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一章
3.ノエル、夫の世話を焼く
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◇
ノエルの部屋は、可愛らしいクリーム色の壁紙に、落ち着いた色合いの調度品が揃えられている。
本棚に並んでいるのは、若い女性に人気の恋愛小説ではなく、薬草の本や生活の知恵など、なんとも実用的なものばかりだった。
ちなみに、この部屋を整えたのは、何を隠そうサフィール本人である。
手ずから、ノエルが不自由しないようにと揃えてくれた家具は、彼女にとって宝物同然だった。
――まさか、そこまでしておいて、ここまで放置されるとは思ってもいなかったが。
「はい、抱っこは終わりですよー。ここに降ろしますねー」
そう言いながら、ノエルはゆっくりとベッドへ彼の身体を降ろした。
抵抗をやめたサフィールは、ノエルに抱っこされていたにもかかわらず、自分で歩くよりもはるかに疲れきっている。
しかも、完全に小さい子扱いをされ、眉間の皺は一段と深くなっていた。
けれども、ノエルにとってはぶすっとした夫の顔も、とても可愛らしく映って見える。
気付けば……よしよしと金の巻き毛の頭をこれでもかと撫でまわしていた。
「おい、撫でまわすな!」
「いいじゃないですか、減るもんじゃないし」
えいえいと必死で小さな頭を振って逃げようとするので、さすがにかわいそうかとノエルも撫でる手を止めた。
「……というか、ここは君の部屋ではないか。私が入ってもいいのか」
「何もやましいものはございませんもの。ご自由に出入りしていいんですよ」
「……」
ノエルの記憶する限り、夫であるサフィールがこの部屋に足を踏み入れるのは、結婚して以来初めてのことだった。
彼はきょろきょろと落ち着きなく室内を見回し、居心地の悪そうに、小さな手で手元のシーツをぎゅっと握り締める。
ノエルは、窓際に置かれたお気に入りの一人掛けソファに腰を掛ける――
と思いきや、ちゃっかりと夫の横に座った。
かつてない距離の近さに、サフィールの身体がびくりと跳ねる。
自分はこれから一体何をされるのかと身構えたものの、
ノエルの口から出た言葉は、意外にも理性的なものだった。
「それで。旦那様の身に、何が起こったのか、詳しく説明いただいてもよろしいでしょうか?」
「あ、ああ……」
尋ねている内容は理にかなっているが――視線が鋭い。
頑としてサフィールを見つめるその目は、まるで捕食者のそれである。
サフィールは少し横に身体をずらし、ノエルから顔を背けると、ぽつりと説明を始めた。
「簡単に言えば……部下の試薬のとばっちりを食らった。
『肌を若返らせる薬』の開発を担当していた部門の責任者が、とうとう試作が完成したと報告に来てな」
サフィールの顔が苦くなる。
「報告書を見れば、もう少し治験を重ねたほうがいいとわかる案件だった。
しかし――ちょうど気がそれていたときに、部下の一人がやらかした。
化粧水のような瓶に入った薬品を、蓋を開けたまま持ってきて、試薬させようとして私の前で躓いたのだ。
それを全身から被り、気付けば……こんなことになっていた。
……たぶん、魔法耐性の高い私でなければ、若返りすぎて跡形もなく存在が消えていただろう」
「それは……旦那様がご無事で何よりでした」
ノエルの頭の中では、なんとも不注意な部下への呆れと、
とばっちりを受けたサフィールへの安堵が交錯する。
予期せぬ人命に関わる事故にならず、本当によかった、と心から思った。
(それにしても――)
『肌を若返らせる薬』とは……。
それはまた、ずいぶんと魅力的な響きである。
ノエルはまだ二十一歳なので、今すぐ必要というわけではない。
だが、これから先、年を重ねていくにつれ、間違いなく需要は出てくるだろう。
それにしても、肌だけでなく全身を若返らせるとは――
ある意味では、そちらのほうがよほど需要がありそうだ。
サフィールは今年で二十九歳を迎える。
輝くような美貌を持っていたとしても、肌年齢的にはちょうど折り返し地点。
試薬を試すには、たしかにちょうどいい年齢だったのだろう。
「あの、それで……さきほど、元に戻る算段はついているとのことでしたが、
自然に元に戻るのですか?
