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第二章:つながりの芽
30、夏野菜の育ち具合と仲間の工夫(前半)
しおりを挟む午後の日差しはますます強くなり、畑の空気は熱を帯びていた。休憩所の木陰に戻ると、みんなそれぞれの工夫や思いを持ち寄って話が続いていた。
「そうだ、枝豆の成長記録、SNSにアップしたらどう?」美咲が急に言い出した。
私は一瞬、戸惑いながらもスマホを握りしめた。
「え? 私の写真なんて…でも、みんなに見てもらうのは悪くないかも」
「そうだよ! 私、いつもインスタで畑のこと発信してるんだ。見てる人が増えたら、もっと畑のこと好きになってくれるかも」
美咲の言葉に背中を押され、思い切っていくつかの写真を選び、簡単なコメントをつけて投稿した。
画面に映る緑色の葉っぱや、小さな豆の莢が鮮やかに映え、コメントにはすぐに「かわいい!」や「育て方教えてほしい」という反応が寄せられた。
「ほらね! もうファンができちゃった」
美咲は嬉しそうにスマホを覗き込む。
そのとき、拓海が畑の端で雑草を抜きながら話しかけてきた。
「みんな、結構楽しんでるよな。最初はきついだけかと思ったけど、こういう交流があると続けられるってわかる」
彼の顔は少し日焼けしていて、汗が頬をつたう。
「拓海、ほんとに変わったよね」と大智が笑う。
「俺? まあ、自然の前だと意外と素直になれるってだけさ」
私もそう思う。最初は孤独に感じていた畑仕事が、今は誰かと一緒にいる安心感や喜びに変わっていた。
夕方近く、納品を終えて商店街に戻ると、町の喧騒が一層強く感じられた。人々が行き交い、店の呼び込みや子どもたちの声があふれる。
「せっかくだし、カフェに寄らない?」美咲が明るく誘った。
私は少しだけ躊躇したけれど、誘いに乗ることにした。
店内は都会のカフェほど派手ではないが、木製のテーブルや観葉植物が落ち着いた雰囲気を作っていた。コーヒーの香りと焼き菓子の甘い匂いが混ざり合い、疲れた体を優しく包み込む。
「こういう場所、いいよね」と美咲が言う。
「うん、でも私たちの畑も、こういう温かさがあると思う」
私は心の中でそっとつぶやいた。
窓の外に目をやると、夕暮れの空は橙色に染まり、暮れてゆく街に柔らかな影を落としていた。
「あ、あの子たちだ!」突然、向かいの席から声が聞こえた。
見ると、高校の同級生がこちらを見て手を振っていた。
「陽菜! 久しぶり!」と彼女は笑顔で声をかけてくる。
私は少し緊張したけれど、笑顔で応えた。
「元気にしてた?」
会話はぎこちなかったけれど、畑の話やバイトのことを少し話すうちに、私も自分の生活を少し肯定できる気がした。
「あんた、結構がんばってるんだな」
彼女の言葉に胸が熱くなる。
夜が深まる前に家に帰ると、家族の温かさがじんわり染みてきた。母が作った夕飯の匂いが台所から漂い、弟が笑いながら話しかけてくる。
「今日も頑張ったね」
その言葉に私は小さく頷き、疲れた体をソファに預けた。
畑で育てた野菜の力、仲間の笑顔、そして家族の愛。すべてが繋がって、私の世界が少しずつ広がっている。
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