【1/完結】ノンケだった俺が男と初体験〜ツンデレ君には甘いハチミツを〜

ー雪山ー57

　今度は雄介の方は望の方へと体を向けて望の腰を抱きしめている。

「ちょ……」

　そうだ。　雄介という人物は、そういう事をいとも簡単にやってくれる。

　そして、

「……こうしたかったんやろ？」
「あ、いや……別に……」

　雄介の言葉にいつもの調子で答えてしまう望。

「なーに言うてんねん。　動揺したって事はそういう事やんか」
「ぁ……まぁ……」

　雄介はそう望の心の中を読んだように言っていた。

　そこまで言われると答えられなくなってしまった望は雄介の方へと体ごと向けると、

「ああ……そうだ……たまには、俺からお前の事抱きしめてみたかったんだけどな」

　そう顔を赤くまでして言う望。　そんな望が可愛かったのか雄介はクスリとすると、

「たまには望がそう素直なとこもええもんやなぁ」
「そこ、笑うところじゃねぇから」
「スマン、スマン……確かにそこ笑うところじゃなかったな。　たまにはこういう時も幸せな感じせぇへん？　せやから、笑ったっていうのもあるんやけどなぁ」

　雄介はそう言いながら望の頭を撫でる。

　その雄介の行動さえ今は幸せを感じているのかもしれない。

　どうして恋人がやってくれる些細な事でも人間っていうのは幸せに感じれるのであろうか。

　雄介は望の頭から頰を辿り撫でていると、どうやら、ある事に気付いたようだ。

「望……まさか、熱あるんと違うか！？」
「そうか？　多分、お前が俺の事を辱めるからだろ？　だから、体内から熱が起こって、顔が火照ってるからなんじゃねぇのか？」
「ホンマかそれ？　自分の体だからって、誤診しておるんじゃないやろな？　俺の方はホンマにそこは心配しておるんやぞ」
「大丈夫だって、お前に心配される程じゃねぇからよ」

　そんな事を言われても納得出来ない雄介は立ち上がって先程持って来ておいた薬箱の中から体温計を持ってきて望に渡そうとする。

「とりあえず、これで、熱計ってみて」
「だから、大丈夫だって言ってんだろ？」

　望は少し頭を起こすと肘と腕だけで体を支える格好で雄介の事を見上げる。