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chapter three

30.掴んだのは、悪魔の手

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翌日の朝

カイルとソラは急いであの貴族の元へ向かった

初めて入るが村の近くに住んでいたため居場所は知っている

門番に訝しむ顔をされたがこの家の主人にようがあると押し通った

もしかしたら子供のため何かあるとは思わなかったのかもしれない

入った家の内は、どこかぴりぴりした空気が流れていた

「おい!オレ達に渡した睡眠薬が毒ってのは、本当か」

「兄さん…ストレートすぎ」

こうして先走ってしまうのはカイルの悪い癖だが話が早く進むのでありがたくもある

「睡眠薬?ああ、貴様らはあのガキどもか
ふん、今更気付いたのか」

「なんだと!」

以前とは、まったく違う態度とミリアの言っていたことが事実なのに戸惑う

「気まぐれに利用してやろうと思ったがなんの役にもたたなかったな
もう、貴様らのような役立たずの平民などにようはない
さっさとでていけ」

「てめぇ!」

「…兄さん」

怒りに任せてその貴族を殴ろうとするカイルをソラが止める

「なんで!」

「…母さんはどうなるの」

床に伏せる母

それを唯一助けられる手段は、彼からしか知らない

「あの女か
利用するために高価な毒を使ったがあれも無駄だったな」

その言葉にふたりは目を見開く

「母さんは病気じゃなかったのか!?」

母が苦しんだ原因はすべてこいつらにあった

そんなことも知らずそいつらの言いなりになっていたことに悔しさが滲む

「あの毒は、メリストという国一の科学者が作ったものだ、解毒剤もない
まったく大損だよ」

「…!!」

「…兄さん行くよ」

ソラは、今にも飛びかかりそうなカイルを無理矢理引張て屋敷の外に連れ出す

遠くまで離れたところで掴んでいた手を離す

「ソラ!!なんで」

「…お姉ちゃんに会いに行こう」

唐突にソラの言い出したことにカイルは困惑する

「確かに、あいつには謝りに行かなきゃいけないけど
今は、そんな場合じゃ…」

「…違う、ボク達はお願いに行く」

ソラが着ていた服の裾をギュッと握る

「卑怯だけど他に頼る人いない…」

「どういうことだ?」

「あの人メリストって人から薬買ったて言ってた
…お姉ちゃんも、メリストって人知ってた」

確かにミリアは、いった

「その人ならなんとかできるかも」

それがどんなに都合のいい話かはわかってる

でも、それでも大切な人の手をもう二度と離す気は無かった
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