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14:囚われて※
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「な、なに・・・言ってるんだよ」
誰かがいる前で、そんな言葉を口にするなんて。一体、どういうつもりなのか。以前、自分が口にした言葉を真似したのか。
(なんだよ、それ・・・)
嬉しいけれども、猛烈に恥ずかしくもあって。頬がカッカッと赤らむのを自覚しながら、チラリと上目遣いに見つめる。と――
(ふざけてはいない・・・)
見下ろす顔は、どちらかと言うと至って、真面目な表情をしている。本気なのだ。
(もう・・・)
顔どころか身体全身が熱くなりそうで。下を向きながら、モゾモゾと。毛布から腕だけでも出そうと身を捩ると、バッと外套が取り払われた。
「と、とにかく・・・時間かけずに・・・済ませてくるから・・・戻りたかったら、先に・・・帰ってていいから」
「なにかあったら、すぐにオレを呼べ。いいな」
「う、うん・・・わかった」
意思を変えそうにない相手に、クルリと背中を向けて。裾を極力引きずらないように持ち上げながら、岩戸に向かってオタオタと歩き出す。
「ケール、ついて行け」
「ワフッ!!」
用命を受けた小型の魔獣が足下へと躍り出て、従僕たちが猫の頭を下げたままの状態で尋ねてくる。
「そちらの岩壁に手を付いて、横にお開け下さい。私どもも中に入って、介添えいたしましょうか?」
「いや、いい。大丈夫だ」
この状態の裸を見られたくはないが、その提案は元より。背後に立っている者がまずは許さないだろう。
スォンッ・・・・・・スーーーッ・・・・・・
触れた途端に、柔らかい光を発した岩の扉が。横に押すと、難なく一人分が入れるほどの隙間で開いた。
中をのぞいてみる。と薄暗い中、奥に青白い光が見えた。
「そのお姿で泉に入られても問題ございません。大半は浄化の炎で焼き尽くされます。ですので、大切なモノはお外し下さい」
「沐浴が終わられましたら、傍らにある鈴を鳴らして頂ければ、お着替えを中にお入れします」
「わかった・・・・・・行ってくる」
説明に同意した後、腕を組んで、じっと見守っているアトラスに告げて、踏み入れる。その傍らをケールがすぐさま、ターッと走り抜けた。途端に、
スーーーッ・・・・・・
と岩が閉じられた。
(あれは・・・)
中に入って。複数の平たい皿が重なるかのように、幅広い大理石が段差になって敷き詰められている床を。ヒタヒタと歩いて行くと、ボォッと浮かび上がる泉が見えてくる。
一見、小さな地底湖があるようにも見える光景だが、実際は―――炎だ。
「クゥ・・・クゥ・・・」
自分の魔炎よりも遙かに強く、メラメラと燃え上がる原始的な焔に。ケールがおそるおそる前足を出しては引っ込める。
「ケール、大丈夫だ。確かめなくていい」
火の海と化している表面から、炎がボワンッと吹き出すとともに空中に放たれる気は。青白く澄みきっていて、不快とは真逆だ。安全性を疑う必要はない。
そのまま、スッと足を入れると、まるで水のように。タプンと炎が波打った。中に進んで、身を沈めていく。
「はあぁぁ・・・」
と、つい感極まる声が出た。心地がよくて。
「あっ・・・」
誰かがいる前で、そんな言葉を口にするなんて。一体、どういうつもりなのか。以前、自分が口にした言葉を真似したのか。
(なんだよ、それ・・・)
嬉しいけれども、猛烈に恥ずかしくもあって。頬がカッカッと赤らむのを自覚しながら、チラリと上目遣いに見つめる。と――
(ふざけてはいない・・・)
見下ろす顔は、どちらかと言うと至って、真面目な表情をしている。本気なのだ。
(もう・・・)
顔どころか身体全身が熱くなりそうで。下を向きながら、モゾモゾと。毛布から腕だけでも出そうと身を捩ると、バッと外套が取り払われた。
「と、とにかく・・・時間かけずに・・・済ませてくるから・・・戻りたかったら、先に・・・帰ってていいから」
「なにかあったら、すぐにオレを呼べ。いいな」
「う、うん・・・わかった」
意思を変えそうにない相手に、クルリと背中を向けて。裾を極力引きずらないように持ち上げながら、岩戸に向かってオタオタと歩き出す。
「ケール、ついて行け」
「ワフッ!!」
用命を受けた小型の魔獣が足下へと躍り出て、従僕たちが猫の頭を下げたままの状態で尋ねてくる。
「そちらの岩壁に手を付いて、横にお開け下さい。私どもも中に入って、介添えいたしましょうか?」
「いや、いい。大丈夫だ」
この状態の裸を見られたくはないが、その提案は元より。背後に立っている者がまずは許さないだろう。
スォンッ・・・・・・スーーーッ・・・・・・
触れた途端に、柔らかい光を発した岩の扉が。横に押すと、難なく一人分が入れるほどの隙間で開いた。
中をのぞいてみる。と薄暗い中、奥に青白い光が見えた。
「そのお姿で泉に入られても問題ございません。大半は浄化の炎で焼き尽くされます。ですので、大切なモノはお外し下さい」
「沐浴が終わられましたら、傍らにある鈴を鳴らして頂ければ、お着替えを中にお入れします」
「わかった・・・・・・行ってくる」
説明に同意した後、腕を組んで、じっと見守っているアトラスに告げて、踏み入れる。その傍らをケールがすぐさま、ターッと走り抜けた。途端に、
スーーーッ・・・・・・
と岩が閉じられた。
(あれは・・・)
中に入って。複数の平たい皿が重なるかのように、幅広い大理石が段差になって敷き詰められている床を。ヒタヒタと歩いて行くと、ボォッと浮かび上がる泉が見えてくる。
一見、小さな地底湖があるようにも見える光景だが、実際は―――炎だ。
「クゥ・・・クゥ・・・」
自分の魔炎よりも遙かに強く、メラメラと燃え上がる原始的な焔に。ケールがおそるおそる前足を出しては引っ込める。
「ケール、大丈夫だ。確かめなくていい」
火の海と化している表面から、炎がボワンッと吹き出すとともに空中に放たれる気は。青白く澄みきっていて、不快とは真逆だ。安全性を疑う必要はない。
そのまま、スッと足を入れると、まるで水のように。タプンと炎が波打った。中に進んで、身を沈めていく。
「はあぁぁ・・・」
と、つい感極まる声が出た。心地がよくて。
「あっ・・・」
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