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第2章
エフォールに救われる
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王座の間の前の長い廊下を歩きながら頭の中を整理する。
「そういえばまだ何も食ってねぇな。調達しに行かなきゃ。
あ、でもベッドの確認にもいかないといけないし。今日は忙しくなりそう――」
「ヤッホ~、モトユウちゃ~ん!」
とても頼りにはなるが今はあまり会いたくない人物に背後から声をかけられてしまった。
素早く振り向いて少しずつ後退する。
「ど、どうも……」
「ちょっとぉ~?なんで下がるのさ~?」
「なんででしょうね……」
(怒ってるとか嫌な感じはしないんだけど、なんか近づきたくねぇ。捕まったら離してもらえなくなりそうな気がする)
昨日みたいにイノサンクルーンが化けているわけでもない。
幸い、廊下なので左右どちらかの壁に追い込まれなければどうにかなりそうではあるが、どう動いてくるのか見当がつかない。
肝心のデュークさんはというとニヤニヤしながら俺の様子をうかがっている。
「何もする気ないんだけど~?」
「怒ってるとか機嫌悪いとかないですよね?」
「ぜ~んぜん。俺どこかヘン?」
「いえ……」
(何でなんだ?俺もよくわからねぇ。
あ、でも食料調達行くならついてきてもらわないと……)
とはいえ、こういった勘はスルーしてはいけないような気がした。
それに、以前にもデュークさんの静かな怒りを感じ取ったり、イノサンクルーンの変身に気づけたりと何かと役に立っている。
(考え始めたら本物かどうかも怪しくなってきた。いや、本物だとは思うんだけど。それにデュークさんもニヤニヤしたままで動かないし。
なんか気味悪くなってきた)
「モトユウ2等兵ーー‼」
頭を悩ませていると足元から元気な大声が聞こえてきた。
見慣れてきた拳ほどの大きさの銀色の鎧。
「エフォール⁉」
(いつの間に⁉でも助かった!)
「おー、エフォールちゃん。モトユウちゃんに用事?」
そう言いながらデュークさんは移動してエフォールの首根っこを摘んで持ち上げた。
ビックリしたエフォールがバタバタと暴れる。
「わー⁉何するですか⁉降ろしてくださいよ⁉」
「こっちの方が話しやすくないー?
エフォールちゃんも声張り上げるの大変でしょ?」
「むー、確かにそうですがこの状態じゃ気分悪いのです!」
「そーお?じゃあ、ホイ」
なんとエフォールを俺の肩に乗せたのだ。
エフォールは何度か瞬きすると笑みを浮かべる。
「あ、こっちが断然いいですね」
「俺の肩そんなに居心地いいんですか?」
「はい。安定するのです」
(だから訓練中もずっと乗ってたのか)
少し納得した。人間の肩に乗ることなんて本来ならあり得ないため、今のうちに長い時間乗っておきたいのかもしれない。
「それで、どうしてここに?」
「今日は訓練に参加してもらうですよ!」
「わざわざそれを言いに来たんですか?」
「サボりは厳禁なのです!」
前々から伝えていたにも関わらずサボりと思っているらしい。とんでもない誤解だ。
「サボりじゃないですよ⁉デュークさんも俺を借りるって言ってたじゃないですか⁉」
「おう、言ったなー。フロで会ったときに」
「あれ?そうでしたっけ?なら、ごめんなさいなのです。昨日は休みが多かったので勘違いしてました」
(休みが多かった?みんな調子悪かったのか?)