それとも、解毒薬か何かが処方されるのでしょうか?」
「……算段はついたと言った。だが、それは薬の開発部門の者が言っていたことだ。
彼らに責任を取らせ、全力で元に戻す薬を作らせている」
サフィールはそう言うと、気まずそうに顔を伏せた。
「だから……一週間以内になんとかしろとは指示したものの、
実のところ――目処は立っていない、とも言える」
「なんてこと……!」
驚愕した表情のノエルだが、どこか喜色ばんでいるのは、きっとサフィールの気のせいではない。
じっとりとした視線を向けられ、ノエルはこほんと咳払いした。
「ええと……それまで、お仕事はどうなさるのですか?」
「しばらくは休暇だ。
……これまでが働きすぎだと、有休消化を勧められてしまってな。
統括部長からの指示だから、覆すことができなかった……」
サフィールの顔は明らかに不服そうで、「まだやりかけのものがいくつもあったのだが……」と、ぶつぶつこぼしているが、ノエルの耳には届いていなかった。
「これは……神様がくれた、ご褒美なんだわ……」
「いや、ただの事故だから……」
「いいえ! これまで話し合う時間もなかったので言わせてもらいますが、あなたは働きすぎです!
もちろん、あなたが頑張っているのはわかりますし、不在であることも契約の通り文句は言いません。
ただ、健康にだけは口出しさせてもらいます! ちゃんと毎日寝られているんですか!?」
「働きすぎだとも思わないが……
仕事は趣味みたいなものだし……
睡眠時間は少ないかもしれないが、子供の時以来風邪を引いたこともない健康体だ」
「でも、やっぱり睡眠時間は少ないんじゃないですか。
今はよくても、年をとってから一気にきますよ?
この休暇を機に、規則正しく健やかな生活に直していきましょう。
じゃないと、大きくなれませんよ!?」
「いや、大きくって、この姿は一時的なものだから、成長は関係ないのだけど」
「はいはい。
では、そうと決まれば、さっそくお昼寝しましょうねー」
「!?」
なんとも慣れた手つきで、ノエルは上掛けのシーツを引っぺがし、サフィールを抱っこして枕に頭を横たえる。
サフィールが抵抗する間もなく、上から再びシーツをかけられ、強制的にお昼寝モードにされてしまった。
「ま、待て! 私は中身は二十八の、とっくに成人した大人だぞ!?
こんな時間に寝ることなどできない! しかも、ここは君のベッドではないか!」
「中身は大人でも、身体は四、五歳の子供ですよね。
この時期の子はお昼下がりには昼寝すると決まっているのです」
「いや、私が子供の頃には、もう昼寝など卒業していたと思うぞ!?」
高位貴族の事情など知らない。
ノエルの年の離れた弟は、このくらいの時期になると毎日、昼下がりに一緒に昼寝をしていたものだ。
「はいはい。カーテン閉めますねー」
「君、さっきから私の話を聞いていないのではないか!?」
ノエルがベッドから離れた瞬間、サフィールはガバリと上体を起こして抗議する。
「もちろん聞いてますよ。
でもこれは決定事項です。いろいろとお疲れでしょう、いいではありませんか」
カーテンを閉め、再びベッドへ戻ってきたノエルは、よいしょ、となんの躊躇もなくサフィールの横に身体を潜り込ませた。
「ま、ま、ま、まて……君も一緒に寝るのか……?」
サフィールは目を見開き、ノエルを見下ろす。
だが、ノエルはサフィールの起き上がった身体をいとも簡単に抱き寄せ、あっという間に自分の隣に寝かせてしまった。
「そりゃそうですよ。
子供のお昼寝は、添い寝する人がいないと寂しいでしょう?」
「だから……私は……」
「あ、せっかくだからピロートークでもします?
