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魅力的な提案

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少し考え込んでいたアレクシオは、穏やかな目でブリジットを見て言った。

「分かった。ならばお前の自由は保障しよう」

「…どういうこと?」

相手がハロルド(のようなもの)だと分かった以上、ブリジットは完全に砕けた口調になっている。
とても隣国の皇帝陛下と喋っているとは思えない。

「お前が恐れているような、鎖で寝室に繋ぎ止めたりはせぬということだ。自由に笑っておるところも愛しく思っておるからな。我の力の及ぶ範囲でなら好きにしてよい」

「それは…」

非常に魅力的な誘いだった。
隣国はこの国よりも遥かに豊かで、経済も文化も発展している。
しかも王太子に派手に捨てられたブリジットには、この国に残ってもまともな縁談が来るか怪しいのだ。
(一応求婚者はいるが、全員ブリジットの好みではない)

「お前の生がある限り、この世で贅の限りを尽くさせてやろう。そして死の時が来れば、お前の魂を魔界に連れてゆく。どうだ」

「……でも、私あなたのこと好きじゃないわ」

もちろん恋愛対象として、という意味だ。
皇帝アレクシオについてはよく分からないが、ハロルドに関しては自信を持って大好きだと言える。当然、人間として、という意味だが。
そんな気持ちで結婚してよいのだろうか。

「なんだ、そんなことか」

アレクシオが声を立てて笑った。
そしてブリジットに顔を寄せ、愛しげに頬を撫でる。

「それでもよい。お前の愛を得るために懸命にもがくのも面白そうだ。さあ、来い」

「……」

アレクシオから差し出された大きな手に、ブリジットは少しためらう。
しかしアレクシオの顔を見て、手を見て、彼女は決意したように自分の手を差し出した。

「ブリジット、お前に心からの愛を。決して後悔はさせぬ」

強い力で抱きしめられ、ブリジットは小さく頷く。
もしかして、もう、少しだけ惹かれ始めているのかもしれないと思った。
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