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裏方の力
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Aランク依頼の敵ゴーレムを初依頼で粉砕したら、魔界の脅威を消すため魔人バーリスが現れる。
一石二鳥とはこのことで、どう勝利するのがミナギにとって一番いいのか悩んでしまう。
「ケント、大丈夫?」
「なんとかね……相手の手方を待とう。魔人がここまで強いとは思わなかった……」
僕が震えた声で言うと、ミナギは真剣な表情で頷く。
ミナギが「大丈夫?」と尋ねる時は、不安だから僕の指示を聞きたいというサインだ。
僕は振り向いたミナギに対して、指でサインを送っている。
この際の会話は適当にそれっぽいことを言い、実際は別のサインを送ることにしていた。
15歳まで村で打ち合わせをしていただけあり、この状況でもミナギは問題ない。
発言に意識が集中しているのか魔人を騙せそうで、ミナギは頷いて剣を前に出し構えている。
「魔人が現れた辺り、私の推測は当たっていたようね!」
「推測? 話してみろ?」
どうやら魔人バーリスは始末屋的な存在だからか、冥途の土産を渡す性格らしい。
全魔人がこんな性格ならいいなと考えていると、ミナギが話す。
「この世界は魔界に住む魔王が支配している。少なくとも、私達が住んでいる大陸は支配下にあるようね!」
「……ほう」
自信満々に告げるミナギだけど、僕の推測を信じ断言してくれるのもありがたい。
元冒険者の家族の会話や、登録した後に冒険者ギルドで情報収集をしたことで間違いないと確信していたことだ。
それを魔人に尋ねてみたくなり、僕はミナギに質問するようサインを送っている。
見当違いなら否定すると注目していたら、反応的に推測通りのようだ。
「街や村に人が集まる場所は襲わせないようにしながら、増えてきたら理由をつけて破壊する。そうして恐怖を与え魔界をよくしていくのが目的ね」
魔界については、過去に僕達の住む人間界に協力したいと魔人が情報提供をしていた。
別世界とされる魔界は、人間界の魔力を宿した人間の恐怖心が必要らしい。
それが魔界にある太陽の原動力となっているようで、そのため人間界に魔物を送り続けているようだ。
そこまでわかっているから、僕は全体を見ることにした。
魔王としては人が増え続ける方がいいし、恐怖はさせておきたい。
今の現状そのもので、この推測が合っているようだ。
「世迷言と笑われてもおかしくないのに、貴様は確信していたということか」
「誰にも話していないわよ。推測だけど、ゴーレムを倒した瞬間に魔人が現れて確信したわ!」
魔王の支配下にあるからこそ、脅威は早急に魔人が排除する。
これは予想していた数多の出来事の一つで、ここまでは完璧に進行していた。
これからミナギのことを魔王に報告するため撤収するパターンか、戦い消そうとするパターンか。
他のケースも想定しているけど、魔人バーリスの性格的に後者な気がする。
ミナギには魔人を初依頼で倒して欲しいから、是非とも「魔界の脅威は排除する」と言って欲しい。
「貴様は魔界の脅威となりそうだ。ここで排除する!」
魔人バーリスのことは、一生忘れないでおこう。
それが彼に対する敬意で、感動しているとバーリスが右手を空に掲げる。
黒い稲妻を発生させたかと思えば、それをミナギに向かって飛ばしていた。
強烈な魔法攻撃で、直撃した場合は余波で僕は葬られる。
敵に対する魔力の振り分けもでき、優秀な魔人なのは間違いない。
それでも裏方スキルで会得した隠蔽魔法は、まったく想定できなかったようだ。
「私は勇者だから、魔界の脅威になるのは当然よ!!」
「なにッ!? それより後ろの奴は何をした!?」
僕の魔法で強化したミナギが剣で稲妻を弾いたけど、魔人は強化魔法を見抜いたようだ。
強化魔法を使っていることを知られた程度なら、何も問題ない。
疑問を叫んだ時の説明役は、裏方である僕の務めだ。
「勇者である彼女は、今まで力を抑えていた」
「なんだと!?」
「勇者の加護を受けた僕が強化魔法を使うことで、魔人の魔法を防ぐことができたということさ」