思えば私たち、結婚してからこんなに喋ったの、初めてなのではありませんか?」
「……」
おそらく、ノエルの気のせいでなければ、今日が二人の“最長会話記録”になるだろう。
契約のことを話し合ったときですら、時間にして三十分もなかったのではないか。
ノエルはシーツの上から腕を伸ばし、サフィールの髪を優しく撫でる。
急に頭を撫でられたものだから、サフィールの身体がビクッと跳ねた。
「旦那様の髪色は、幼い頃はこのように明るい金髪だったのですね」
「あ、ああ……。年を取るにつれ、色が落ち着いて茶色になった。兄も父もそうだったから、たぶん遺伝だろう」
「私の家系はみんな黒いから、色が変化するなんて、とても面白いですね⋯⋯」
サフィールは、ゆっくりと撫でられる動作と、ノエルの身体の温かさ、そして彼女の優しい声音に、少しばかり目がトロンとしてきた。
「そうだな……」
しかし、次のノエルの発言で、眠気は一気に吹き飛ぶことになる。
「じゃあ、わたしたちの子供の場合、最初は金髪で途中から黒くなるのかしら……」
「ッ!!?」
(あれ、起きちゃった)
少しうとうとし始めていたサフィールは、驚きの表情でノエルを見た。
そしてそのまま、シーツに頭ごとすっぽりと潜り込んでしまった。
「旦那様……?」
ノエルの小さな問いかけに、サフィールはシーツを被ったまま、同じく小さく返事をする。
「こ、子供は、まだ、早い……」
くぐもった声で聞き取りにくかったが、どこか照れているような響きに、ノエルは逆にびっくりしてしまった。
(早いってことは、将来的に考えてはくれてたんだ……)
ノエルがしばらく黙ったままでいると、サフィールの動きが止まっているのに気付いた。
潜り込んだままでは息が苦しかろうと、そっとシーツを捲ると、穏やかな寝息を立てて眠る、天使のような姿があった。
名残惜しい気もするが、ノエルはそっとベッドから抜け出る。
首元までシーツをかけてやり、彼のすやすやとした寝顔を眺めた。
急激な身体の変化のせいもあるだろうが、確実に疲労が溜まっていたのだろう。
――今回を機に、もう少し距離を縮めたい。
先ほど話している感じでは、最初に受けた印象通り、
自分と彼の相性は悪くないように思えた。
ただ、これまで二人で過ごす時間が、圧倒的に足りなかっただけで。
ノエルは、この時点で夫が元に戻れないかもしれない、
などという悲観的なことは一切考えていなかった。
むしろ、この天使をどうやって懐かせるか――
それだけに意識を集中させていた。
「さあ、忙しくなるわ」
サフィールを起こさないよう静かに歩き、私室を後にした。
◇
「……なんだ、これは」
たっぷりと昼寝をしたサフィールは、起きてすぐ連れてこられた先の光景に驚愕していた。
「坊ちゃまのために、僭越ながら若い侍女とともに、選りすぐりの品を揃えさせていただきました」
執事のアレックスは腰を折り、視線を伏せて丁寧にサフィールへと伝えた。
「いや、そうではなくてだな。こんなもの、元に戻ればすぐに必要がなくなるというのに……」
空いていた部屋のクロークには、あふれんばかりの衣服と靴が並んでいる。
呆れた視線を向けるサフィールに、すかさずノエルが口を挟んだ。
「すべて既製品ではございますが、当面の間はこれで不自由なさらないでしょう。
それに、我が家の有り余った財を、ここで使わずしていつ使うというのです!」
「いや、資産の使いどころなんて、他にもいくらでもあるはずなんだが……」
今のサフィールは、今朝出ていったときに着ていたシャツをワンピースのようにして着ており、下は何も履いていなかった。
好奇心で父親のシャツを羽織ってみました、とでも言いたげなあざとい格好も可愛いのだが、やはりサイズの合った服も見てみたい。
「さあ、お着替えしましょうねー……」
「待て、着替えは自分でできる」
顔をぶんぶん振って後ずさるサフィールの腕を、どこからともなく現れた侍女二人が、機敏な動きで拘束した。
「おい、おまえたちは主人の味方じゃないのか!?」
「屋敷に不在の坊ちゃまよりも、奥様の味方をするのは、自然の摂理にございます」
しれっと告げるアレックスに、サフィールはすぐさま噛みついた。
「おまえもか、アレックス! それに、私は坊ちゃまではない!」
必死に足をじたばたさせるサフィールだったが、この部屋にいる全員から「あらあら」と微笑ましい視線を向けられるばかりである。
「み……味方が誰もいない……」
「日頃の“ツケ”だと思って、諦めてくださいな?
さー、まずは上の服からですねー」
手をわきわきと動かし、上から襲いかからんばかりのポーズを取るノエルに、サフィールの顔が盛大に引きつった。
屋敷に、本日二度目の絶叫がこだましたのは、言うまでもない。
◇
あの後、着せ替え人形になってしまったサフィールは、夕食の席で頗る機嫌が悪かった。
今は仕立ての良い襟付きシャツに半ズボン、長い靴下にピカピカの靴を履いている。
しかし、席につかず、盛大に眉を寄せたままだ。
「……なんだこの椅子は」
「残念ながら、我が家には子供用のチェアがありませんでしたので、急遽ご用意させて頂きました」
「……」
彼のいつもの席には、普段座っている椅子の代わりに、突貫で作られた背の高い木の椅子が置かれていた。
足置きの梯子に小さな背もたれと肘掛けがあり、ふかふかのクッションも添えられている。急ごしらえにしては中々の出来栄えだ。
だが、どう見ても幼児用の椅子にしか見えず、彼は難色を示して一向に座ろうとしない。
それを見かねたノエルは脇に手を入れ、さっと抱き上げて簡単に椅子へと収めてしまった。
「な!」
「あら、ジャストフィットですね、旦那様。
みんなの努力の結晶ですわ」
「だが、これもすぐに必要なくなるだろう」
「いま、必要なのですよ。いつもの椅子では、お食事の際、お皿の上が見えないでしょう?
