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65話 ディオン視点

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 全ての元凶がライオスだと判明し、魔道具の杖によって父ルドロスは消滅している。

 そして次はディオンの番だと理解して――その上で、ディオンは笑っていた。

「……ディオン殿下、どうしてこの状況で、笑えるのですか?」

 今まで見下しながら余裕を持っていたライオスが、ディオンの異質さに取り乱す。

 警戒心を強めている中――ディオンは笑いながらライオスを眺めて告げる。

「何も策はないさ……ただ、今度の策こそは、信じていいのだろう?」

「……はっ?」

「騎士隊はお前の策ではなかったが……暗躍部隊の奇襲、連合部隊でエレナの仲間を捕える。そして俺と父上の謝罪……そして今回、総力をあげてエレナを倒すのが新たな策だ」

「なにを……言っているのです?」

 見下しながら眺めているライオスは、ディオンに恐怖していた。

 絶体絶命の状況下で、ディオンは笑い始めて。

「は……ははっ! 今まで失敗してたのは、ライオスの計画通りということでいいのだな!」

「その通りです……それが、どうしました?」

「いや……それなら次にエレナ達を仕留めるというのは、嘘偽りない本当の策なのだろう! 期待しているぞ!!」

 ルドロス国がライオスのモノになったことで、ディオンに残っているのはエレナに対する敵意と殺意だけだ。

 それを利用する気でいた辺り、これもライオスの計画通り進んでいるのだろう。

 ディオンは死を受け入れて――いや、自分の死よりも、エレナに対する憎しみの方が勝っていた。

 これが最期というのなら、今までの復讐心、屈辱を全て杖に籠めさせ、エレナと相打つ。

 それを理解したのか……ライオスは呆れながらも、ディオンの縄を解く。

 そして膝をつき、宰相ライオスとして最後の行動を見せながら……杖をディオンに突き刺して。

「……はい。ディオン殿下の命令を受け、私がこの手でエレナを仕留めてみせましょう!!」

 もうルドロス国はライオスの支配下にある以上、ディオンの命令を聞く必要はないだろう。

 それでも……ディオン最後の命令は何があったとしても達成させるという自信が、今のライオスにはある。

 ディオンは激痛と苦痛を体感して……この状況に後悔しながらも、全てはエレナのせいだと強く想う。

「どうして――俺が、こんな目に合わなければならない……」

 最期の呟きは誰にも聞こえず……ディオンの生涯は、ライオスの手によって終わりを迎えていた。
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