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第二十六話 それぞれの祭り
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俺は今雅人の自室で雅人と滝下一緒にいる。
「どうして僕の部屋に君たちがいるんだよ」
この状況に雅人も困惑しており、滝下に説明を求めている。滝下はと言うと懲りずに瓶を片手に一人出来上がっていた。
「そりゃあもちろんお前らの祭りがどうだったかを聞きに集まったに決まってんだろが!」
口からはかなり強い酒の匂いと辛うじて聞き取れるほどの呂律。俺と雅人はこいつが潰れるまでもう少しだと踏み話を合わせることにした。
それから二十分後、気が付けば俺も雅人も滝下に酒を分けてもらい、随分と酔っていた。
「聞いてくれよ。俺頑張ったんだよ。いろんな人に監視されながら王女をエスコートした。なのになのに・・・・」
雅人は酒が入ると泣き上戸になるのか普段見せないような泣き顔を晒している。話を聞くとそれはもう大変な一日だったらしく何よりほかのクラスの女子に手を焼いたそうだ。
デートは常に監視され、気が付けばクラスの女子が雅人の前に立ちはだかり告白されたとのこと。
これにはクラスメイト含め王女様もびっくり。周囲の人間は彼女持ちの男に他の女が告白。酒の肴としては十分においしい話だ。
祭りで周囲には大勢の人がおり、話は広がりしまいには周囲を完全に取り囲まれてしまった。こうなると逃げることもはぐらかすことも出来ず、結果として断るしか方法はなかったとのこと。
それは泣きたくもなりますわ。
クラスの人気者として今までどっちつかずの態度を維持した報いとも言いたいが、それにしてもタイミングが悪い。
仕方がないので泣いている雅人の背中を摩る。ヒクッヒクッと未だに泣き続けている雅人を尻目に滝下が自分の祭りの報告を始めた。
「それがさぁ~吉田ッチが無茶苦茶可愛かったのよ」
開幕惚気から始まった滝下の話は終始吉田先生が可愛かったという話だった。
というかそれよりこいつ吉田先生と祭りに行っていたのか。
屋台の串焼きを頬張る吉田先生。飲み物をこぼした吉田先生などなど延々と話題が尽きない。俺や雅人などここにきて滝下と長いこと一緒に居て気が付いたことがある。それは恐らく滝下は吉田先生のことが好きだということだ。
一度それらしく聞いてみたのだが滝下の返答は
「三十路にもなって男っ気の無い吉田ッチが可哀想だから構ってるだけ」
と多くの女性を敵に回しそうな発言をしてはぐらかしていたが、今の滝下は好きな女の子を自慢げに話しているようにしか見えない。
すると饒舌に話していた滝下の声が止まる。急に座り出し真っ直ぐ俺たちの方を見つめる。
大きく深呼吸をして
「ここにいるお前らだから言うが、俺は吉田ッチが千佳のことが好きだ」
まさかのカミングアウトに雅人は泣くのをやめて滝下を見る。滝下は顔を真っ赤にしているが隠すことはなくしっかりと俺たちのことを見ている。
酒の勢いとは言えはっきり好きだというのはなかなか勇気がいることだ。それは男の前であっても同じこと。
しかも相手は十歳以上年の離れた女性だ。周りになんて言われるかを考えると俺だって言い出しづらい。
「滝下君が吉田先生だけを愛せると思えるなら僕はいいと思うよ」
さっきまで泣いていた雅人が真剣な顔で問いかけるように言う。実体験があるからか重みがある。
「最後に決めるのは滝下君だからね」
この言葉はなんだか聞き覚えがあるような感じがしたが滝下の覚悟は決まっているのか頷いている。
「ここまで言ったからよ、恥を忍んで雅人ッチと雄二ッチにお願いがある」
そのお願いとは自分を強くしてほしいととのことだった。俺たちの決闘後、滝下は明らかに訓練に対し前以上に熱心に取り組んでいる。そのおかげか使い始めたばかりの槍も十分に扱えている。教えてほしいことは付魔(エンチャント)が基本で後は模擬戦をやってほしいそうだ。
もちろん俺と雅人も了承した。そして最後俺の話になった。と言っても語ることはほどんどないようなものだと言いたいところだが、俺には今回の祭りで今まで一番と言っていいほど大きな問題が出来てしまった。
「つまり眼鏡や三つ編みをやめた東方ちゃんが可愛かったと?」
滝下の質問に俺は首を縦に振る。そして酒の所為で言わなくてもいいことまで滑らせてしまった。
「可愛いというか俺の好みドストライクなんだよ。長い黒髪に綺麗な目。それに胸も大きいし」
その言葉に雅人も滝下も驚いたような表情を見せる。どうやら彼らは俺が恋心をどこかで失くしてしまっており、性欲なんかと無関係の男だと思っていたらしい。
もちろん無差別に欲情するわけではない。俺はどうやら特定の人物にしかそういう感情を抱けない。
「雄二ッチは巨乳清楚系が好きなんだな」
その言葉に一瞬殺意が湧く。無意識に滝下を睨む。その顔に滝下は怯み俺と距離を取る。
「ご、ごめん」
俺は自分が無意識に滝下を睨んでいたことに驚き顔をもとに戻す。一連のやり取りを見ていた雅人はクスクスと笑い
「やっと雄二の人間らしい部分を見たような気がするよ」
なんて意味の分からないことを言っている。
俺はかなり人間らしいと思うが、どこが人間らしくないのだろうか。