それとも、私のお膝の上がよろしかったでしょうか?」
「……」
サフィールは黙り込んだ。
ノエルの膝の上と幼児用の椅子なら、後者の方がまだマシだと思ったようだった。
(なんだろう、この人、いちいち可愛いらしいわ……)
今まで会話が少なすぎたこともあるが、話せば話すほど、彼という人物が見えてくる。
きっと、姿のせいだけではない。彼は非常に分かりやすい性格をしていた。
今は子供扱いされることが不服で、使用人やノエルたちに反抗することはあっても、完全拒否はしない。
不満気な顔をしつつ、最終的には素直に受け入れるその様子は、可愛いとしか言いようがなかった。
配膳された食事メニューも、大人より少なめで、スパイスは控えめ。具材はすべて小さくカットされ、カトラリーも小さめのものが用意されていた。
なんなら、サラダに添えられていた人参は、サフィールのお皿の分だけ星型にカットされており、完全にお子様扱いである。
ノエルはその飾り切りを見て、固まるサフィールにとうとう耐えきれなくなった。
「……可愛いですね、星……」
「……」
ノエルの笑いを含んだ声かけに、サフィールは何も返さず、忌々しそうにブスリとフォークで星を一突きし、仏頂面でモグモグ食べる。
そして飲み込んだあと、地を這うような声で呟いた。
「みんな、元に戻ったら覚えておけよ……」
だが、その姿すら微笑ましい。
皆が温かい目でサフィールを見ており、彼は自分の屋敷にいるはずなのに、終始居心地が悪かった。
そんな中、ノエルは一人、しみじみと別のことを考えていた。
(結婚してから、一緒に晩御飯を頂くなんて、入籍した日以来じゃないかしら……)
平日休日に関わらず、仕事で遅くなったり、泊まり込んだりで、夕食はいつもノエルが一人で食べていた。
入籍した日にここで一緒に食べた夕食のときは、なぜか席は離れており、ノエルも緊張していて、会話も二、三交わしたくらいで、静かな食卓だったのを覚えている。
けれども、今は違う。
遠い席ではなく、小さな彼をすぐに介助できるよう隣に座っている。
「あら、旦那様。ブロッコリーがお皿の上に残っていますわ」
綺麗に食べた皿の上に、ちょこんと手つかずのブロッコリーが残っている。もちろんこれは飾りではなく、きちんとソテーされて味もついている。
よく見れば、スープに入っていた小さなブロッコリーも、すべて器用に避けて残してあった。
「……これは、苦手だ」
「!」
衝撃だった。
成人した男性で、ここまで露骨に好き嫌いが残っているなんて。
サフィールは近くの使用人に苦情を伝える。
「おい、いつもは除いてくれてるはずだが、なんで今日は入ったままなんだ。料理人に、明日からはちゃんとしろと伝えておけ」
使用人はその言葉に、すぐさま首を振った。
「料理人からの伝言で、旦那様が文句を言っていたら、『好き嫌いする子は大きくなれません』と伝えておいて欲しいとのことです」
プハァッ
ノエルの我慢が限界値を超えた。
「な、なにを笑ってるんだ!」
サフィールは恥ずかしそうにしながら隣のノエルを見上げ、必死に噛みついてくる。
「だ、だって、そのとおりだと思いまして。好き嫌いする子は大きくなれませんよ?」
「だから、この姿は一時的なものだから、成長は関係ない。元の姿でブロッコリーを食べなくても、君より背は大きかっただろう!?」
「ふふっ、そうですね」
「……」
笑われたのが悔しかったのか、サフィールは渋々フォークを持ち、残していたブロッコリーを、とんでもなく嫌そうな顔で咀嚼して綺麗に平らげた。
ノエルはもう、彼のすべてが可愛く見えてしかたがなかった。
夫ではなく、親戚の子供をあやしている気分にすらなっている。
(よくできました)
ノエルから慈愛に満ちた微笑みを向けられ、サフィールはさらに居心地が悪い気分になっていた。
ノエルの部屋は、可愛らしいクリーム色の壁紙に、落ち着いた色合いの調度品が揃えられている。