モンスターとはいえ疲れが出たのだろうか。とはいえ、あれだけの訓練を毎日やっているのなら疲れが溜まっていてもおかしくない。
それよりも、てっきり強制参加だと思っていたので欠席できることにビックリした。
「今日は参加する予定でしたから」
「じゃあ、さっそく行くですよ!」
「ってことなので、行ってきますねー」
(急ではあったけど、ここを離れる理由ができて助かった。
あとでお礼言っとこう)
デュークさんに伝えると、一瞬だけビックリした顔をしてすぐに笑顔になる。
「おう。また今度話そうぜ?」
「は、はぁ……」
(次会ったら覚悟しとかないといけないよな……)
モヤモヤしながらエフォールを見ると少し体が震えていた。そして急かすように俺の肩を叩く。
「モ、モトユウ2等兵!ダッシュです!ダッシュ!」
「え゛⁉何で――」
「いいからダッシュです!」
「は、はいっ!」
わけがわからないままダッシュする。1度も後ろを振り返らずに一気に裏まで走り抜けた。
前屈みになって肩で大きく息を歯ているとエフォールが珍しくしょんぼりとして声をかけてくる。
「急にダッシュなんて言って申し訳なかったのです、モトユウ2等兵」
(ビックリはしたけど、俺の方が助かったんだけどな?)
「い、いったい、どうしたんですか……」
「デューク団長が怖かったので逃げたかったのです」
「怖かった?エフォールが?」
思わず聞き返すとエフォールはしっかりと首を縦に振った。
「なんというか、「墓地送り」の危険まではなかったのですが、あのまま居ると無傷では済まないような気がしたのです。
モトユウ二等兵、デューク団長に何したんですか?」
「特に何もしてませんよ」
「それにしては……」
(うーん、デュークさんのこと話しといた方がいいか)
この問題を1人で抱えるよりは知っている人がいれば心強いだろう。全部ではないが、俺に好意を持っているらしいことと、
最近様子が変だということを話した。聞き終わったエフォールは何ともいえない表情で眉をひそめている。
「やたらモトユウ2等兵にベッタリくっついてるなーとは思っていたのですが、そうだったのですか。大変ですね」
「俺も身の危険を感じつつあります……。
でもどうしてエフォールまで恐怖を覚えちゃったんでしょうね?」
「うーん、自分の推測ですけどモトユウ2等兵と距離が近いのが嫌だったんじゃないんですかね。
嫉妬ってやつです」
(あり得そうだ……)
しかしそんな理由で殺気のようなものを出したのだろうか。独占欲が強いみたいだ。
やっぱり次に会ったら大変なことになる。
(デュークさんとやっていたことを他の人に代わってもらうしかないな。
いや、デュークさんに会ったとしても逃げれ――る気がしねぇな)
「さ、訓練に行きますよ、モトユウ2等兵」
「え?ここじゃないんですか?」
思わず聞き返すとエフォールが頷く。
「今回は城の外です。今から説明しますから」
「あのー、訓練参加はいいんですけど、俺まだご飯食べてなくて。食料取ってこないといけないんです」
「ん?ご飯に困ってるのです?じゃ。武器庫に行きましょう」
さっそく武器庫に向かう。
部屋の端、床に持ち上げるための取っ手がついている。以前ヘネラルさんが開けようとしていた場所だ。
持ち上げると下には階段が続いていた。ドーワ族の工房への入り口と同じ作りだ。
中は木の板で仕切りがされており、その中に食材が無造作に置かれていた。
「この下、食料庫だったんだ……」
「そうなのです。といっても自分等の団専用ですけど。魔族全員だと多すぎて入りきらないので」
「確か部隊説明の時にヘネラルさんが開けようとしてましたよね?」
「あー、あれは自分もビックリしたのです。
まだ入ると決まったわけでもないのに食料庫を見せるのは違うと思ったので慌てて止めましたけど」
(そうだったのか。