「そういうことよ!!」
どや顔をするミナギだけど、実際は何もしていない。
僕が弱気なふりをしたら、自信満々な振る舞いをするのは昔から決めていたことだ。
隠蔽魔力の制限を緩めて「そこそこ優秀な魔法士」から「結構優秀な魔法士」まで引き上げている。
その状態で使った強化魔法に驚いたバーリスだけど、隠蔽魔法を知らないからこそ勇者の力だと言えばそう思い込んでくれた。
「そしてこれが、勇者である私の力よ!!」
ミナギは魔人の稲妻を弾き飛ばして、反撃に出る。
それにより剣を振り抜いたことで発生する閃光は、確実にバーリスを葬れる一撃だ。
これなら全て勇者ミナギの力だと、バーリスも納得して最期を迎えるだろう。
「こ、これは魔王様に報告せねば!? グオオオオォォォッ――ッ!?」
ミナギの剣から繰り出された閃光はバーリスに直撃して断末魔があがり、空に黒い亀裂が発生する。
これは僕達の前に現れた時と同じもので、亀裂に飲み込まれるように吹き飛ばされたバーリスの姿は消えていた。
空の亀裂が消えて、それを僕は眺めながら。
「……仕留め損ねたか。魔人の耐久力は凄いな」
葬れば冒険者カードに記録されて、魔人を倒したと証明できたのに残念だ。
せめて魔界で仰々しく報告して欲しいと願いながら、もっとミナギを強化しておけばよかったと後悔していた。
そんな時、嬉しそうにミナギが冒険者カードを見せて。
「ねぇねぇケント! 冒険者カードにゴーレムと魔人バーリスって記録されてるよ!」
「本当か!」
後悔していた僕とは違い、ミナギは確認から報告してくれる。
バーリスは魔界に帰っていたけど、致命傷を与えることができたのかもしれない。
初依頼は大成功で、この場で伝えておきたい。
「ありがとう……僕の魔法を抵抗せず受け入れてくれるから、力を最大限に発揮することができている」
「お礼を言うのは私の方だよ! 今まで冒険者を消してた魔人を消すことができたもの!!」
魔人バーリスの被害を知ったから、倒せたことに喜んでいる。
僕を信頼してくれるからこそ、ミナギはここまでの力が引き出せていた。
勇者スキルという加護がなくても、世界が認めればミナギは勇者になれる。
僕はその裏方として、ミナギの傍にいたかった。
一石二鳥とはこのことで、どう勝利するのがミナギにとって一番いいのか悩んでしまう。
「ケント、大丈夫?」
「なんとかね……相手の手方を待とう。魔人がここまで強いとは思わなかった……」
僕が震えた声で言うと、ミナギは真剣な表情で頷く。
ミナギが「大丈夫?」と尋ねる時は、不安だから僕の指示を聞きたいというサインだ。
僕は振り向いたミナギに対して、指でサインを送っている。
この際の会話は適当にそれっぽいことを言い、実際は別のサインを送ることにしていた。
15歳まで村で打ち合わせをしていただけあり、この状況でもミナギは問題ない。
発言に意識が集中しているのか魔人を騙せそうで、ミナギは頷いて剣を前に出し構えている。
「魔人が現れた辺り、私の推測は当たっていたようね!」
「推測? 話してみろ?」
どうやら魔人バーリスは始末屋的な存在だからか、冥途の土産を渡す性格らしい。
全魔人がこんな性格ならいいなと考えていると、ミナギが話す。
「この世界は魔界に住む魔王が支配している。少なくとも、私達が住んでいる大陸は支配下にあるようね!」
「……ほう」
自信満々に告げるミナギだけど、僕の推測を信じ断言してくれるのもありがたい。
元冒険者の家族の会話や、登録した後に冒険者ギルドで情報収集をしたことで間違いないと確信していたことだ。
それを魔人に尋ねてみたくなり、僕はミナギに質問するようサインを送っている。
見当違いなら否定すると注目していたら、反応的に推測通りのようだ。
「街や村に人が集まる場所は襲わせないようにしながら、増えてきたら理由をつけて破壊する。そうして恐怖を与え魔界をよくしていくのが目的ね」
魔界については、過去に僕達の住む人間界に協力したいと魔人が情報提供をしていた。
別世界とされる魔界は、人間界の魔力を宿した人間の恐怖心が必要らしい。
それが魔界にある太陽の原動力となっているようで、そのため人間界に魔物を送り続けているようだ。
そこまでわかっているから、僕は全体を見ることにした。