本棚に並んでいるのは、若い女性に人気の恋愛小説ではなく、薬草の本や生活の知恵など、なんとも実用的なものばかりだった。
ちなみに、この部屋を整えたのは、何を隠そうサフィール本人である。
手ずから、ノエルが不自由しないようにと揃えてくれた家具は、彼女にとって宝物同然だった。
――まさか、そこまでしておいて、ここまで放置されるとは思ってもいなかったが。
「はい、抱っこは終わりですよー。ここに降ろしますねー」
そう言いながら、ノエルはゆっくりとベッドへ彼の身体を降ろした。
抵抗をやめたサフィールは、ノエルに抱っこされていたにもかかわらず、自分で歩くよりもはるかに疲れきっている。
しかも、完全に小さい子扱いをされ、眉間の皺は一段と深くなっていた。
けれども、ノエルにとってはぶすっとした夫の顔も、とても可愛らしく映って見える。
気付けば……よしよしと金の巻き毛の頭をこれでもかと撫でまわしていた。
「おい、撫でまわすな!」
「いいじゃないですか、減るもんじゃないし」
えいえいと必死で小さな頭を振って逃げようとするので、さすがにかわいそうかとノエルも撫でる手を止めた。
「……というか、ここは君の部屋ではないか。私が入ってもいいのか」
「何もやましいものはございませんもの。ご自由に出入りしていいんですよ」
「……」
ノエルの記憶する限り、夫であるサフィールがこの部屋に足を踏み入れるのは、結婚して以来初めてのことだった。
彼はきょろきょろと落ち着きなく室内を見回し、居心地の悪そうに、小さな手で手元のシーツをぎゅっと握り締める。
ノエルは、窓際に置かれたお気に入りの一人掛けソファに腰を掛ける――
と思いきや、ちゃっかりと夫の横に座った。
かつてない距離の近さに、サフィールの身体がびくりと跳ねる。
自分はこれから一体何をされるのかと身構えたものの、
ノエルの口から出た言葉は、意外にも理性的なものだった。
「それで。旦那様の身に、何が起こったのか、詳しく説明いただいてもよろしいでしょうか?」
「あ、ああ……」
尋ねている内容は理にかなっているが――視線が鋭い。
頑としてサフィールを見つめるその目は、まるで捕食者のそれである。
サフィールは少し横に身体をずらし、ノエルから顔を背けると、ぽつりと説明を始めた。
「簡単に言えば……部下の試薬のとばっちりを食らった。
『肌を若返らせる薬』の開発を担当していた部門の責任者が、とうとう試作が完成したと報告に来てな」
サフィールの顔が苦くなる。
「報告書を見れば、もう少し治験を重ねたほうがいいとわかる案件だった。
しかし――ちょうど気がそれていたときに、部下の一人がやらかした。
化粧水のような瓶に入った薬品を、蓋を開けたまま持ってきて、試薬させようとして私の前で躓いたのだ。
それを全身から被り、気付けば……こんなことになっていた。
……たぶん、魔法耐性の高い私でなければ、若返りすぎて跡形もなく存在が消えていただろう」
「それは……旦那様がご無事で何よりでした」
ノエルの頭の中では、なんとも不注意な部下への呆れと、
とばっちりを受けたサフィールへの安堵が交錯する。
予期せぬ人命に関わる事故にならず、本当によかった、と心から思った。
(それにしても――)
『肌を若返らせる薬』とは……。
それはまた、ずいぶんと魅力的な響きである。
ノエルはまだ二十一歳なので、今すぐ必要というわけではない。
だが、これから先、年を重ねていくにつれ、間違いなく需要は出てくるだろう。
それにしても、肌だけでなく全身を若返らせるとは――
ある意味では、そちらのほうがよほど需要がありそうだ。
サフィールは今年で二十九歳を迎える。
輝くような美貌を持っていたとしても、肌年齢的にはちょうど折り返し地点。
試薬を試すには、たしかにちょうどいい年齢だったのだろう。
「あの、それで……さきほど、元に戻る算段はついているとのことでしたが、
自然に元に戻るのですか?
