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第4章 このアイテムがすごい!そしてロゼも凄い!
#35 その頃、勇者一行はエスペラントに向かう
しおりを挟む事実上の登場人物紹介回ですかね。よろしくどうぞ!
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加代田達が自由都市エスペラントの冒険者ギルドに入ろうとしていた頃、その自由都市に向けて移動する馬車の列があった。その中の一台、一目で豪華な馬車には四人組の男女がいた。
「ダンジョンか…、マジそんなんあるんだな」
無二の勇者という天職を得た足立瑠煌亜が足を投げ出しただらしない格好で車内の座席に座りながら言った。
高校の制服ズボンを尻の中ほどまで下げたいわゆる平成初期に流行した腰パンスタイルは座る姿勢に負けず劣らずだらしない。少なくともこの姿を見たらかつて不死身の竜の王に挑んだという者…勇者、人々の希望となったその存在と同じ天職を得ている者とは思えないだろう。
…いや、それよりもさらに上位の…『無二の』という形容までついている。ふたつとない…、その意味は人類の危機の度に現れたその時代ごとの勇者達と並ぶどころか超える存在だという事を表している。
「つーかさ、かったるくない?この馬車の座席カタいしさー」
そう悪態を吐いているのは北姫偉奈、真理追究の賢者の天職を得た女である。攻撃魔法を扱う天職である彼女はずっと不機嫌だ、下手すると今にも攻撃魔法を使いそうだ。それと言うのも今乗っている馬車のせいだ。馬型のモンスターと従来の馬を掛け合わせて生まれた超大型の馬が引くこの馬車は早馬車と呼ばれスピードもパワーも段違い。本来の馬車など早歩きか駆け足くらいの速度だ。
それに比べてこの早馬車は平地であれば時速20キロは出る。もっとも山がちなグランペクトゥからエスペラントに向かっているのだから真っ平な道ではない。スピードがある分激しく揺れる。
「あ~、爪塗れないとかマジありえない」
それがピイナが立腹する理由であった。
「メロ、逆にお前よく寝てられんなー?」
もう一人の女にそう声をかけたのは荒川聚楽威、ピアスだらけの耳が特徴の求道の拳聖の天職を得た男である。
「ん~、あーし?」
呼ばれた女が眠たそうな顔、薄目を開けて応じる。白に近い金髪と日焼けサロンで焼いた肌が特徴的な葛飾メロであった。天職は至高の聖女、これまた他の三人同様レア中のレアな天職である聖女のさらに上の存在である。
もっとも『聖女じゃなくて性女だ』と早馬車の周りを固める騎兵達は言う。
それと言うのも異世界転移してからメロは男を取っ替え引っ替え楽しんでいた。大司教エピルニンの策で四人の身の回りに美男美女を侍らせたのだがそれにどっぷりとハマったのがメロである。
昨夜も男を引き込んで楽しんでいたのだが、その一人が早馬車の周りを固める騎兵の一人だったという訳だ。その為の寝不足、だから揺れる馬車内でも構わず寝ていられたのだ。
ちなみに楽しんでいるのはメロだけではない。ルキアもジュライもピイナもまた同様、そのあたりは大司教エピルニンの目論見通りであった。四人を色で釣って意のままに操る…それはもう面白いほどに台本通りに進んでいる。
「まあ、ダリぃけどよ~。ゴールまで行きゃあ宝物ってのがあんだろ?」
ルキアが口を開いた。
「らしいよ、新しく見つかったトコに幽霊みたいなんがいるからゴール出来ないってヨハンが言ってた」
「誰だよ、ヨハンって?」
ピイナの言葉にジュライが応じた。
「あー、兵士の人。今は外で馬乗ってる」
どうやらヨハンは外でこの早馬車を守る騎兵の一人のようだ。
「お前…」
ピイナと付き合っているルキアが他の男の名前を出した彼女を一瞬睨んだがすぐにその表情を元のだらしないものに戻した。自分も自分であてがわれた女性に手を出している。それらはまさに美女、ピイナよりはるかにランク高えとルキアは思い直したのだ。
「まー良いか、そこを突破すりゃカネが手に入るんだろ?」
「アクセとかさー」
気を取り直したルキアの発言にメロが乗っかった。
「やっぱカネだろカネ!そーすりゃなんでも買える、エスペラントってなんでも揃う街なんだろ?だったら行くしかねーべ」
金が手に入ったらグランペクトゥにはいなかったタイプの女でもゲットしようかなと考えながらジュライが言った。
「だなー」
「「それなー」」
同意する他三人。早馬車はもうすぐグランペクトゥ近郊に達しようとしていた。
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次回、ミニャに連れられ敏夫達は街を歩く。
第36話『ミニャの涙と獣人街の奇跡』。
お楽しみに。
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