とても慌ててたから何かもっと高そうな物でも隠しているのかと思ったけど違ったみたいだな)
「さぁ、訓練に支障がない程度に食べちゃってください」
「じゃあ、いただきますね」
キレイに陳列されている肉や果実を適当に取って口に運ぶ。
特別美味しくも不味くもなく、誰でも口にできそうな中性的な味だった。
「それにしても新鮮な物が多かったけど……」
「魔法で鮮度を保ってもらっているのです。特に肉はすぐに腐ってしまうので助かってます」
「な、なるほど」
「さて、モトユウ2等兵の腹ごなしも終わったし訓練に行くですよ!!」
「はーい」
食料庫の入口をしっかり閉めて武器庫を出ると、城の外に向かった。
「そういえばまだ何も食ってねぇな。調達しに行かなきゃ。
あ、でもベッドの確認にもいかないといけないし。今日は忙しくなりそう――」
「ヤッホ~、モトユウちゃ~ん!」
とても頼りにはなるが今はあまり会いたくない人物に背後から声をかけられてしまった。
素早く振り向いて少しずつ後退する。
「ど、どうも……」
「ちょっとぉ~?なんで下がるのさ~?」
「なんででしょうね……」
(怒ってるとか嫌な感じはしないんだけど、なんか近づきたくねぇ。捕まったら離してもらえなくなりそうな気がする)
昨日みたいにイノサンクルーンが化けているわけでもない。
幸い、廊下なので左右どちらかの壁に追い込まれなければどうにかなりそうではあるが、どう動いてくるのか見当がつかない。
肝心のデュークさんはというとニヤニヤしながら俺の様子をうかがっている。
「何もする気ないんだけど~?」
「怒ってるとか機嫌悪いとかないですよね?」
「ぜ~んぜん。俺どこかヘン?」
「いえ……」
(何でなんだ?俺もよくわからねぇ。
あ、でも食料調達行くならついてきてもらわないと……)
とはいえ、こういった勘はスルーしてはいけないような気がした。
それに、以前にもデュークさんの静かな怒りを感じ取ったり、イノサンクルーンの変身に気づけたりと何かと役に立っている。
(考え始めたら本物かどうかも怪しくなってきた。いや、本物だとは思うんだけど。それにデュークさんもニヤニヤしたままで動かないし。
なんか気味悪くなってきた)
「モトユウ2等兵ーー‼」
頭を悩ませていると足元から元気な大声が聞こえてきた。
見慣れてきた拳ほどの大きさの銀色の鎧。
「エフォール⁉」
(いつの間に⁉でも助かった!)
「おー、エフォールちゃん。モトユウちゃんに用事?」
そう言いながらデュークさんは移動してエフォールの首根っこを摘んで持ち上げた。
ビックリしたエフォールがバタバタと暴れる。
「わー⁉何するですか⁉降ろしてくださいよ⁉」
「こっちの方が話しやすくないー?
エフォールちゃんも声張り上げるの大変でしょ?」
「むー、確かにそうですがこの状態じゃ気分悪いのです!」
「そーお?じゃあ、ホイ」
なんとエフォールを俺の肩に乗せたのだ。
エフォールは何度か瞬きすると笑みを浮かべる。
「あ、こっちが断然いいですね」
「俺の肩そんなに居心地いいんですか?」
「はい。安定するのです」
(だから訓練中もずっと乗ってたのか)
少し納得した。人間の肩に乗ることなんて本来ならあり得ないため、今のうちに長い時間乗っておきたいのかもしれない。
「それで、どうしてここに?」
「今日は訓練に参加してもらうですよ!」
「わざわざそれを言いに来たんですか?」
「サボりは厳禁なのです!」
前々から伝えていたにも関わらずサボりと思っているらしい。とんでもない誤解だ。
「サボりじゃないですよ⁉デュークさんも俺を借りるって言ってたじゃないですか⁉」
「おう、言ったなー。フロで会ったときに」
「あれ?そうでしたっけ?なら、ごめんなさいなのです。昨日は休みが多かったので勘違いしてました」
(休みが多かった?みんな調子悪かったのか?)
