遅い朝食を済ませ、御園診療所に行く為に支度をしているとインターフォンが鳴った。

「ああ、俺が出るよ。」

「ありがとう。」

司が玄関のドアを開ける。
暫くして司が戻ってきた。

「誰だった?」

「葵にお客さんだ。」

「お客さん?」

「どうぞ。」

玄関に視線を向けた葵は目を瞬かせた。

「あなたは・・・。」




一方、御園診療所ではエリックが目を覚ました。

「ここは・・?」

「よぅ。お目覚めか?」

ちょうど、御園がベッドサイドに居た。
身体を起こそうとすると全身に痛みが走る。

「っっっ・・。」

「ああ、まだ寝てな。爆風に巻き込まれてあちこち打撲してる。」

「貴方は?」

「俺はこの診療所をやってる御園ってもんだ。昨日の夜、葵とやりあったんだって?」

「葵は大丈夫なのか?」

「ははっ、まぁ大丈夫だよ。今日また来るように言ってあるからそのうち来るだろ?それまで寝てるんだな?後で何か朝食になるような物持ってくるよ。」

「レインはどうなったんだ?」

「捕まったから大丈夫だ。」

「そうか・・・。」

ホッとしたように身体の力を抜いた。

「むさ苦しい所だけど我慢してくれ?それと、これ飲んでおけ。痛み止めだ。」

薬と水を手渡した。

「ありがとう。・・・。ミソノさんはアオイの仕事の事知ってるのか?」

「ん?ああ、知ってるよ。葵が日本に来たばかりの頃に知り合ったんだ。それから俺が一方的に世話を焼いてる。」

「アオイは日本に来て良い出会いがあったんだな。ツカサといいミソノさんといい。だから、変わったんだろうな・・・。」

「エリックは葵がアメリカに居た時に一緒に仕事をしてたんだって?」

「何度かね。」

「ふぅーん?そんなに変わったか?」

「ああ。」

「そうかねぇ?葵の根っこの部分は変わってないと思うぞ?いつだって、人の為に動いてる。自分の事はいつも二の次だ。もっと自分を大切にしてほしいんだがなぁ?そう思わないか?」

「・・・。確かにそうかもしれないな・・。」

「おっと、お喋りが過ぎたな。まぁ、安静にしてるんだな?」

そう言うと御園は診察室へ戻っていった。




「んっ・・・。」

エリックが再び目を覚ましたのはもう夕方だった。
レインが捕まり思い悩んでいた事が解決した安心感からかグッスリと眠れた。
時計を見ると、午後5時だった。

(随分と寝てたんだな。)

痛み止めが効いているのか身体はある程度動かせた。
ドアが開くと葵が入ってきた。

「エリック。お目覚め?身体は大丈夫?」

「アオイ。俺は大丈夫だ。」

「そっか。良かった。」

優しく微笑んだ。

「お腹空いてない?何か作って来ようか?」

「・・・。いや大丈夫だ。食欲も無いし。」

「そうなの?・・・。エリックに聞きたい事があったんだけど、ソフィアさんの事。」

「・・・。」

「この前、ソフィアさんとは別れてきたって言ってたけどちゃんと話し合ったの?」

「それは・・。」

「まさか、一方的に別れて来たなんて言わないわよね?」

「俺みたいな人間と一緒に居たら危険に晒すことになる。だから別れたほうが良いんだ!」

葵はため息を吐いた。

「それじゃ、納得出来ないわね?」

「アオイに納得してもらおうとは思ってない。」

「・・・。確かに人それぞれ考え方は有るからね?でも、もう一人納得出来ない人が居るみたいよ?」

「えっ?」

葵はドアを開ける。
エリックの目が見開かれた。

「どうして・・?日本ここに?」

部屋に入ってきたのは、長いブロンドの髪・水色の瞳が印象的な女性だった。

「エリック・・。」

「ソフィア。」

「あんな置き手紙一つで別れるなんて納得出来ないっ!エリックの事こんなにも好きなのにどうして別れなきゃいけないの?」

「ごめんソフィア。俺は君とは一緒に居られない。本当の俺の仕事は・・。」

瞳に涙を溜めたソフィアはエリックに抱きついた。

「知ってるよ?だから何?私はエリックが好きなのっ!一緒に居たいのっ!それだけじゃ駄目なの?」

「知ってたのか?俺は裏社会の人間だ。そんな俺と一緒に居たら今回みたいに危険な思いをするんだぞ!?」

「エリックと一緒に居られるならそれでもいいのっ!私の覚悟は変わらないわ!!」

「ソフィア・・。」

「エリック?ちゃんと二人で話し合って?それから決めても良いんじゃないの?ソフィアさんの気持ちも解ってあげて?」

「アオイ・・。」

「邪魔者は退散するから二人でユックリ話すのね!」

「あっ、おい!」

「じゃーねー!」

ウィンクをするとドアを閉めた。
葵と司、御園の三人は診療所を後にした。
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