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2章:逃げちゃいました~呪われたカエルの王さまヘーゼル・ナッツイリアル・フォート・ブルルボン~
もうダメだ…
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「これ、よかったら…もらって下さい…ケロ」
と鍬を背中から外して差し出した。
「ええっ!?」
「とてもお世話になりましたから…ケロ」
君主主催の園遊会を無下にして咎人になった自分にはよくて監獄行き、最悪の場合は断頭台が待っているのだ。
もう使うことはない。
だから、どうか受け取って欲しい。
「なにを言ってんだよ、あんた!!
鍬はあんたの商売道具…っていうか、それこそ聖具の域だろ。
農具は農民の命って言ってたじゃねぇか」
「でも、せめてものお礼なので…受け取って欲しいです…ケロ」
「いらねぇって、そんな!!
だいたいオレ、そんなたいしたことしてねぇし!!」
「大切に使ってくれたら嬉しいです…ケロ」
「いやいやいや、だから気持ちだけでいいって!!」
「ヘケロ殿…」
むすっと黙ってやり取りを見ていた巨漢が口を開いた。
「大切な鍬を手放す必要はございません。
この者の行いは精査され、賞賛されるべき功績が認められた場合は我らが王より直々に褒賞が与えられましょう。
ご心配は要りません。
さ、鍬は私がお預かりしましょう」
「えっ…いえ、さ、触らないで…ケロ」
ぬっと大きな手を出されて咄嗟に握りしめた。
「農具は農民の命です…ケロ」
「これは失礼しました」
「うん、そうだよ。
それはちゃんとあんたが持っていた方がいい。
大切な物なんだから、な?」
ポンポンと肩を軽くギュッテに叩かれた。
「じゃ、オレ、行くな。
どっかでまた必ず会おう、な?」
希望を感じさせてくれる眼差しと言葉だ。
じわっと目頭が熱くなった。
うんと頷くと「絶対だぞ」と笑顔で手を振られた。
(あぁ…)
あの馬車に心の底から乗りたかったとガラガラと旅立っていく駅馬車を涙目で見送る。
「ユラーク団長、宿を一つ貸し切りにしました。
少し歩きますが、小川が近くに流れていて静かで最適かと」
「ん、案内しろ。
では、ヘケロ殿、行きましょう」
ユラーク団長と呼ばれた男が手で方向を示した途端にバサッと大烏がその肩に舞い降りた。
「ッ!!」
ビクッと跳ね上がると「イーソ、空を飛んでろ」とユラークが命ずる。
カァーとすねたように軽く鳴いた後、バサバサバサと飛び立っていった。
「驚かせてしまい、すみませんでした。
さぁ、こちらです」
ゆったりと大股で歩き出した岩のような背中の後をトテトテトテ…と従う。
(どうして、こんなことになったのだろうか…)
いや、自分が水掻きをして大砲の弾のように逃げたからに相違はないが。
(あぁ…)
これからどんな展開が待ち受けているのだろうか。
罪人の基本的人権は尊重されているようにも感じるが、これもこの先ずっと続くとは限らない。
自分が意図的に逃げたとバレたら、それこそどうなるのか。
(なんて言い訳をしよう…)
幸いなことに今のところ予期せぬ水流に巻きこまれたと理解されているようだ。
だが、ただ水流に巻きこまれただけではこれほどまで遠くに着いてはいないはずなのだ。
その矛盾を突かれて、地上をどうやって移動したかを事細かに尋ねられるのは間違いない。
(思いつかない…)
どんな弁解をしようかと考えても。
そもそも流されたのだとしても、どうしてたどり着いた土地から王都に戻らなかったのか。
そう聞かれたら、もうおしまいだ。
(もうダメだ…)
王の園遊会をないがしろにしたのだ。
もはや不敬罪は確定だ。
と鍬を背中から外して差し出した。
「ええっ!?」
「とてもお世話になりましたから…ケロ」
君主主催の園遊会を無下にして咎人になった自分にはよくて監獄行き、最悪の場合は断頭台が待っているのだ。
もう使うことはない。
だから、どうか受け取って欲しい。
「なにを言ってんだよ、あんた!!
鍬はあんたの商売道具…っていうか、それこそ聖具の域だろ。
農具は農民の命って言ってたじゃねぇか」
「でも、せめてものお礼なので…受け取って欲しいです…ケロ」
「いらねぇって、そんな!!
だいたいオレ、そんなたいしたことしてねぇし!!」
「大切に使ってくれたら嬉しいです…ケロ」
「いやいやいや、だから気持ちだけでいいって!!」
「ヘケロ殿…」
むすっと黙ってやり取りを見ていた巨漢が口を開いた。
「大切な鍬を手放す必要はございません。
この者の行いは精査され、賞賛されるべき功績が認められた場合は我らが王より直々に褒賞が与えられましょう。
ご心配は要りません。
さ、鍬は私がお預かりしましょう」
「えっ…いえ、さ、触らないで…ケロ」
ぬっと大きな手を出されて咄嗟に握りしめた。
「農具は農民の命です…ケロ」
「これは失礼しました」
「うん、そうだよ。
それはちゃんとあんたが持っていた方がいい。
大切な物なんだから、な?」
ポンポンと肩を軽くギュッテに叩かれた。
「じゃ、オレ、行くな。
どっかでまた必ず会おう、な?」
希望を感じさせてくれる眼差しと言葉だ。
じわっと目頭が熱くなった。
うんと頷くと「絶対だぞ」と笑顔で手を振られた。
(あぁ…)
あの馬車に心の底から乗りたかったとガラガラと旅立っていく駅馬車を涙目で見送る。
「ユラーク団長、宿を一つ貸し切りにしました。
少し歩きますが、小川が近くに流れていて静かで最適かと」
「ん、案内しろ。
では、ヘケロ殿、行きましょう」
ユラーク団長と呼ばれた男が手で方向を示した途端にバサッと大烏がその肩に舞い降りた。
「ッ!!」
ビクッと跳ね上がると「イーソ、空を飛んでろ」とユラークが命ずる。
カァーとすねたように軽く鳴いた後、バサバサバサと飛び立っていった。
「驚かせてしまい、すみませんでした。
さぁ、こちらです」
ゆったりと大股で歩き出した岩のような背中の後をトテトテトテ…と従う。
(どうして、こんなことになったのだろうか…)
いや、自分が水掻きをして大砲の弾のように逃げたからに相違はないが。
(あぁ…)
これからどんな展開が待ち受けているのだろうか。
罪人の基本的人権は尊重されているようにも感じるが、これもこの先ずっと続くとは限らない。
自分が意図的に逃げたとバレたら、それこそどうなるのか。
(なんて言い訳をしよう…)
幸いなことに今のところ予期せぬ水流に巻きこまれたと理解されているようだ。
だが、ただ水流に巻きこまれただけではこれほどまで遠くに着いてはいないはずなのだ。
その矛盾を突かれて、地上をどうやって移動したかを事細かに尋ねられるのは間違いない。
(思いつかない…)
どんな弁解をしようかと考えても。
そもそも流されたのだとしても、どうしてたどり着いた土地から王都に戻らなかったのか。
そう聞かれたら、もうおしまいだ。
(もうダメだ…)
王の園遊会をないがしろにしたのだ。
もはや不敬罪は確定だ。
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