彼と彼女の365日

如月ゆう

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July

7月28日(土) 思いを馳せる者たち②

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 市民体育館。
 それは誰もが利用でき、しかし意外にも個人で使用したことのある人は少ないのでは……とも思われる施設。

 そこに俺は――いや、俺たちは来ていた。

「……けど、いいのか? 監督からは『この土日は大会に向けた泊まり込みの準備と身体を休めるための時間』って言われてんだろ?」

 そんな中、珍しくも僅かに心配した様子を見せるそらは、愛用のラケットとシューズを身に付けた状態で語る。

「今更だな……。なら、『ラケットとシューズを持って市民体育館に集合』って連絡した昨日の段階で指摘しろよ。こうなるって、分かってただろ?」

「…………まぁな」

 けれど、俺が笑って返せば、呆れたようにため息を吐くだけ。

 分かっている。この問答に意味はない。
 そらも本当にそれが気になって尋ねてきたわけではなく、むしろその先――『何でそんな時期に、わざわざ彼一人だけを市民体育館に呼び出してまで、バドミントンをやっているのか』と、そんな疑問含んでいたのだろう。

 ……そう、呼んだのはそら一人。
 倉敷さんには敢えて席を外してもらい、当然詩音さんも呼んでおらず、男二人でシャトルを打つ。

 その不可思議な状況説明を求められていた。

「…………別に大した理由はないさ。ただ何となく、体を動かしたかったんだよ」

 いよいよ始まる全国大会。
 とはいえ、明日は開会式のみの予定なのだけど、それでも俺の心はもうすでに逸っている。

「意外だな。翔真って、そういう時こそ落ち着いているタイプだと思ってたわ」

「俺も、我慢できると自分で思ってたんだけどなぁ……」

 そんな俺を茶化すようにそらは笑い、つられて一緒に肩を竦めた。

 去年はこうではなかったのにな。
 やはり、全国という舞台が人をおかしくするのか。

 それとも――。

「それに、やっぱりそらとも同じ場所で戦いたかったよ」

 唯一の心残りが、俺を動かしたのか。
 真相は誰にも……俺自身でさえ分からない。

「まだ言うのか……。あれは俺も納得済みのことだし、気にしても仕方ないだろ」

「あぁ、分かってる。……悪い」

 そのうっかり漏れた心の声を本人に指摘され、俺は謝った。

 一番悔しい思いをしたであろう本人に話を蒸し返したことを。そして、その結果勝ち上がることとなった国立を軽んじる発言になってしまったことを。

「なら、全国は頑張ってくれよ。勝って、勝ち続けて、それで国立と戦ってやってくれ。紛いなりにもアイツは俺に勝った男なんだからさ」

 ともすれば、そらはそう言ってくれる。
 ネットを挟んだ向こう側で、拳を突き出し、いつもの口の端を吊り上げたニヤりとした笑みを浮かべて。

「……親友の頼みなら、仕方ないな」

「おう、頼んだぜ」

 託された思い。
 でもきっと、それは俺だけではなく、明日集まる誰しもが色々な想いを抱えているのだろう。

 戦いの足音は、すぐそばまで迫っていた。
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