テイムズワールド

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シェルバーグ

交渉してみた

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 さっきまでいた森を抜けると木々がまばらに生えている。ユニに揺られて(気分的に)街道を進む。神眼ジャッジで眺めるといろんな物が見つかった。

【ヒール草】
 回復薬の素になる植物。魔力のある土地にはよく生えているので見つけやすい。Eランク

【笑い筍】
 食べるとハッピーな気分になれるたけのこ。食べ過ぎると元に戻れなくなる中毒性あり。Dランク

【ゴムバンド蔓】
 巻くと包帯の代わりに使える蔓。回復薬があるのであまり需要はない。Eランク

【フンコロガシの宝玉】
 貴族が欲しがる珍しい宝石。フンコロガシが動物の糞を丸めながら自分の魔力を注いで作る。ᗷランク

【ドストレントの二の腕】
 出会うものを恐喝してから襲う木の魔物。襲う前に恐喝するので気付きやすく討伐されやすい。Dランク
 
 【カランコロンヤシの実】
 青い内は赤子をあやす玩具で茶色くなると食べられる実。Eランク
 
 【グリーンラクーンの牙】
 景色にとけ込んだり動物に変化したりして成りすます狸の魔物の牙。臆病な正確なので、見つかると逃げ隠れする。Eランク

 出会う物が珍しくて見つけ次第とにかくポーチに詰め込んだ。
 ここまで人や動物や魔物に出会ってないけどこんなもんなのか?そう思いながら進んで行った。実際は聖獣のオーラに充てられて近付けなかっただけである。


「あそこがシェルバーグだって!街の城塞って感じ?大きいし厳ついなぁー」
「ヒヒーンッ!ブルルブルルン」
「街としては普通の見た目なの?あ、魔物から守るためなのね」
「ブルルンブルルン」
「ホントだ。門番居るね。通行料とか検査とかされるのかな?」
「ブルルッ」
「え!どうしよう、お金無いよ!拾った物で交換出来るかな…」

 傍目にはブルブル言ってる馬に話しかけてる変な男にしか見えない。一旦街道脇の木陰に隠れてユニに聖女になってもらう。白髪と紺の瞳は目立つので黒いローブを羽織ってもらってフードを被らせる。

「悪いな、ユニ。こんなローブしかなくて…」
「気にしてないわ。目立ってトラブルに巻き込まれるのは面倒だもの」
「オレ、トラブル解決しに来てるんだけど」
「巻き込まれたなら仕方ないけど、わざわざトラブルを引き寄せる事はないでしょ」
「まぁねー。因みに貨幣価値って分かる?」
「金貨、銀貨、銅貨、青銅貨、硝貨があるのは知ってるわ」
「違いは?」
「そこまで知らないわよ」

 ですよね…。仕方ないのでこのまま進む。
 出入り口には二人の門番しかいないので、人目は少ないがやっぱりユニが怪しまれてジロジロ見られた。

「おーう止まってなー。通行証かギルド証持ってる?」
 
 黒髪黒ひげのワイルドなおっさんが話しかけてくる。この人毛量多そう。兵士なのか、革の防具の上から肩や腰に部分鎧を身に着けている。腕は鎖帷子の付いてる篭手が嵌められていて、長い槍を片手で扱っているのがカッコイイ!

「いえ、すみません、オレら向こうの村から出て来たばっかりで持ってないんです」
「そしたら通行料かかるけど」
「あははっ、お金も無くて、でも途中で拾った物で通行料分に替えられませんか?」
「んー、未成年でもないし、親の同意が必要な年でもなさそうだしな。良いだろう、こっちの詰め所で聞くから来てくれ。おい!後で代わるからちょっと出てくれ!詰め所で話聞くわ」
「はいよー、んじゃ任せなっ」

 石ブロックを積み上げて作られた、硬質な詰め所の中で休んでた門番が出て、三人で詰所に入る。木の机と、机を挟んで向かい合わせになるように置かれた木の丸椅子が2脚だけだったので、1脚隣に移動してオレ達を座らせてくれた。

「あっちは確かハンプベルグの村があったな。出稼ぎか?」
「はい、オレとこいつで素材とか食材とか見つけて稼ぎたいなと思ってまして。作物育てる土地は持ってないし、魔物は恐いので…」
「はっはっはっ!おうおう!正直者で好ましいやつだな!最近の若いやつは魔物の強さを分かっとらん!だが素材集めるにしても食材収穫するにしても魔物と出くわす可能性だってあるだろう?」
「そうだと思うんですけど、村からここまで全く遭わなかったです。それとこれ、道中拾った物なんですけど…」