それとも、解毒薬か何かが処方されるのでしょうか?」
「……算段はついたと言った。だが、それは薬の開発部門の者が言っていたことだ。
彼らに責任を取らせ、全力で元に戻す薬を作らせている」
サフィールはそう言うと、気まずそうに顔を伏せた。
「だから……一週間以内になんとかしろとは指示したものの、
実のところ――目処は立っていない、とも言える」
「なんてこと……!」
驚愕した表情のノエルだが、どこか喜色ばんでいるのは、きっとサフィールの気のせいではない。
じっとりとした視線を向けられ、ノエルはこほんと咳払いした。
「ええと……それまで、お仕事はどうなさるのですか?」
「しばらくは休暇だ。
……これまでが働きすぎだと、有休消化を勧められてしまってな。
統括部長からの指示だから、覆すことができなかった……」
サフィールの顔は明らかに不服そうで、「まだやりかけのものがいくつもあったのだが……」と、ぶつぶつこぼしているが、ノエルの耳には届いていなかった。
「これは……神様がくれた、ご褒美なんだわ……」
「いや、ただの事故だから……」
「いいえ! これまで話し合う時間もなかったので言わせてもらいますが、あなたは働きすぎです!
もちろん、あなたが頑張っているのはわかりますし、不在であることも契約の通り文句は言いません。
ただ、健康にだけは口出しさせてもらいます! ちゃんと毎日寝られているんですか!?」
「働きすぎだとも思わないが……
仕事は趣味みたいなものだし……
睡眠時間は少ないかもしれないが、子供の時以来風邪を引いたこともない健康体だ」
「でも、やっぱり睡眠時間は少ないんじゃないですか。
今はよくても、年をとってから一気にきますよ?
この休暇を機に、規則正しく健やかな生活に直していきましょう。
じゃないと、大きくなれませんよ!?」
「いや、大きくって、この姿は一時的なものだから、成長は関係ないのだけど」
「はいはい。
では、そうと決まれば、さっそくお昼寝しましょうねー」
「!?」
なんとも慣れた手つきで、ノエルは上掛けのシーツを引っぺがし、サフィールを抱っこして枕に頭を横たえる。
サフィールが抵抗する間もなく、上から再びシーツをかけられ、強制的にお昼寝モードにされてしまった。
「ま、待て! 私は中身は二十八の、とっくに成人した大人だぞ!?
こんな時間に寝ることなどできない! しかも、ここは君のベッドではないか!」
「中身は大人でも、身体は四、五歳の子供ですよね。
この時期の子はお昼下がりには昼寝すると決まっているのです」
「いや、私が子供の頃には、もう昼寝など卒業していたと思うぞ!?」
高位貴族の事情など知らない。
ノエルの年の離れた弟は、このくらいの時期になると毎日、昼下がりに一緒に昼寝をしていたものだ。
「はいはい。カーテン閉めますねー」
「君、さっきから私の話を聞いていないのではないか!?」
ノエルがベッドから離れた瞬間、サフィールはガバリと上体を起こして抗議する。
「もちろん聞いてますよ。
でもこれは決定事項です。いろいろとお疲れでしょう、いいではありませんか」
カーテンを閉め、再びベッドへ戻ってきたノエルは、よいしょ、となんの躊躇もなくサフィールの横に身体を潜り込ませた。
「ま、ま、ま、まて……君も一緒に寝るのか……?」
サフィールは目を見開き、ノエルを見下ろす。
だが、ノエルはサフィールの起き上がった身体をいとも簡単に抱き寄せ、あっという間に自分の隣に寝かせてしまった。
「そりゃそうですよ。
子供のお昼寝は、添い寝する人がいないと寂しいでしょう?」
「だから……私は……」
「あ、せっかくだからピロートークでもします?
