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第十八話 披露会②

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「ふぅただいま~」

 するとさっきなぜか外に出ていった滝下が帰ってきた。那須君が何をしていたのか聞くとニヤと笑い「内緒」と一言だけ言った。
 このときほぼすべての人間が「あ~ジルバルさんにでも槍に変更すると言いに行ったんだろうな」と心の中で思った。
 次に弓使いの馬場さんの番になった。俺は馬場さんのスキルには密かに興味があり、誰も気づけなかったオオムカデの接近にいち早く気づけたことが知りたかったのだ。その馬場さんのスキルは

『固有スキル』
『風の囁き』周囲の状況を教えてくれる
「コモンスキル」
『遠的Ⅱ』遠くにいる敵に当たりやすくなる
『千里眼Ⅰ』遠くのものが見える

という構成だった。俺が気になっていた探知系スキルは恐らく『風の囁き』なのだろう。あれは周囲の音を聞いていたのではなく、風が教えてくれている状況を聞き取っていたのか。
 そしてコモンスキルも弓使いのらしいいい構成だと思った。何よりこのままレベルを上げていけば長距離からの正確射撃も夢じゃない。そのことを言ってみると馬場さんは少し嫌な顔をして

「この千里眼ってスキル便利なんだけど使うと目がいたくなるんだよね」

 原因はよくわからないが、もしかしたら魔力で無理やり視力を上げているから目がいたくなるのかもしてない。レベルが上がるにつれ慣れればクラス一の後衛となりえるポテンシャルがある。

 そして僧侶の関城さんの番である。彼女とは第一回目で同じパーティーにおり、俺が初めて怒鳴りつけてしまった人でもある。案外長いこと戦っているがしゃべったことはほとんどない。
 俺はこの際だから謝っておこうと考えた。

「関城さんかなり遅くなったけどあの時はごめん」

俺が何の脈絡もなく謝ってきたことに驚き事情を話すと関城さんはケラケラと笑い出し

「あんたそんなこと気にしてたの?いいよ、別に。あの時あんたが『水をかけろ』って強く言わなきゃ私たち、あの時に全滅してたかもしれないんだからさ」

 思っていた以上にあっさり許された。関城さん自身はそのことをまったく気にしてはおらず、むしろ仕返しだと勘違いして悪かったと謝ってくれた。
 だが俺としては胸のつかえが取れた感覚だった。
 さて関城さんのスキル構成だがこちらも中々いいスキルが集まっていた。

「固有スキル」
『祝福』回復量が増える
『光の加護』状態異常にかかりにくくなる
「コモンスキル」
『節約Ⅱ』
『持続時間上昇Ⅰ』バフの効果時間が増える

の四つだった。僧侶らしい構成となっていた。回復やバフを得意とする僧侶にとってMPの枯渇は死活問題。それを理解し『節約』にスキルポイントを振っているのはさすがだと思った。
 
 さて次は稲荷さんお待ちかねの東方さんの番となった。俺も東方さんのあの実力はスキルによるものなのか日々の研鑽によるものなのか、気にはなっていた。
 スキル開示と同時に周りからは驚きの声が上がっていた。

「固有スキル」
『共鳴』複数の属性を使う時威力が上がる
『連撃』
「コモンスキル」
『節約Ⅱ』
『赤の魔法書Ⅰ』炎魔法の威力が上がる
『黄の魔法書Ⅰ』土魔法の威力が上がる

の五つだった。東方さんのスキル構成はこう言ってはいけないのは分かっているのだがキャラじゃないだった。
 俺の中で東方さんは正確無比な魔法で敵を倒していく。そんなイメージだった。
 がスキルはガチガチの威力重視脳筋魔法使いのスキル構成だった。
 そんな中一番驚いていたのはやはり稲荷さんだった。スキルを見てはニコニコ穏やかに笑っている東方さんの顔を見ている。

「なんかうち、東方さんの裏の顔見たようで怖いんだけど」

 確かに穏やかな東方さんからは想像できないごり押し構成。だがここで一つ気になったことがある。

「じゃあ東方さんのあの魔力コントロールは天賦の才能なのかな」

 俺の一言に稲荷さんが食いついた。東方さんに訓練やり方などを聞いている。東方さんも圧に負けて日ごろやっている訓練というか遊びを教えてくれた。
 それは泥人形遊びだった。土に魔力を流し込み人型に固め踊って見せた。
 これは魔法使いにしか難しさは分からないが、刻印魔法の勉強をしていた俺はこの異常さが理解できた。
 まず物質には魔力伝導性と呼ばれるものが存在する。これは日本で言うところの魔力を電気として電気を通しやすい物質と通しにくい物質があるのと同様にこの世界では魔力が通りやすい物質と通りにくい物質がある。
 土はその中で特に流れにくいものである。それを土人形にして自由自在に動かすのはいくら土魔法に適性があっても容易にできることではない。
 稲荷さんや桐山など魔法が使える人が東方さんのマネをして自身の得意属性で人形を作ろうとするがうまく形が整形できずグニャグニャにゆがんでいる。
 一方東方さんは炎でも人形を形成しダンスさせている。ちゃっかり二属性同時発動をしていた。
 しばらく遊んだ後今度は俺の番になった。皆が期待に胸を膨らませていた。

「固有スキル」
『武器性能』 『適当』
「コモンスキル」
『交渉術Ⅰ』 『調合Ⅱ』 『アイテムボックスⅡ』
『性能アップⅠ』

と俺のスキルは以前と変わっていない。それを見た反応は一貫して疑いの目を見せている。そもそも生産職の俺に攻撃系のスキルなんて存在しない。
 今まで頑なに見せたくなかったのは『アイテムボックスⅡ』を知られ荷物持ちとしていいように使われるのが嫌だったからだ。

「お前こんなスキルでどうやって桐山に勝ったんだよ」

 那須君から指摘が飛んでくる。だが俺はこれに関する答えは「たまたま」以外で答えることが出来ない。あの時は桐山もスキルを使っていなかったから勝てたようなものだ。

「俺が知りたかったのはこの『アイテムボックスⅡ』ってやつだ。これからこの盾を出したのか?」

 言い出しっぺの滝下が聞いてきた。俺は滝下から盾を受け取り、アイテムボックスを発動させた。すると空間に黒い穴が開きそこに盾をしまった。
 滝下からはすげーと賞賛の言葉。他のメンバーも褒めてくれる。だが桐山だけは顎に手を当てさっきからずっと考えこんでいる。イケメンは考え込んでいる姿も絵になる。
 そして遂に我らが勇者様の番が来た。こいつのスキルは知っておきたいと思っていた。

「固有スキル」
『絶対耐性』状態異常が効かない
『不屈の精神』常に防御力が上がり続ける
「コモンスキル」
『見切りⅡ』
『成長Ⅱ』経験値を6/5倍する
『節約Ⅱ』

の五つだった。全体的に防御面に振っているのは意外だったが何よりコモンスキルのレベルが高い。特に『成長』というスキルが強すぎる。経験値が人より多くもらえるってことはその分強くなるのが早くなる。
 勇者としてまずは死なずに効率よく強くなるのが桐山のスタンスみたいだ。

「攻撃に振ることも考えたけどまずは安定してレベルを上げるのが重要だと思って組んだんだ」

 これによりパーティー内というより現在それぞれの分野でトップの人間のスキルが共有された。
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