 ポーチからヒール草を出して渡す。新鮮で摘んだばかりの草に少し訝しがられた。

「ん?これはヒール草か。回復薬の原料だからありがたいが、これだけだとまだ足りないぞ?通行料が二人で銅貨2枚だけど、これだと青銅貨5枚が良いとこだな」
「(銅貨より青銅貨のが安いのね)それじゃあ、この丸い石はどうですか?」
「何だこれは?」
「それはフンコロガシの宝玉です」
「はぁ!?おうおう!そりゃお宝じゃねえか!フンコロガシの宝玉っていや、表面のゴツゴツした石を剥がすと綺麗なオレンジ色の宝石になるって!金貨十数枚の値打ちもんだぞ!」

 まじで!?昆虫がうんこ丸めた宝石だよ!?てか金貨って価値分からんけどヤバそう!ここじゃぁぼったくられそうだしチェンジで!
 返してもらってポーチにしまうと、ポーチから違うのを取り出す。

「えっと、それじゃあ、このヤシの実は?」
「おーこれなら銅貨1枚だぜ」
「それでしたらこのヤシの実とヒール草を二本お渡しするのでどうでしょうか…?」
「それならピッタリだな!」
「よし!それで通行料の立て替えお願いします!(青銅貨10枚で銅貨1枚か)」
「おうよ!引き受けた!それと身分証欲しかったら冒険者ギルドにでも登録するといい。素材採取依頼とか、やるか分かんねえけど討伐依頼もあるから登録して損はねえぜ」
「はい!ありがとうございます!」

 交渉成立。イクトと門番のおっさんは握手をする。

「おうよ!それから、オレはグラッドって言うんだ。一応ここの衛兵長してるから、困った事あったら気軽に相談しなよ!」
「はい!オレはイクト、こっちはユニです」
「…よろしくなのよ」
「おうよ!それじゃ、ようこそ!シェルバーグへ!」

 二人はやっと街へ入る事ができた。建物は二階建ての石造りがほとんどで、馬車も走れるくらい道幅が広い。食べ物の屋台や雑貨を広げてる露天商もいる。見た感じ人間ばかりで、異世界と言えばいろんな種族がいるんだと思ってたのでちょっと残念。街へ入ってしばらく歩くと右手側に剣と盾のシンボルの看板があるらしく、そこが冒険者ギルドとの事だ。素材の換金もやってるので、先ずは行ってみる事にする。

 こっち来てから3時間くらいか、少し腹が減ったが街までの移動はユニがしてくれたので全然疲れてない。それどころか地面を駆けてたはずなのにホントに全く揺れが来なかった。おかげでオレの尻は守られた。
 しょーもない事を考えながら、グラッドのおっさんとこからほぼ黙ったままのユニが心配になってきた。

「ユニどうした?具合悪いのか?オレばっかり楽してたからムカついてるのか?ごめんな」

 ユニは両手で口と鼻を覆うとイクトを見つめた。

「そんなに嫌だったのか…」
「…ブルルン。違うわよ。あの男、まぐわった臭いが臭くて嫌だわ。それにあっちもこっちも臭くて敵わないわ」

 そっちでしたかー。しょうもなって思いかけて、ユニには死活問題かもしれないと気付いた。下手したら臭くてムカつきすぎて暴れ馬になるかもしれない。それはやばい!
 ぎゅっと優しくユニを抱きしめる。ユニはオレの胸に顔を埋めてスーハースーハーと深く息を吸い込んだ。

「ありがとう!落ち着いてきたわ!それと街にいる間はこのローブ借りるわね」
「ユニが元気になってくれて嬉しいよ。それは自由に使っていいからね」
「うん!」

 野郎ども見たか!これが35にして童貞のパワーだ!こんな見た目綺麗な美女とハグしたぞ!羨ましいだろ!
 勝利を確信してゆっくり周りを見回すと、熱いわねうふふ、とマダム達が頬に手を当てて微笑んでいた。
 屋台のおっさんおばさんは冷めた目でこっちを見ている。仕事中にさーせん。
 そう言えばユニはフード被ってて美女ってバレてないんだったー!小柄な女子にハグしただけと思われてるな。まぁ、オレだけ知ってれば勝組だしー

 そんなこんなで冒険者ギルドに向かう。




貨幣価値
 白金貨…1億円
 金貨…100万円
 銀貨…1万円
 銅貨…1000円
 青銅貨…100円
 硝貨…10円
通貨単位:リル
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