モンスターとはいえ疲れが出たのだろうか。とはいえ、あれだけの訓練を毎日やっているのなら疲れが溜まっていてもおかしくない。
それよりも、てっきり強制参加だと思っていたので欠席できることにビックリした。
「今日は参加する予定でしたから」
「じゃあ、さっそく行くですよ!」
「ってことなので、行ってきますねー」
(急ではあったけど、ここを離れる理由ができて助かった。
あとでお礼言っとこう)
デュークさんに伝えると、一瞬だけビックリした顔をしてすぐに笑顔になる。
「おう。また今度話そうぜ?」
「は、はぁ……」
(次会ったら覚悟しとかないといけないよな……)
モヤモヤしながらエフォールを見ると少し体が震えていた。そして急かすように俺の肩を叩く。
「モ、モトユウ2等兵!ダッシュです!ダッシュ!」
「え゛⁉何で――」
「いいからダッシュです!」
「は、はいっ!」
わけがわからないままダッシュする。1度も後ろを振り返らずに一気に裏まで走り抜けた。
前屈みになって肩で大きく息を歯ているとエフォールが珍しくしょんぼりとして声をかけてくる。
「急にダッシュなんて言って申し訳なかったのです、モトユウ2等兵」
(ビックリはしたけど、俺の方が助かったんだけどな?)
「い、いったい、どうしたんですか……」
「デューク団長が怖かったので逃げたかったのです」
「怖かった?エフォールが?」
思わず聞き返すとエフォールはしっかりと首を縦に振った。
「なんというか、「墓地送り」の危険まではなかったのですが、あのまま居ると無傷では済まないような気がしたのです。
モトユウ二等兵、デューク団長に何したんですか?」
「特に何もしてませんよ」
「それにしては……」
(うーん、デュークさんのこと話しといた方がいいか)
この問題を1人で抱えるよりは知っている人がいれば心強いだろう。全部ではないが、俺に好意を持っているらしいことと、
最近様子が変だということを話した。聞き終わったエフォールは何ともいえない表情で眉をひそめている。
「やたらモトユウ2等兵にベッタリくっついてるなーとは思っていたのですが、そうだったのですか。大変ですね」
「俺も身の危険を感じつつあります……。
でもどうしてエフォールまで恐怖を覚えちゃったんでしょうね?」
「うーん、自分の推測ですけどモトユウ2等兵と距離が近いのが嫌だったんじゃないんですかね。
嫉妬ってやつです」
(あり得そうだ……)
しかしそんな理由で殺気のようなものを出したのだろうか。独占欲が強いみたいだ。
やっぱり次に会ったら大変なことになる。
(デュークさんとやっていたことを他の人に代わってもらうしかないな。
いや、デュークさんに会ったとしても逃げれ――る気がしねぇな)
「さ、訓練に行きますよ、モトユウ2等兵」
「え?ここじゃないんですか?」
思わず聞き返すとエフォールが頷く。
「今回は城の外です。今から説明しますから」
「あのー、訓練参加はいいんですけど、俺まだご飯食べてなくて。食料取ってこないといけないんです」
「ん?ご飯に困ってるのです?じゃ。武器庫に行きましょう」
さっそく武器庫に向かう。
部屋の端、床に持ち上げるための取っ手がついている。以前ヘネラルさんが開けようとしていた場所だ。
持ち上げると下には階段が続いていた。ドーワ族の工房への入り口と同じ作りだ。
中は木の板で仕切りがされており、その中に食材が無造作に置かれていた。
「この下、食料庫だったんだ……」
「そうなのです。といっても自分等の団専用ですけど。魔族全員だと多すぎて入りきらないので」
「確か部隊説明の時にヘネラルさんが開けようとしてましたよね?」
「あー、あれは自分もビックリしたのです。
まだ入ると決まったわけでもないのに食料庫を見せるのは違うと思ったので慌てて止めましたけど」
(そうだったのか。
とても慌ててたから何かもっと高そうな物でも隠しているのかと思ったけど違ったみたいだな)
「さぁ、訓練に支障がない程度に食べちゃってください」
「じゃあ、いただきますね」
キレイに陳列されている肉や果実を適当に取って口に運ぶ。
特別美味しくも不味くもなく、誰でも口にできそうな中性的な味だった。
「それにしても新鮮な物が多かったけど……」
「魔法で鮮度を保ってもらっているのです。特に肉はすぐに腐ってしまうので助かってます」
「な、なるほど」
「さて、モトユウ2等兵の腹ごなしも終わったし訓練に行くですよ!!」
「はーい」
食料庫の入口をしっかり閉めて武器庫を出ると、城の外に向かった。
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