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19話
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カルスが必死に謝罪を初めて、どうやら私の意思で戻って欲しい様子だ。
お父様が冷汗を浮かべていることから、私が万が一にも受け入れた時を想像しているのかもしれない。
「戻る気は一切ありません」
カルスに書かせた婚約破棄の紙を見せながら私が断言すると、カルスは泣き崩れていた。
ここで私が居なくても繁栄させるぐらいのやる気を出せないことに、私は呆れるしかない。
もしやる気があるのなら、ルジャス家があそこまで衰退しているわけないから……当然の反応か。
これ以上は話すことがないから、泣き崩れているカルスを見下しながら告げる。
「先ほどお父様が名前を出した貴族の方が来るかもしれません……お引き取りください」
その発言を聞いて、泣き崩れていたカルスが慌てたように起き上がる。
涙で顔が崩れているけど、こんな姿を他の貴族に見られたくないのでしょう。
泣き落としでも無理だと悟ったのか、カルスは今までよりも更に怒気を籠めた表情で私を睨んでくる。
私がどうでもよさそうに眺めていると歯を軋ませて、震えた声でカルスが叫ぶ。
「パトリシア、いやアズローナ家よ……覚えておけ! 俺と再び婚約しなかったことを、必ず後悔させてやる!!」
婚約者として数年、私が子爵令嬢だからか婚約者らしいことはまったくなかったけど、この人が無能なのは知っている。
やる気を出しただけで領地が繁栄できるのなら、私と婚約する前からそれはできているはず。
この場では悔しさからカルスは叫ぶしかないようだけど、私は無理だと確信していた。
お父様が冷汗を浮かべていることから、私が万が一にも受け入れた時を想像しているのかもしれない。
「戻る気は一切ありません」
カルスに書かせた婚約破棄の紙を見せながら私が断言すると、カルスは泣き崩れていた。
ここで私が居なくても繁栄させるぐらいのやる気を出せないことに、私は呆れるしかない。
もしやる気があるのなら、ルジャス家があそこまで衰退しているわけないから……当然の反応か。
これ以上は話すことがないから、泣き崩れているカルスを見下しながら告げる。
「先ほどお父様が名前を出した貴族の方が来るかもしれません……お引き取りください」
その発言を聞いて、泣き崩れていたカルスが慌てたように起き上がる。
涙で顔が崩れているけど、こんな姿を他の貴族に見られたくないのでしょう。
泣き落としでも無理だと悟ったのか、カルスは今までよりも更に怒気を籠めた表情で私を睨んでくる。
私がどうでもよさそうに眺めていると歯を軋ませて、震えた声でカルスが叫ぶ。
「パトリシア、いやアズローナ家よ……覚えておけ! 俺と再び婚約しなかったことを、必ず後悔させてやる!!」
婚約者として数年、私が子爵令嬢だからか婚約者らしいことはまったくなかったけど、この人が無能なのは知っている。
やる気を出しただけで領地が繁栄できるのなら、私と婚約する前からそれはできているはず。
この場では悔しさからカルスは叫ぶしかないようだけど、私は無理だと確信していた。
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