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chapter two

17.子供と騎士

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毒を飲み込むのを見てエリスが少し目を見開く

たが、直ぐに表情を戻す

「あはは、本当に飲みやがったな
どうだ、感想は?」

「苦味もなく果実の風味がして飲みやすいですね」 

毒を煽った者の感想ではない

「まあ、即効性のあるものじゃないしすぐにどうこうってわけじゃないからな」

もとより効果を聴きたかったわけではないのでエリスに気にした様子はない

「取り敢えず今回は、これ以上用はないし行ってもいいぜ」

毒を飲ませて満足したらしい

ミリアも特に用事もないので静かにお辞儀をして退室した



時は遡り、ミリアとエリスが危なげな会話をしている頃

アベルの執務室では、書類を片付ける隣で買い出しから帰ったナキアがくつろいでいた

「おい、アベルそんなに気になるくらいなら様子見てきたらどうだ?」

「…なんのことだ」

集中していた書類から視線を外してナキアを睨む

「さっきから扉の方チラチラきにしてたろ?」

「気のせいだ」

「はっきり、あの野郎がミリアに何かしないか心配っていやーいいのに」

「心配などしていない」

ふたりの会話にしては、珍しくナキアの方が優勢のようだ

アベルは、頑として認めないだろうが

「相変わらず頑なだなぁ
ちょっとは、優しくしないとミリアに嫌われちまうぜ?」

するとアベルの怒気が一層強まる

「そんな怒んなって
事実それでここを辞めた奴もいたろ
ミリアにも逃げられるぞ」

「ふん、余計なお世話だ
それに、彼奴が俺のそばを離れることはありえない」

何故ならあの夜約束したのだから

と心で付け足す

あんな寝る前の戯言のような

子供が寝る前に駄々をこねたようなものだ

根拠があるわけではない

ただ、あの日、あの夜

彼女が見せた柔らかい笑顔と真っ直ぐな瞳が

彼女の言葉に嘘偽りはないと

そう、思わせた

「…なあ、アベル
ミリアはいい奴だ」

その言葉にアベルは、いきなりなんだという表情になる

「仕事ができて、気が利いて、迷惑かけても笑顔で許してくれる」

「何が言いたい」

唐突にミリアを褒めだしたナキアを不審そうに見る

「でもな、信用し過ぎるなよ」

その言葉にアベルは、眉をひそめる

「別に信用などしていない
貴様の戯言に付き合っている暇などない」

そう言ってまた書類とにらめっこを始めてしまった

ナキアは、アベルに聞こえない程小さな声で呟いた

「戯言で済めばいいと思っている俺も大概だがな」

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