魔王としては人が増え続ける方がいいし、恐怖はさせておきたい。
今の現状そのもので、この推測が合っているようだ。
「世迷言と笑われてもおかしくないのに、貴様は確信していたということか」
「誰にも話していないわよ。推測だけど、ゴーレムを倒した瞬間に魔人が現れて確信したわ!」
魔王の支配下にあるからこそ、脅威は早急に魔人が排除する。
これは予想していた数多の出来事の一つで、ここまでは完璧に進行していた。
これからミナギのことを魔王に報告するため撤収するパターンか、戦い消そうとするパターンか。
他のケースも想定しているけど、魔人バーリスの性格的に後者な気がする。
ミナギには魔人を初依頼で倒して欲しいから、是非とも「魔界の脅威は排除する」と言って欲しい。
「貴様は魔界の脅威となりそうだ。ここで排除する!」
魔人バーリスのことは、一生忘れないでおこう。
それが彼に対する敬意で、感動しているとバーリスが右手を空に掲げる。
黒い稲妻を発生させたかと思えば、それをミナギに向かって飛ばしていた。
強烈な魔法攻撃で、直撃した場合は余波で僕は葬られる。
敵に対する魔力の振り分けもでき、優秀な魔人なのは間違いない。
それでも裏方スキルで会得した隠蔽魔法は、まったく想定できなかったようだ。
「私は勇者だから、魔界の脅威になるのは当然よ!!」
「なにッ!? それより後ろの奴は何をした!?」
僕の魔法で強化したミナギが剣で稲妻を弾いたけど、魔人は強化魔法を見抜いたようだ。
強化魔法を使っていることを知られた程度なら、何も問題ない。
疑問を叫んだ時の説明役は、裏方である僕の務めだ。
「勇者である彼女は、今まで力を抑えていた」
「なんだと!?」
「勇者の加護を受けた僕が強化魔法を使うことで、魔人の魔法を防ぐことができたということさ」
「そういうことよ!!」
どや顔をするミナギだけど、実際は何もしていない。
僕が弱気なふりをしたら、自信満々な振る舞いをするのは昔から決めていたことだ。
隠蔽魔力の制限を緩めて「そこそこ優秀な魔法士」から「結構優秀な魔法士」まで引き上げている。
その状態で使った強化魔法に驚いたバーリスだけど、隠蔽魔法を知らないからこそ勇者の力だと言えばそう思い込んでくれた。
「そしてこれが、勇者である私の力よ!!」
ミナギは魔人の稲妻を弾き飛ばして、反撃に出る。
それにより剣を振り抜いたことで発生する閃光は、確実にバーリスを葬れる一撃だ。
これなら全て勇者ミナギの力だと、バーリスも納得して最期を迎えるだろう。
「こ、これは魔王様に報告せねば!? グオオオオォォォッ――ッ!?」
ミナギの剣から繰り出された閃光はバーリスに直撃して断末魔があがり、空に黒い亀裂が発生する。
これは僕達の前に現れた時と同じもので、亀裂に飲み込まれるように吹き飛ばされたバーリスの姿は消えていた。
空の亀裂が消えて、それを僕は眺めながら。
「……仕留め損ねたか。魔人の耐久力は凄いな」
葬れば冒険者カードに記録されて、魔人を倒したと証明できたのに残念だ。
せめて魔界で仰々しく報告して欲しいと願いながら、もっとミナギを強化しておけばよかったと後悔していた。
そんな時、嬉しそうにミナギが冒険者カードを見せて。
「ねぇねぇケント! 冒険者カードにゴーレムと魔人バーリスって記録されてるよ!」
「本当か!」
後悔していた僕とは違い、ミナギは確認から報告してくれる。
バーリスは魔界に帰っていたけど、致命傷を与えることができたのかもしれない。
初依頼は大成功で、この場で伝えておきたい。
「ありがとう……僕の魔法を抵抗せず受け入れてくれるから、力を最大限に発揮することができている」
「お礼を言うのは私の方だよ! 今まで冒険者を消してた魔人を消すことができたもの!!」
魔人バーリスの被害を知ったから、倒せたことに喜んでいる。
僕を信頼してくれるからこそ、ミナギはここまでの力が引き出せていた。
勇者スキルという加護がなくても、世界が認めればミナギは勇者になれる。
僕はその裏方として、ミナギの傍にいたかった。
応援ありがとうございます!
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