雅人の言葉に滝下も賛同する。それから俺たちは日が昇る時間まで延々と語り合った。
「どうして僕の部屋に君たちがいるんだよ」
この状況に雅人も困惑しており、滝下に説明を求めている。滝下はと言うと懲りずに瓶を片手に一人出来上がっていた。
「そりゃあもちろんお前らの祭りがどうだったかを聞きに集まったに決まってんだろが!」
口からはかなり強い酒の匂いと辛うじて聞き取れるほどの呂律。俺と雅人はこいつが潰れるまでもう少しだと踏み話を合わせることにした。
それから二十分後、気が付けば俺も雅人も滝下に酒を分けてもらい、随分と酔っていた。
「聞いてくれよ。俺頑張ったんだよ。いろんな人に監視されながら王女をエスコートした。なのになのに・・・・」
雅人は酒が入ると泣き上戸になるのか普段見せないような泣き顔を晒している。話を聞くとそれはもう大変な一日だったらしく何よりほかのクラスの女子に手を焼いたそうだ。
デートは常に監視され、気が付けばクラスの女子が雅人の前に立ちはだかり告白されたとのこと。
これにはクラスメイト含め王女様もびっくり。周囲の人間は彼女持ちの男に他の女が告白。酒の肴としては十分においしい話だ。
祭りで周囲には大勢の人がおり、話は広がりしまいには周囲を完全に取り囲まれてしまった。こうなると逃げることもはぐらかすことも出来ず、結果として断るしか方法はなかったとのこと。
それは泣きたくもなりますわ。
クラスの人気者として今までどっちつかずの態度を維持した報いとも言いたいが、それにしてもタイミングが悪い。
仕方がないので泣いている雅人の背中を摩る。ヒクッヒクッと未だに泣き続けている雅人を尻目に滝下が自分の祭りの報告を始めた。
「それがさぁ~吉田ッチが無茶苦茶可愛かったのよ」
開幕惚気から始まった滝下の話は終始吉田先生が可愛かったという話だった。
というかそれよりこいつ吉田先生と祭りに行っていたのか。
屋台の串焼きを頬張る吉田先生。飲み物をこぼした吉田先生などなど延々と話題が尽きない。俺や雅人などここにきて滝下と長いこと一緒に居て気が付いたことがある。それは恐らく滝下は吉田先生のことが好きだということだ。
一度それらしく聞いてみたのだが滝下の返答は
「三十路にもなって男っ気の無い吉田ッチが可哀想だから構ってるだけ」
と多くの女性を敵に回しそうな発言をしてはぐらかしていたが、今の滝下は好きな女の子を自慢げに話しているようにしか見えない。
すると饒舌に話していた滝下の声が止まる。急に座り出し真っ直ぐ俺たちの方を見つめる。
大きく深呼吸をして
「ここにいるお前らだから言うが、俺は吉田ッチが千佳のことが好きだ」
まさかのカミングアウトに雅人は泣くのをやめて滝下を見る。滝下は顔を真っ赤にしているが隠すことはなくしっかりと俺たちのことを見ている。
酒の勢いとは言えはっきり好きだというのはなかなか勇気がいることだ。それは男の前であっても同じこと。
しかも相手は十歳以上年の離れた女性だ。周りになんて言われるかを考えると俺だって言い出しづらい。
「滝下君が吉田先生だけを愛せると思えるなら僕はいいと思うよ」
さっきまで泣いていた雅人が真剣な顔で問いかけるように言う。実体験があるからか重みがある。
「最後に決めるのは滝下君だからね」
この言葉はなんだか聞き覚えがあるような感じがしたが滝下の覚悟は決まっているのか頷いている。
「ここまで言ったからよ、恥を忍んで雅人ッチと雄二ッチにお願いがある」
そのお願いとは自分を強くしてほしいととのことだった。俺たちの決闘後、滝下は明らかに訓練に対し前以上に熱心に取り組んでいる。そのおかげか使い始めたばかりの槍も十分に扱えている。教えてほしいことは付魔(エンチャント)が基本で後は模擬戦をやってほしいそうだ。
もちろん俺と雅人も了承した。そして最後俺の話になった。と言っても語ることはほどんどないようなものだと言いたいところだが、俺には今回の祭りで今まで一番と言っていいほど大きな問題が出来てしまった。
「つまり眼鏡や三つ編みをやめた東方ちゃんが可愛かったと?」
滝下の質問に俺は首を縦に振る。そして酒の所為で言わなくてもいいことまで滑らせてしまった。
「可愛いというか俺の好みドストライクなんだよ。長い黒髪に綺麗な目。それに胸も大きいし」
その言葉に雅人も滝下も驚いたような表情を見せる。どうやら彼らは俺が恋心をどこかで失くしてしまっており、性欲なんかと無関係の男だと思っていたらしい。
もちろん無差別に欲情するわけではない。俺はどうやら特定の人物にしかそういう感情を抱けない。
「雄二ッチは巨乳清楚系が好きなんだな」
その言葉に一瞬殺意が湧く。無意識に滝下を睨む。その顔に滝下は怯み俺と距離を取る。
「ご、ごめん」
俺は自分が無意識に滝下を睨んでいたことに驚き顔をもとに戻す。一連のやり取りを見ていた雅人はクスクスと笑い
「やっと雄二の人間らしい部分を見たような気がするよ」
なんて意味の分からないことを言っている。
俺はかなり人間らしいと思うが、どこが人間らしくないのだろうか。
雅人の言葉に滝下も賛同する。それから俺たちは日が昇る時間まで延々と語り合った。
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