思えば私たち、結婚してからこんなに喋ったの、初めてなのではありませんか?」
「……」
おそらく、ノエルの気のせいでなければ、今日が二人の“最長会話記録”になるだろう。
契約のことを話し合ったときですら、時間にして三十分もなかったのではないか。
ノエルはシーツの上から腕を伸ばし、サフィールの髪を優しく撫でる。
急に頭を撫でられたものだから、サフィールの身体がビクッと跳ねた。
「旦那様の髪色は、幼い頃はこのように明るい金髪だったのですね」
「あ、ああ……。年を取るにつれ、色が落ち着いて茶色になった。兄も父もそうだったから、たぶん遺伝だろう」
「私の家系はみんな黒いから、色が変化するなんて、とても面白いですね⋯⋯」
サフィールは、ゆっくりと撫でられる動作と、ノエルの身体の温かさ、そして彼女の優しい声音に、少しばかり目がトロンとしてきた。
「そうだな……」
しかし、次のノエルの発言で、眠気は一気に吹き飛ぶことになる。
「じゃあ、わたしたちの子供の場合、最初は金髪で途中から黒くなるのかしら……」
「ッ!!?」
(あれ、起きちゃった)
少しうとうとし始めていたサフィールは、驚きの表情でノエルを見た。
そしてそのまま、シーツに頭ごとすっぽりと潜り込んでしまった。
「旦那様……?」
ノエルの小さな問いかけに、サフィールはシーツを被ったまま、同じく小さく返事をする。
「こ、子供は、まだ、早い……」
くぐもった声で聞き取りにくかったが、どこか照れているような響きに、ノエルは逆にびっくりしてしまった。
(早いってことは、将来的に考えてはくれてたんだ……)
ノエルがしばらく黙ったままでいると、サフィールの動きが止まっているのに気付いた。
潜り込んだままでは息が苦しかろうと、そっとシーツを捲ると、穏やかな寝息を立てて眠る、天使のような姿があった。
名残惜しい気もするが、ノエルはそっとベッドから抜け出る。
首元までシーツをかけてやり、彼のすやすやとした寝顔を眺めた。
急激な身体の変化のせいもあるだろうが、確実に疲労が溜まっていたのだろう。
――今回を機に、もう少し距離を縮めたい。
先ほど話している感じでは、最初に受けた印象通り、
自分と彼の相性は悪くないように思えた。
ただ、これまで二人で過ごす時間が、圧倒的に足りなかっただけで。
ノエルは、この時点で夫が元に戻れないかもしれない、
などという悲観的なことは一切考えていなかった。
むしろ、この天使をどうやって懐かせるか――
それだけに意識を集中させていた。
「さあ、忙しくなるわ」
サフィールを起こさないよう静かに歩き、私室を後にした。
◇
「……なんだ、これは」
たっぷりと昼寝をしたサフィールは、起きてすぐ連れてこられた先の光景に驚愕していた。
「坊ちゃまのために、僭越ながら若い侍女とともに、選りすぐりの品を揃えさせていただきました」
執事のアレックスは腰を折り、視線を伏せて丁寧にサフィールへと伝えた。
「いや、そうではなくてだな。こんなもの、元に戻ればすぐに必要がなくなるというのに……」
空いていた部屋のクロークには、あふれんばかりの衣服と靴が並んでいる。
呆れた視線を向けるサフィールに、すかさずノエルが口を挟んだ。
「すべて既製品ではございますが、当面の間はこれで不自由なさらないでしょう。
それに、我が家の有り余った財を、ここで使わずしていつ使うというのです!」
「いや、資産の使いどころなんて、他にもいくらでもあるはずなんだが……」
今のサフィールは、今朝出ていったときに着ていたシャツをワンピースのようにして着ており、下は何も履いていなかった。
好奇心で父親のシャツを羽織ってみました、とでも言いたげなあざとい格好も可愛いのだが、やはりサイズの合った服も見てみたい。
「さあ、お着替えしましょうねー……」
「待て、着替えは自分でできる」
顔をぶんぶん振って後ずさるサフィールの腕を、どこからともなく現れた侍女二人が、機敏な動きで拘束した。
「おい、おまえたちは主人の味方じゃないのか!?」
「屋敷に不在の坊ちゃまよりも、奥様の味方をするのは、自然の摂理にございます」
しれっと告げるアレックスに、サフィールはすぐさま噛みついた。
「おまえもか、アレックス! それに、私は坊ちゃまではない!」
必死に足をじたばたさせるサフィールだったが、この部屋にいる全員から「あらあら」と微笑ましい視線を向けられるばかりである。
「み……味方が誰もいない……」
「日頃の“ツケ”だと思って、諦めてくださいな?
さー、まずは上の服からですねー」
手をわきわきと動かし、上から襲いかからんばかりのポーズを取るノエルに、サフィールの顔が盛大に引きつった。
屋敷に、本日二度目の絶叫がこだましたのは、言うまでもない。
◇
あの後、着せ替え人形になってしまったサフィールは、夕食の席で頗る機嫌が悪かった。
今は仕立ての良い襟付きシャツに半ズボン、長い靴下にピカピカの靴を履いている。
しかし、席につかず、盛大に眉を寄せたままだ。
「……なんだこの椅子は」
「残念ながら、我が家には子供用のチェアがありませんでしたので、急遽ご用意させて頂きました」
「……」
彼のいつもの席には、普段座っている椅子の代わりに、突貫で作られた背の高い木の椅子が置かれていた。
足置きの梯子に小さな背もたれと肘掛けがあり、ふかふかのクッションも添えられている。急ごしらえにしては中々の出来栄えだ。
だが、どう見ても幼児用の椅子にしか見えず、彼は難色を示して一向に座ろうとしない。
それを見かねたノエルは脇に手を入れ、さっと抱き上げて簡単に椅子へと収めてしまった。
「な!」
「あら、ジャストフィットですね、旦那様。
みんなの努力の結晶ですわ」
「だが、これもすぐに必要なくなるだろう」
「いま、必要なのですよ。いつもの椅子では、お食事の際、お皿の上が見えないでしょう?
