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44話

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 燃えながらも回復して魔力を使い果たしたドレアノは、草原に仰向けで倒れ伏せていた。

 アゼルが魔道具の眼鏡をかけることで、ドレアノを確認する。
 更に知的に見えて素敵だと考えている間に、アゼルはシリューと話をしていた。

 そして――シリューがドレアノの前に立ち、見下ろしながら告げる。

「アゼルの魔道具で魔力が一切ないことは解っている……さっきみたいに、色々と話してもらおうか」

「……負けた今、話すことはなにもない」

 体は動かせないようだけど、獰猛な眼で睨むドレアノに対して、アゼルは鉄の棒にしか見えない魔道具を取り出す。

「それなら言わなくて構わない……どのみち情報の真実を確認するために、この魔道具を使う予定だったからな」

「なんだ……それは?」

「相手の記憶に干渉し、情報を入手する俺考案の魔道具だ……相手に魔力があれば抵抗されるが、その問題は解決している」

「ぐぅっっ……」

 呻き声をあげながらドレアノは必死に体を動かそうとするも、魔力を使い果たしたことによって動けないらしい。

 魔力がないからこそ、アゼルの記憶に干渉する魔道具に対抗できず、魔将衆について知ることができる。

 そして――頭部に鉄の棒を押し当てながらアゼルが魔力を籠めて、ドレアノの記憶に干渉していた。

「や、やめろォッ!!」

「情報を得たらやめるが……知っていることは全て――」

 シリューがドレアノに説明して数秒で、それは起こった。

 なぜか――ドレアノの体が白い煙と化していき、シリューとリマが唖然としながら叫ぶ。

「なっ、ドレアノの魔力はないんだろ!?」

「ええ……これは恐らく、他の魔将衆による魔法だ!」

 アゼルは記憶を取り込むのに集中しているけど、足から徐々にドレアノの体が煙と化して消えていく。 

「恐らく言えない呪いをかけ、それをアゼルが知ったから……呪魔法が発動したのだろう」

「正解だ……これは、オレが望んだことでもある」

 どうやら転移したりするわけでもなく、ドレアノは消滅するようね。

 ドレアノは空を見上げながら、私達に話を始めていた。

「オレは動ける魔将で最強だが、動かない魔将にしてボスのロヴォスはオレよりも遥かに強い……ロヴォスの戦いを、また見たかった、な……」

 それを最期の言葉にして――白い煙となったドレアノは、空気と同化するように消滅していた。
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