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第一章:日常のさざ波
5、レナのまなざし(前半)
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教室の後ろ、ロッカーの前は午前中の中休みのざわめきで満ちていた。窓の外には曇り空が広がり、時折ふわりと風が吹いてカーテンが揺れている。白っぽく霞んだ光が教室に差し込み、床や机に淡い影を落としていた。
朝見ほのかは、自分の席でノートを開いていた。算数の図形の問題に向き合っているけれど、集中できているとは言い難い。指先でノートの上の線をぼんやりとなぞりながら、つい耳が教室の後ろの方へ向いてしまった。
ロッカー前では、高森颯太が何かを取り出して、ふざけている。颯太の声が明るく響き、そのそばには南沢レナがいた。レナの髪には小さなリボンがついていて、今日だけのちょっとしたアクセントだった。
「それ、また忘れてたの?ほんとドジ~」レナの声は明るくて、笑いを含んでいる。
颯太は気楽に肩をすくめて言った。
「ま、俺らしくてよくない?」
そのやりとりに、ロッカー前にいた数人のクラスメイトも笑い声を上げる。
「はいはい、そうやってごまかす~」
レナが軽くからかいながら続ける。
「またかよ~」「それ昨日もじゃん」笑い声が教室のざわめきに溶けていった。
ほのかはその会話に加わらず、自分の席で黙って聞いているだけだった。言葉は聞こえてくるのに、そこに自分がいる感じがしなかった。
颯太の声を聞いて顔を上げると、隣にレナがいて、ふたりが楽しそうに笑っているのが見えた。
レナは自然に話しかけ、相手を笑わせることができる。みんなの注目を一身に集めている。
(みんなが見てる中で、あんなふうに話せるって、すごいな)
ほのかはそんなレナの姿に目を奪われていた。まぶしい光を浴びているみたいで、どこか遠い存在のように感じた。
自分がその輪に入るのは難しい。そんな思いが胸の奥でうずく。
レナの笑顔は軽やかで、彼女だけが持っている特別な何かがあるように見えた。
「なんか、胸がチクッとした。なんでかな……別に、誰が誰と話しててもいいのに」
その感情は、嫉妬なのか、置いていかれた感じなのか、まだよく分からなかった。
ほのかは視線をそっとノートに戻す。指先は依然、図形の線をなぞっていた。
教室のざわめきの中、椅子をガタンと引く音がして、周囲の声が少し遠のいた。
頭の中では、レナの声が何度も繰り返されていた。
「颯太と話す時の顔、私が見たことないくらい楽しそうだったな……」
その思いに胸がざわつき、苦くて、どこか切ない。
ほのかは少しだけ自分がイヤになった。なぜだろう、自分がこんな気持ちになることが。
でも、颯太とレナのやりとりを見ていると、どこか羨ましい自分がいるのも確かだった。
朝見ほのかは、自分の席でノートを開いていた。算数の図形の問題に向き合っているけれど、集中できているとは言い難い。指先でノートの上の線をぼんやりとなぞりながら、つい耳が教室の後ろの方へ向いてしまった。
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「ま、俺らしくてよくない?」
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「またかよ~」「それ昨日もじゃん」笑い声が教室のざわめきに溶けていった。
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颯太の声を聞いて顔を上げると、隣にレナがいて、ふたりが楽しそうに笑っているのが見えた。
レナは自然に話しかけ、相手を笑わせることができる。みんなの注目を一身に集めている。
(みんなが見てる中で、あんなふうに話せるって、すごいな)
ほのかはそんなレナの姿に目を奪われていた。まぶしい光を浴びているみたいで、どこか遠い存在のように感じた。
自分がその輪に入るのは難しい。そんな思いが胸の奥でうずく。
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「なんか、胸がチクッとした。なんでかな……別に、誰が誰と話しててもいいのに」
その感情は、嫉妬なのか、置いていかれた感じなのか、まだよく分からなかった。
ほのかは視線をそっとノートに戻す。指先は依然、図形の線をなぞっていた。
教室のざわめきの中、椅子をガタンと引く音がして、周囲の声が少し遠のいた。
頭の中では、レナの声が何度も繰り返されていた。
「颯太と話す時の顔、私が見たことないくらい楽しそうだったな……」
その思いに胸がざわつき、苦くて、どこか切ない。
ほのかは少しだけ自分がイヤになった。なぜだろう、自分がこんな気持ちになることが。
でも、颯太とレナのやりとりを見ていると、どこか羨ましい自分がいるのも確かだった。
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