それとも、私のお膝の上がよろしかったでしょうか?」
「……」
サフィールは黙り込んだ。
ノエルの膝の上と幼児用の椅子なら、後者の方がまだマシだと思ったようだった。
(なんだろう、この人、いちいち可愛いらしいわ……)
今まで会話が少なすぎたこともあるが、話せば話すほど、彼という人物が見えてくる。
きっと、姿のせいだけではない。彼は非常に分かりやすい性格をしていた。
今は子供扱いされることが不服で、使用人やノエルたちに反抗することはあっても、完全拒否はしない。
不満気な顔をしつつ、最終的には素直に受け入れるその様子は、可愛いとしか言いようがなかった。
配膳された食事メニューも、大人より少なめで、スパイスは控えめ。具材はすべて小さくカットされ、カトラリーも小さめのものが用意されていた。
なんなら、サラダに添えられていた人参は、サフィールのお皿の分だけ星型にカットされており、完全にお子様扱いである。
ノエルはその飾り切りを見て、固まるサフィールにとうとう耐えきれなくなった。
「……可愛いですね、星……」
「……」
ノエルの笑いを含んだ声かけに、サフィールは何も返さず、忌々しそうにブスリとフォークで星を一突きし、仏頂面でモグモグ食べる。
そして飲み込んだあと、地を這うような声で呟いた。
「みんな、元に戻ったら覚えておけよ……」
だが、その姿すら微笑ましい。
皆が温かい目でサフィールを見ており、彼は自分の屋敷にいるはずなのに、終始居心地が悪かった。
そんな中、ノエルは一人、しみじみと別のことを考えていた。
(結婚してから、一緒に晩御飯を頂くなんて、入籍した日以来じゃないかしら……)
平日休日に関わらず、仕事で遅くなったり、泊まり込んだりで、夕食はいつもノエルが一人で食べていた。
入籍した日にここで一緒に食べた夕食のときは、なぜか席は離れており、ノエルも緊張していて、会話も二、三交わしたくらいで、静かな食卓だったのを覚えている。
けれども、今は違う。
遠い席ではなく、小さな彼をすぐに介助できるよう隣に座っている。
「あら、旦那様。ブロッコリーがお皿の上に残っていますわ」
綺麗に食べた皿の上に、ちょこんと手つかずのブロッコリーが残っている。もちろんこれは飾りではなく、きちんとソテーされて味もついている。
よく見れば、スープに入っていた小さなブロッコリーも、すべて器用に避けて残してあった。
「……これは、苦手だ」
「!」
衝撃だった。
成人した男性で、ここまで露骨に好き嫌いが残っているなんて。
サフィールは近くの使用人に苦情を伝える。
「おい、いつもは除いてくれてるはずだが、なんで今日は入ったままなんだ。料理人に、明日からはちゃんとしろと伝えておけ」
使用人はその言葉に、すぐさま首を振った。
「料理人からの伝言で、旦那様が文句を言っていたら、『好き嫌いする子は大きくなれません』と伝えておいて欲しいとのことです」
プハァッ
ノエルの我慢が限界値を超えた。
「な、なにを笑ってるんだ!」
サフィールは恥ずかしそうにしながら隣のノエルを見上げ、必死に噛みついてくる。
「だ、だって、そのとおりだと思いまして。好き嫌いする子は大きくなれませんよ?」
「だから、この姿は一時的なものだから、成長は関係ない。元の姿でブロッコリーを食べなくても、君より背は大きかっただろう!?」
「ふふっ、そうですね」
「……」
笑われたのが悔しかったのか、サフィールは渋々フォークを持ち、残していたブロッコリーを、とんでもなく嫌そうな顔で咀嚼して綺麗に平らげた。
ノエルはもう、彼のすべてが可愛く見えてしかたがなかった。
夫ではなく、親戚の子供をあやしている気分にすらなっている。
(よくできました)
ノエルから慈愛に満ちた微笑みを向けられ、サフィールはさらに居心地が悪い気分になっていた。
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