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65 霊道

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「僕の体に翡翠の霊体を入れてみたらどう? 僕の擬似クローンならまた作れるだろう?」

翡翠を助ける方法を思いついたガネシュがそう提案をした。

「残念だけど無理なんだ。遺伝子の型が合わないと拒絶反応が出て即死だ」

ロネシュラルは言いづらそうに答えた。

「そんな──」

翡翠のノイズはますますひどくなり、体は色褪せ今にも消えそうだった。

「僕のせいだ! 僕が悪いんだ! 無理やり連れて来ちゃったから──ッ!!」

泣きじゃくりながら翡翠に謝るガネシュに翡翠は言葉をかけた。

「これも私の運命、かもしれないな。もう、興味本位で、異国に来るのではない、ぞ」

魂が弱り苦しいはずの翡翠は恨み言も言わず、途切れ途切れに遺言のような言葉をガネシュに残した。


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マハ王宮では天藍が水龍の力で霊道を開こうとしていた。天藍が両手に霊力を込める。みるみる膨らんでいった水の塊が水龍の頭を形成する。

「行け。翡翠の元へ」

どおおん! と激音と共に水龍の形となった水の塊が王宮の壁に噛みついた。壁に大穴が開く。その先には延々と暗いトンネルが続いていた。

「さあ、行くがいい。必ず翡翠を連れて帰ってこい」

天藍が王太子に託すように声をかけた。

「必ず──」

短く応じ、王太子は暗い霊道に駆け込んでいった。


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霊道の中はひんやりと冷えた空気に満ちていた。明かりはなかったが進む方向は不思議とわかった。ほどなくして霊道の出口へと到着した。その先に進むと光が差し、ルヒカンド王宮の庭園によく似た林に出た。

「お、王太子!? どうやってここに!?」

ガネシュが突如現れた王太子に度肝を抜かれている。

「翡翠はどこだ!!」

王太子が問うと、ガネシュは泣き腫らした目で「ここに──」とだけ答えた。見ると、ほとんど消滅しかかっている翡翠が地に伏している。翡翠はもう声も出せない状態だった。

王太子が急いで翡翠を抱き上げると、綿のように軽くほとんど重さを感じなかった。

霊道の途中で消えてしまうかもしれない──そんな予感がして「翡翠の命を繋がなければ」その一心で王太子はガネシュに問うた。

「ここに銀木犀はあるか!?」

きょとんとするガネシュに代わり、ロネシュラルが答える。

「銀木犀なら、すぐ向こうの開けた庭園に一本だけ植えてある」

その言葉を聞くが早いか、王太子は翡翠を抱いたまま教わった方向へ走った。
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