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いったん荷物を部屋に置きにいった徹が、バスルームを使う音が聞こえてくる。日下はリモコンに手を伸ばすと、テレビのチャンネルを変えた。特に興味を引かれるものはやっていなくて、動画配信サービスの中から適当に映画を選び、再生ボタンを押す。
そうこうしている間に、デリバリーのピザが届いた。バイトの青年に代金を支払い、再びソファに横になったところで、力尽きたようにすべてが面倒になった。ピザを食べながら、再び映画を見る。普段徹が好むような難解なものではない、話題のスパイものだ。
「あ、映画を見てる」
風呂から出た徹が自然な仕草で、日下の隣に腰を下ろした。飲むか、と訊ねると、徹はグラスを受け取り、肩にかけたタオルで濡れた髪を拭いた。
「お前がいつも見ているようなやつじゃないぞ。今夜は頭を使わないような単純な映画が見たいんだ」
「別にいいよ。でもこれって頭を使わないっていうよりかは、凝った演出で色々な考察がされている映画だと思うよ」
「そうなのか?」
隣でピザに手を伸ばす徹のために、映画を始めまで戻す。再生ボタンを押すと、映画は再びオープニングから流れた。
「前にこの監督の作品を見たことがあるけど、演出が独特っていうか、一部のファンにはすごく人気があるんだよ」
「へえー。あ、タバスコってあったけ」
もともとそれほど映画が見たかったわけではないので、日下の反応は鈍い。次第に映画の内容に入り込む徹とは逆に、話を追う日下の意識は散漫になってゆく。
「取ってくるよ」
一時ボタンを押して徹が立ち上がり、キッチンからタバスコとガラスの保存容器などを持ってきた。容器の中にはキャロットラペやポテトサラダなどの総菜が入っている。
「きのうの残り物だけど」
皿を受け取り、日下は真っ先にポテトサラダに箸が伸びる。ほのかに塩味が効いていてうまい。
「衛さん、夕べもそればかり食べていたね。前に外で食べた料理を真似して作ってみたんだけど、結構おいしくできたね。実は隠し味にアンチョビが入っているんだ」
「ふうん」
完成した料理はともかく、レシピには全く興味がない日下はさらりと聞き流す。上に乗ったピンクペッパーとローズマリーが洒落ていて、実際に店で出されていてもおかしくない出来映えだ。
ピザを食べ、ワインを飲みながら、徹と取るに足りない話をするのが楽しかった。ワインのボトルが空いたので、新しいボトルをもう一本開けた。最近はまっているイタリア産のオーガニックワインだ。アルコールが入っていることもあり、ここ数日のおかしな緊張が嘘のように、日下はリラックスし、油断しきっていた。いつもより酒を飲むペースが早いことにも気づかなかった。
「衛さん、少し飲み過ぎじゃない?」
と心配した徹に、
「そんなことないからお前も飲め」
とワインを注いだのまでは覚えている。
そうこうしている間に、デリバリーのピザが届いた。バイトの青年に代金を支払い、再びソファに横になったところで、力尽きたようにすべてが面倒になった。ピザを食べながら、再び映画を見る。普段徹が好むような難解なものではない、話題のスパイものだ。
「あ、映画を見てる」
風呂から出た徹が自然な仕草で、日下の隣に腰を下ろした。飲むか、と訊ねると、徹はグラスを受け取り、肩にかけたタオルで濡れた髪を拭いた。
「お前がいつも見ているようなやつじゃないぞ。今夜は頭を使わないような単純な映画が見たいんだ」
「別にいいよ。でもこれって頭を使わないっていうよりかは、凝った演出で色々な考察がされている映画だと思うよ」
「そうなのか?」
隣でピザに手を伸ばす徹のために、映画を始めまで戻す。再生ボタンを押すと、映画は再びオープニングから流れた。
「前にこの監督の作品を見たことがあるけど、演出が独特っていうか、一部のファンにはすごく人気があるんだよ」
「へえー。あ、タバスコってあったけ」
もともとそれほど映画が見たかったわけではないので、日下の反応は鈍い。次第に映画の内容に入り込む徹とは逆に、話を追う日下の意識は散漫になってゆく。
「取ってくるよ」
一時ボタンを押して徹が立ち上がり、キッチンからタバスコとガラスの保存容器などを持ってきた。容器の中にはキャロットラペやポテトサラダなどの総菜が入っている。
「きのうの残り物だけど」
皿を受け取り、日下は真っ先にポテトサラダに箸が伸びる。ほのかに塩味が効いていてうまい。
「衛さん、夕べもそればかり食べていたね。前に外で食べた料理を真似して作ってみたんだけど、結構おいしくできたね。実は隠し味にアンチョビが入っているんだ」
「ふうん」
完成した料理はともかく、レシピには全く興味がない日下はさらりと聞き流す。上に乗ったピンクペッパーとローズマリーが洒落ていて、実際に店で出されていてもおかしくない出来映えだ。
ピザを食べ、ワインを飲みながら、徹と取るに足りない話をするのが楽しかった。ワインのボトルが空いたので、新しいボトルをもう一本開けた。最近はまっているイタリア産のオーガニックワインだ。アルコールが入っていることもあり、ここ数日のおかしな緊張が嘘のように、日下はリラックスし、油断しきっていた。いつもより酒を飲むペースが早いことにも気づかなかった。
「衛さん、少し飲み過ぎじゃない?」
と心配した徹に、
「そんなことないからお前も飲め」
とワインを注いだのまでは覚えている。
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